イカルチドリも見られるようになりました。今回は飛びものです。
そういう苦労もあったが、仕事の方は順調に進んでいた。木こりの経験者の上等兵や一等兵数名を班長にして、伐木班・整木班・運搬班として流れ作業式に材木を運搬した。山の下に積み、トラックで駅まで輸送するのだ。一番気を遣ったのは、山の上から下への材木の運搬であった。山道に木を並べ、木ソリに材木を山のように積んだものを下ろす作業は、スピードがつき過ぎるとカーブを曲がりきれなくなって転倒することもあり危険であった。伐木も倒木の下敷きになると怪我をするが、指揮者の指示に従って行動すれば危険がない。幸いけが人は一人も出なかった。
ある日の午後、突然爆音と共に機関銃の音が聞こえた。米艦載機数機が低空で山すれすれに急降下しているのが見えた。指揮班のT軍曹に状況を視察するように命じたところ、「隊長殿、自分には妻子がいますので、勘弁して下さい。」と拝むように断った。こんな弱虫には頼めないと思ったので、「では、俺が行く」といって双眼鏡を手にして山を登った。部下達は無事か、爆撃の目的は何かを確かめるのが目的であった。山頂から向こう側を見ると、今まで気がつかなかったが飛行場があった。高麗川飛行場で、戦時中に急造されたものらしい。滑走路の所々に爆撃の跡が見え、友軍機は掩蔽壕に入っているのか一機も見えない。囮の飛行機が二、三機見える。囮には目もくれず、米軍機は掩蔽壕めがけて急降下爆撃を行っている。山頂すれすれに米軍機が来た。赤ら顔の飛行兵士の顔が見える。こちらには気がつかなかったようである。ひとしきり、爆撃と機関銃掃射をして小一時間で引き上げていった。幸い、我が部隊は木の陰に隠れて見つからなかったため、被害は皆無であった。しかし、こんな山奥まで空襲されるとは油断がならない。(このシリーズ最終回です)