落葉松亭日記

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温家宝のレアアース戦略

2011年08月25日 | 政治・外交
温家宝、シナでは「温爺爺」「男優」のニックネームがあるそうだ。
にこやかな顔の裏にはしたたかな資源外交戦略がある。
「私は原子力には詳しいんです」とか宣った某首相とは比ぶべくもない。

何かにつけ資源の少ない日本だが、シナに依存するのは最悪手、労せずして命運を握られる。
政界・産業経済界の知恵の出しどころとなっている。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 平成23年(2011)8月25日(木曜日)弐 通巻第3406号 より
http://melma.com/backnumber_45206_5270775/
 レアアース輸出削減戦術と価格暴騰はすべて温家宝の策略だった
 ハイテク企業はレアアース確保のため、中国に工場進出せざるをえない


 温家宝首相、じつは鉱山学、地質学を修め、宝石の鑑定ができるという異能がある。ブレジネフが冶金工学の専門家出身だったように、温家宝は地質学者でもある。かれの率いる国務院は直属企業をいくつか持っている。日本に強いてあてはめると首相官邸直営企業、それもコングロマリット。

 とうとう昭和電工は中国にレアアースの加工工場を移転することを決めた。多くの特許と製造ノウハウをもって。
 同様に日米のハイテク企業数社がつづく。

 中国がレアアースの輸出を事実上中断し、供給をタイトにしてから日本は騒ぎ出した。米国は中国のレアアース輸出制限はWTO違反として提訴した。
いうまでもなくレアアースはハイブリッドカー、LED、液晶パネルに欠かせない原材料。中国が世界供給の90%を寡占し、かつ輸出にあたっては税金をかけ(輸出税もしくは付加価値税)、数量を制限(クォータ)し、とどのつまりは日米の製造工場が生産を続行できなくなった。

 内蒙古省のレアアース生産現場は「団派」の利権とされる。価格高騰と当該企業の株式取引で、かれらは大儲けをしたと推定された。
 現実にレアアースは屯あたり3000ドル台だったものが、8月現在、屯あたり11万ドルに跳ね上がっている。
 つぎの国務院総理に最短距離にいるのは李克強(副首相)。団派のライジングスターである。

 こうみてくると、レアアースにまつわる産業陰謀を企んだのは温家宝首相である、とヘラルドトリビューンが「断定」している(同紙、8月25日付け)。

最終的狙いは何だったか?
「それはハイテク特許とノウハウを持つ西側企業が中国に工場を移転させることにある」。

レアアース(希土類元素)(WikiPediaより抜粋)
http://ja.wikipedia.org/wiki/希土類元素
具体的用途

超強力磁石の磁性体(モーター、バイブレータ): ネオジム、サマリウム、ジスプロシウム(Sm-Co磁石・Nd-Fe-B磁石)
液晶ガラス基板研磨剤: セリウム
蛍光体(テレビ、蛍光灯、LED): イットリウム
光ディスク (書き換え可能タイプ) の記録層 (DVD、CD、Blu-ray Disc)
光磁気ディスクの磁性層 (MO、MD)
石油精製触媒、自動車用排気ガス浄化触媒

世界の埋蔵量

アメリカ地質調査所によれば、レアアースの世界の埋蔵量はおよそ9,900万トンであり、全世界の年間消費量約15万トンから比較すれば、資源の枯渇はあまり危惧されていない。レアアースは日本の工業生産品として、蓄電池や発光ダイオード、磁石などのエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠な材料である。
しかしながら下記産地にも示すように、近年の産出量の95%以上を中国のバヤンオボー鉱床とイオン吸着鉱鉱床により産出されており、生産国一国に大きく依存している政治的リスクのため、2010年頃から調達環境の悪化が顕在化した。このため日本では下記産地にもあるように、インドの漂砂、ベトナム北部のカーボナタイト、カザフスタンのウラン鉱床残渣、オーストラリアのカーボナタイトなどからの生産プロジェクトを開始した。これらの代替地から供給は早くても2012年以降であることから、2011年の必要量の確保が問題となっている。日本では「元素戦略」と銘打ち、この問題への対応が図られている。

産地

中国(内モンゴル)が世界の産出量(12.4万t、2009年推定)の97%以上を占めており[2][3]、その他の産地もインド、オーストラリア、ブラジルなどに偏在している。日本は世界需要の約半分を占めるが、大部分を中国からの輸入品である風化花崗岩に頼っている。しかし、中国からの輸出が減少しており、世界的な需給バランスのひっぱくが懸念されている(詳細後述)。
ただし中国は埋蔵量の3割であるため、新しい供給先を開発中である。
カザフスタン(住友商事)2011年生産開始予定
ベトナム Dong Pao(豊田通商、双日)2012年生産開始予定
オーストラリア Duddo 2012年生産開始予定
オーストラリア Mount Weld 2012年生産開始予定
南アフリカ共和国 Steenkampskraal 2012年生産開始予定
アメリカ合衆国 Mountain Pass 2012年生産開始予定
カナダ Thor Lake 2014年生産開始予定
カナダ Hoidas Lake 2014年生産開始予定
グリーンランド Kvanefjeld 2014年生産開始予定
オーストラリア Nolan's Bore 2014年生産開始予定

最近の研究で日本国内のマンガン鉱床に花崗岩を上回る割合で希土類元素が含有されていることが判明し、現状打破の新たな資源として注目されている。また、火力発電所等の集塵機で回収される石炭や石油の灰にも含まれているため、今後の利用促進が期待される。また、海底のマンガン団塊やコバルトクラスト、熱水鉱床等の海洋資源も供給源として期待される。
米国ではカリフォルニアの鉱床で希土類元素採掘が再開される見込みがある[2]。
ジスプロシウム (Dy) やテルビウム (Tb) の重希土類は、中国南部のイオン吸着型鉱床と呼ばれる特殊な風化鉱床でしか生産されていない[4][5]。今後、需要が増加すると見られるハイブリッドカーや電気自動車用の高出力モーターの磁石にジスプロシウム (Dy) とテルビウム (Tb) の添加で保磁力が高まるため、不足が懸念される。重希土類の産生が期待されるカナダのThor Lake鉱山の稼動開始が2010–2011年であり、少なくともそれまでは、中国に依存する体制が続く[1]。

中国依存問題

中国では1980年代から、貴重な外貨獲得源として希土類鉱山の採掘に力を注いできた。しかし、これにより希土類市場は供給過剰となり、価格が急落した。価格低下によりコスト面で採算が釣り合わなくなった中国以外の希土類鉱山は次々と閉山し、中国依存の状態が起こった。特に、テルビウムやジスプロシウムなどの重希土類の生産は、中国一国に限られている。
しかし中国政府は、2006年に国土資源部から、希土類を対象とした資源保護計画を発表し、2010年7月には、商務部が輸出枠大幅削減方針を発表するなど、資源保護政策に転換しつつある。[6]それにともない、希土類の価格が上昇している。例えば、ジスプロシウムの価格は2005年には1kgあたり50ドル(米国ドル)程度であったが、2010年初頭には1kgあたり160ドル、2010年6月末時点で400ドルに高騰している[7]。
さらに2010年9月から11月、通関上の手続きを表向きの理由に、日本への希土類輸出が全て止まるという異常な状態が突如発生した。これは、同時期に起こった尖閣諸島における漁船船長拿捕の報復が主な理由だとみられている[8]。これにより、希土類生産を中国に過度に依存することは、市場の安定性にとって危険であることが、世界的に認識された。
これに対し、以下の4点が主な対応策である。

他鉱山の開発
前述の通り、以前に閉山した希土類鉱山や、新たな鉱山を開発することにより、中国依存を脱却する取組みが、2010年以降世界各地で顕在化している。

資源備蓄への取組み
価格が安い時に国家が計画的に金属資源を国家が備蓄する手段があるが、それを希土類にも適用する対策がある。既に実施している国もあり、日本でも希土類以外の金属資源は国家備蓄は行われていた[9]。また、2010年7月経済産業省令の改正が行われ、希土類を含めたレアメタルの備蓄も制度上可能となっている。

脱希土類技術の開発
希土類の利用を減らす、あるいは必要としない代替技術の開発を推進し、希土類の供給リスクを低減する対策がある。日本では、文部科学省[10]や経済産業省[11]が政府として取組み、企業でも電気自動車用高性能磁石、二次電池などで脱希土類技術の開発が推進されている[12]。

リサイクル技術の開発
生産過程や、商品として捨てられる廃棄物から、希土類を抽出し再利用する対策がある。日本では希土類を含め、レアメタルの新たな国内資源、都市鉱山として認識されている。しかし、都市鉱山からのリサイクルにかかるコストは、鉱山から生産される価格を大幅に上回るため、現在のところ経済性は乏しい。また、日本国内でリサイクルする場合、廃液などの環境コストが大きいため、実施は容易ではない。[9][12]