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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

漆工作業その8

2015年07月06日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 今回のテーマは塗料の濾過について触れることにする。漆工では塗料の濾過のことを濾す(こす)という。吹き付け塗装や建築塗装では、フィルター、篩い、ストレーナー等といわれる道具を使う。塗料に含まれているゴミや、沈殿物等を取り除いた塗料を塗りに使うが、目の粗さがあって、数字が大きくなると細かい目の大きさになっている。漆も同様であるが、吉野紙又は濾し紙という薄い和紙を利用する。漆工の場合は上塗りになるほどちょっとしたゴミや埃を嫌うので、和紙を数枚重ねて何度も濾過する。容器の上に半紙大の和紙を二重に重ね、その中央に塗料を乗せて、塗料がこぼれない様に端を折って、左右から捩って塗料を濾過する。

 

 原液を濾過してから溶剤で薄めるのではなく、始めに塗りやすい粘度に溶剤を加えて希釈した塗料を濾す。粘性が強いと濾し紙が破けてしまう。塗料を絞りきった濾し紙を、一方の端を口にくわえ、残った塗料は、へらで掻き取る。こうして塗料を掻き取った和紙は、広げてそのまま又は乾燥させて、被塗物を塗装する前に表面に着いたゴミ取り用に使う。

 

 容器に余った塗料は、原液に戻さずに、密閉容器に保存するか、その日の内に使い切る様にしたい。被塗物が総て塗り終われば良いのだが、どうしても残ることが多い。塗料の殆どは可燃性であるため、処分する場合でも、地域の分別収集ルールに併せて廃棄する。

 所によっては廃棄業者が引き取らない場合もあるので、注意が必要である。乾性油が成分である油性塗料については、ボロ切れなどに吸わせて保存すると自然発火する場合がある。水系の塗料が多くなってきたとはいえ、乾燥塗膜は可燃性である。有機溶剤の処分についても十分注意したい。

 

 自宅で吹き付け塗装をする方は少ないと思うが、漆工ではほとんど使用しない。高価な塗料である漆を溶剤に溶いて吹きつけすることは可能であるが、吹き付けは、空気圧の力を借りて空中へ放出されたときに霧化する。塗膜となるのは30%以下であるため、飛散する塗料は70%が無駄になるからである。吹き付けに適するラッカーの様な塗料より粘着性が高いので、薄めすぎると「たれ」を引き起こす。湿度が高いときには白化現象を引き起こす。

 

 環境汚染の問題は塗料を取り扱う者にとっては厄介である。無視するわけにはいかない。漆はかぶれる人もいるし、保管についても気を配らなければならない。マニアにとっては保管する溶剤等の危険物は、数量が少ないため問題はないが、常に火災の発生源になる可能性が高い。十分気を付けたいものである。