漆器(しっき)は器胎に木材、革、竹、和紙等に塗料である漆(うるし)を塗った塗り物の総称で、古代から使われてきた大変堅牢で、用と美を兼ね備え、生活用品や美術品として、我が国の文化に貢献してきた。
漆液(うるしえき)はハゼ科の広葉樹で、木の幹や枝からの樹液を取り、原液の生漆(きうるし)を用途によって、精製したもので、漆工(しっこう)には生漆をそのまま使う場合もあり(摺り漆・拭き漆)、通常、素地の狂いを押さえるために、生漆と地の粉や砥の粉を混ぜた錆(サビ)を塗り、しっかりとした土台を作る下地(したじ)用にする。精製した漆に顔料を練り込むことによって、色彩を与えることが出来る。椀などの製作工程は30工程に及ぶこともある。
塗料は漆やセラックニスなどの天然塗料と、ナフサを分留し、石油系の合成塗料に分けられるが、強靱で、独特の光沢を持つ塗料は漆以外にはないとさえいわれている。最近では生漆の殆どは中国やベトナムなどの東南アジアからの輸入品が占め、僅か全体量の2%が日本産である。そのうちの60%が岩手県の浄法寺産であるという。市販品として、生漆を注文すれば手にはいるが1キロ詰めで5万円はする。中国産でも8千円から1万5千円はする。
何故日本産が減産してきたのかというと、漆液を採取する量が少なく、時期によって産出量が変動する。10年位経過した樹木に傷を付け、滲出する樹液を掻き取るのであるが、殺し掻き(ころしがき)といって、切り倒し、枝に含む漆液まで搾り取るため、植林しても次に漆を取るには10年が必要となる。樹木の成長と漆の樹液採取方法等により、年間を通じて大量に生産できない。また、輸入品の不純物の多い生漆を使った漆器自体の値段も高く、漆器を消費者が購入しなくなって、在庫を抱え、結果的には、全体の価格も高くなり、採算が合わないことが大きな理由であろう。(次回へ続きます)