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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

漆工作業その7

2015年07月05日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 箆(へら)は塗装作業全般で必需品である。多用されるのは木べらで、材質はヒノキやモミジが使われる。木材ばかりでなく、金べら、プラスチックべら、竹べら、ゴムべら(長四角形)等がある。既に三角形を長くした物を市販されている。使用に当たっては、先端に刃を付け、腰を付ける。刃はサンドペーパーで削ればよい。腰を付けるのは言葉で表現するのは難しいが、要は弾力性を付け、砥の粉や地の粉を潰す、下地材を調合、下地(パテ)付け、粘性の高い塗料の被塗物への塗り等、用途は広い。

 

 漆工作業では、通常ヒノキ板から塗師屋包丁(丹波)で削り、使用目的によって腰の強さやへらの大きさを変えて数本準備している。へらを自在に使える様になるのは年季がいるが、使い慣れることが大切である。ケーキ屋が使うパレットナイフでも同様で、スポンジケーキに生クリームを塗るのとよく似ている。

 

 漆工用の定盤(箱定盤)や、手定盤の上で、下地材をよく練り合わせる。塗料や下地材は、調合されているが、塗りやすい様にシンナー(溶剤)を加えて粘度を調整する。下地付けは、塗りつけ、斑(ムラ)直し、仕上げの3工程で行う。口で言うのは簡単であるが、熟練を要する。塗料は乾燥するため、時間が経つとゲル化(キョトキョトになる)し、へらでは取り扱いが困難となる。ゲル化のタイミングはへら付けを行う面積や、素材の吸収性、塗料の種類、気温、湿度、風速等により異なるため、使用する条件を熟知しないと失敗する。思った以上に取り扱いが難しい。そうはいっても、どの仕事でもいえることであるが、カンやコツの類は失敗の繰り返しで覚えるものである。

 

 へらは刷毛に含んだ塗料をしごき出すのにも使われる。刷毛は色換えをする場合や、塗り作業が終わり、翌日また使う場合には、そのままにしておくと塗料で固まってしまい使えなくなる。漆塗りには腰の強い箱ばけを使うが、どの刷毛であっても同様に、塗料をしごきだした後、空気に長時間さらさないために、水や、種油の中に付ける。使うときは水の場合は水を十分切った後塗料を含ませ、刷毛に馴染ませる。数回突き出しを行う。種油は不乾性であるため、刷毛に含んだ油分を突き出し、漆液に浸け、突き出しを繰り返し、十分油分を取り除く。

 

 へらについても、熟練が技を高め、次の工程の研ぎを軽易にするか、困難にするかに影響するため、専門家から教えを受け、実地で上達する他はないであろう。インターネットでビデオでもあればよいのであるが。