三寒四温で気温の歓談が激しいですが、冬鳥は姿を消しつつあります。しかしジョウビタキはまだまだ元気で飛び回っています。
偶然であったが他に見るべきテレビ番組も無かったため、チャンネルを変えていたところ、辻調理専門学校の初代校長であった辻静雄氏(1933年生まれ、1993年3月2日没)の特集(昭和偉人伝)が放映されていた。BS朝日午後9時からの2時間番組であった。自分が見たのは辻静雄氏の部分で、途中からであったが、大変興味をそそられる内容であった。
結論から申し上げると、教育の在り方としての神髄を実践した生き様は多いに称讃されるべきで、模索が続く学校教育の今後の在り方に対し、示唆に富んでいたことである。辻氏は早稲田大学文学部フランス語学科を卒業後、新聞記者をしていて、結婚されていたが、奥様の御尊父が辻調理学校の創設者であり、新たに設置する調理専門学校を任されるようになった。
専門性を必要とする学校であるため、一からフランス料理を学ぶことから始め、我が国では数少ない調理専門学校に作り上げた。番組では成功に至るまでのご苦労話が殆どであったが、一流のフランス料理シェフをフランスから招き、講師とすることや、指導員訓練にも手がける。食材も一流の食材を海外から調達し、惜しげもなく教材に使い、1指導員には10人の受講生が付くとする少数精鋭の学級編成を行い、自らもフランス料理をフランスへの留学で体得する。自費でサロンを作り、著名人を集めて、受講生の実戦訓練の場としたこと等、数多くの教育訓練上の工夫と人材育成を行ってきている。その間に多くの著作に手がけ、将に留学で体験したレシピに基づく教育訓練がなされ、卒業生は1万5千人に上り、揺るぎない一流の調理学校に仕上げた。
感銘を受けた点は、受講生の訓練終了後の目的がはっきりしていること、教育訓練の場が実践であり、実物教材で、現場の一流の指導者を抱え、指導体制が強固であり、即就職に結びついていることである。調理師等の職場では古くから技(わざ)は盗んで獲得するものであるとの不文律があったが、その脱却のため、タブーとされた手の内を示すことによって、この悪癖を取り除いたことである。
更に、職業人としてのマナー、知識、技能、技術をマスターすることで、人は更なる挑戦と人間性の向上に目標ができ、終わりのないことを強調されていた。将にその通りで、多くの企業での企業内訓練の衰退が決して我が国の将来を明るくしないのは確かなことである。大半の地方大学が地域に根を下ろした実践教育の場となるように、早急な変革を期待したい。このことは過疎化に良策がない現状の打破に、職住接近という一石を投じることになる。