落葉松亭日記

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上水道民営化?

2018年12月07日 | 政治・外交
6日改正水道法が成立した。これによって水道事業が民間に売却可能となる。
水はライフラインの最たるもの。利益優先の民営化してサービスの低下が落ちる心配はないのか。
日本は世界一水が美味しいと云われる。水質の悪化は、家庭はもとより食品、飲料水、醸造、医療などにも多大の影響がある。
安倍政権は、以前否定していた外国人労働者の拡大を図ったり、安心感が遠のいた。
改正水道法が成立 民間に事業売却も 13:49産経新聞
https://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/sankei-lif1812060017.html

 自治体が水道事業の運営権を民間企業に売却するコンセッション方式を導入しやすくする内容を含んだ水道法改正案が、6日の衆院本会議で可決され、成立した。民間のノウハウの活用で水道事業の立て直しを狙う一方、野党側は料金高騰や水質悪化の懸念があるとして反対していた。

 水道事業の多くは市町村が運営している。しかし、人口減少で料金収入が減り経営環境が悪化。給水人口1万人未満の小規模事業者では、およそ半分が赤字に陥っている。

 事業者は施設の老朽化にも悩む。高度成長期に敷設された施設や水道管は耐用年数(40年)を相次いで迎えており、その割合は約15%。資金不足で更新も進まず、水道経営の基盤強化が喫緊の課題となっていた。

 給水人口5千人以下の小規模事業者は全体の8割を占める。法改正で近隣の事業者を結び付ける「広域連携」が進むことが期待されている。

 今回、その是非が焦点となったコンセッション方式は改正前でも可能だった。ただ自治体が認可を返上しなければならず、導入実績はなかった。法改正により、自治体が認可や施設所有権を保持したまま、事業の民間売却をできるようにさせ、その動きが加速するとみられる。

 さらに、施設台帳を作成していないなどずさんな資産管理をしている自治体もあったため、台帳の保管を義務付けた上、施設を更新する計画を作成し、公表する仕組みを導入した。
【水道法】民営化、欧米でも失敗続きー安倍政権が水道事業を売り飛ばす暴挙、海外企業とも癒着 志葉玲 | フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和) 12/6(木) 7:30
https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20181206-00106702/

水道管が破裂して水浸しなったロンドン。水道事業が民営化されてからトラブル続きだ。(写真:ロイター/アフロ)

 誰にとっても生活に欠かせないものが水だ。その水を供給する水道事業は現在、地方公共団体である各地の公営事業体によって運営されてきた。安心で安価な水が24時間いつでも供給されることが当たり前―そんな日本の水道事業が、今日、国会で採決されようとしている水道法改正案によって大きく変わるかもしれない。

◯水道事業は民間企業となじまない

 上下水道事業などで働く労働者の組合「全日本水道労働組合」の辻谷貴文・書記次長は「水道法改正そのものには、一概に全否定するわけではありませんが、一つ大きな問題があります」と語る。「水道施設の老朽化や人材不足、災害時の対応など、水道事業の基盤強化は今回の水道法改正案の要であり、私達現場の労働者も求めてきたことで、それ自体は良いことだと思います。ただし、水道法改正案にある“官民連携の推進”については懸念しています。水道施設の運営権を民間企業に与えるという『コンセッション方式』が推進されるのですが、これは安価で安全な水を、1年365日、1秒たりとも絶やすことのないようにするという、日本の水道事業が担ってきた責任を損なうものになりかねません」(同)。

 コンセッション方式とは、事業の運営権を、民間企業に売り、その企業が事業を実施、水道料金を収入として企業が得る、というもの。辻谷氏は「利益を出すことが最大の目的である民間企業は水道事業となじまない」と言う。

 「水が無くては人間は生きていけません。ですから、水道料金というものは、事業に経費が掛かっても極力安くしないといけませんし、人口が減少していますから水道料金の収益も下がり、多くの地域での水道事業は赤字です。ですから、民間企業が事業を運営するとなると、コストカットしたとしても、経営として非常に厳しくなります。そうなると、水道料金を値上げするか、水道管の維持・メンテナンスなどの必要な経費も削らないといけなくなる。海外の事例では水道事業を任された民間企業が多額の経費を自治体に請求してきたという事例もあります」(同)。

◯水道事業の民営化の失敗、世界で235例

 「世界各地の事例を見ても、公営の水道事業から民営化して成功したところなど、ほとんどありません」と辻谷氏は言う。「その挙句、フランスのパリ市の様に、民営化した水道事業を再び、公営化するという事例が相次いでいます。こうした再公営化は、世界全体で235件にも達しているのです」(同)

 辻谷氏は「民営化論者が『成功事例』としている、イギリスのイングランドでの民営化も、問題だらけ」と語る。「サービスの低下や漏水率の上昇、汚職の頻発などで、世論調査では住民の70%が再公営化を望んでいるという有様です。こうした海外の事例を見ても、コンセッション方式の導入が失敗するであろうことは、明らかだといえるでしょう。ただ、今回の水道法改正が通ってしまうと、そうした海外の事例に疎い地方自治体の首長がコンセッション方式を地元の水道事業に導入してしまうかもしれません」(同)。

 一度、コンセッション方式を導入してしまうと、民間企業では上手くいかなくて再び公営事業体に運営を戻すにしても「そう簡単にはいかないこともあり得えます」と辻谷氏は指摘する。「民間企業に運営を任せることで、公営事業体の人材、技術が弱体化してしまう、あるいは失われてしまうかもしれません。最悪の場合、運営権を持つ民間企業が倒産した場合など、一時的に水道が止まってしまう可能性もないとは言えません。運営権を持つ企業にファンドなどが投資した場合には、再公営化の手続きも複雑で、コストのかかるものとなるでしょう」(同)。

◯水道事業の再公営化も大変

 辻谷氏の言う通り、海外の事例を見ると、民営化にも、再公営化にもリスクが伴うようだ。水道公営化問題について調査を行っているオランダのシンクタンク「トランスナショナル研究所」の報告書によれば、米国のインディアナポリス市では、2002年から水道事業を請け負った民間企業が水質の安全対策を怠ったり、住民への過剰な請求をしたため、2010年、市当局は再公営化を決定。だが、20年間の契約を10年間に短縮するかわりにその企業に2900万ドルを支払う羽目となった。ドイツのベルリン州も、1999年に水道公社の株を民間企業に売却した結果、水道料金の高騰や設備管理の低下を招き、2013年に州が株を買い戻すことになったものの、13億ユーロもの資金が必要となり、その経費は水道料金に上乗せされることになった。

◯外国の水道関連企業が内閣府職員として水道法改正に関与!?

 さらに、水道法改正案の立案に、フランスの水道関連大手ヴェオリア社の職員が、内閣府の「民間資金等活用事業推進室」に政策調査員として在籍していることが、今年11月29日の参院厚生労働委員会での福島みずほ参議院議員の追及で明らかになった。水道法改正が可決した後、事業参入するであろう企業の職員が法律の改正案の策定に具体的に関わった疑いがあることから、福島議員は「利害関係者で立法事実の公平性がない」と批判した。ヴェオリア社は、地元フランスのパリ市で、スエズ社と共に1984年から上下水道の事業を担った。だが、その後、パリ市の水道料金は2.25倍にまで高騰。2010年にはパリ市は契約を打ち切り、再公営化したのだ(関連情報)。

◯水道のあり方について考えて

 辻谷氏は「コンセッション方式には反対ですが、全国の水道事業が困難に直面しており、対策が急がれることは事実」と言う。「例えば、大阪市では耐用年数を超えた配管が5割を超える、という状況です。他の自治体も耐震用の配管に変える必要がありますが、人々の生活や命に係わることなのに、国の政策の中での水道事業への優先順位は低い」(同)。今回の水道法改正を機に「多くの人々に日本の水道の在り方について考えてほしい'」と辻谷氏は語る。

 政府与党は、本日の衆議院で水道法改正の政府案を強行採決する構えだが、国民の命や生活に関わることにもかかわらず、あまりに強引すぎないか。メディアももっとその課題を追及すべきだろう。(了)

*本稿は、『週刊SPA!』2017年4月18日発売号への寄稿に、新たな情報等を加筆したもの。
【主張】改正水道法 国の関与で懸念の払拭を 2018.12.7 05:00政治地方自治
https://www.sankei.com/politics/news/181207/plt1812070004-n1.html

 自治体の水道事業の基盤強化を目的とした改正水道法が6日の衆院本会議で可決、成立した。

 自治体が所有する水道の運営権を民間企業に売却することを可能とする内容だ。人口減少による水需要の低下と、これに伴う経営環境の悪化が背景にある。
 だが、水は国民の健康と命に直結し、経済活動を支える最重要のライフラインである。
 地震や豪雨などの災害が多発するわが国で、給水などの応急対応を民間に任せることや、外国資本の参入には懸念がある。利潤を追求する民間への委託には、水質低下への不安もある。

 改正法は、国に、水道基盤の強化に向けて基本方針を定めることと明記した。民間参入には厚生労働相が許可するとした。
 民間の参入基準や料金設定、水質の管理などについては、自治体任せにせず、国の関与が欠かせない。民間が手を挙げない地域では互いに水を融通し合う、広域連携も検討課題となる。

 厚労省によると、赤字の水道事業体は全体で約3割に上る。新法には民間のノウハウ導入で自治体の財政負担を減らし、老朽化した施設の更新を促す狙いがある。

 防災面でも、今年6月に起きた大阪北部地震では断水や、水道管の老朽化が大きな問題となった。全国の耐震適合率は4割弱にとどまり、大規模災害時には断水が長期化する危険性が高い。

 ただ運営権を民間に売却すれば水道管が新しくなり、安くて安全な飲料水の提供を受けられるというわけではない。そもそも自治体が赤字に悩む地域に民間企業が名乗りを上げるだろうか。

 参入した民間企業が過度の利潤の追求に走れば、料金の高騰と水質低下を招く恐れもある。実際に海外では、経営を再び公営に戻す動きが目立っている。

 英国に本部を置く公共サービスの調査機関によると、2000〜15年に世界37カ国の235の水道事業が再公営化された。

 パリ市では、度重なる水道料金の値上げに市民の不満が高まり、再び公営化された。南米ボリビアでは1990年代、水道事業の民営化後に水道料金が2倍となって暴動が起きた。

 改正法の適用を考えている自治体は目先の利益にとらわれず、災害対応と安全な水の供給に責任を持つ姿勢が求められる。