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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

漆工作業その12

2015年07月11日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 どの産業においても盛況の状況が何時までも続くわけではない。特に衰退産業の中に、伝統産業が含まれているのは、嘆かわしいという他はなく、関係した者の一人として、日々興隆を夢見ているのであるが、特別な良案を有しているわけではない。抜本的なてこ入れを行うこと以外に衰退の連鎖は続き、何れは従事する労働者が激減する時代を迎えることは必至である。

 

 衰退の原因で思い付くことは、1.漆工産業で生まれる製品の価格が高く、代用出来る安い製品に凌駕されたこと、2.完成品に至る手作業や工程が複雑で、単純作業化にしてこなかった、3.材料である漆塗料の生産が国内では僅かでしかなく、殆どが日本産に比べ、品質が悪い中国産や東南アジア等からの輸入品である。4.産業を後押しする団体や政府からの資金援助・技術支援等が乏しい。5.日本の各地で名前が知られた漆器の産地はあるが、斬新な地場産業として魅力が乏しくなっている。等であるが、最近の個々の動向は知り得ない部分もあり、実態からかけ離れているかも知れない。

 

 しかし、再興に向けての動きが見えないし、聞こえてこないので有れば、衰退を真摯に受け止めなければならないであろう。では復興の可能性はどうであろうか、漆工製品が堅牢で、美的価値を持ち、様々な加飾技法の種類があり、補修も出来る。価格の面では高止まりで、日用品は価格の安い代用品が市場に溢れている。使用する塗料は輸入品であり、漆工材料の一部は国産であっても、国産に比べ、価格の安い材料が使われていれば、もっと価格に幅を持たせることは可能と思われる。実態は総てを国産品が使われてはいない。

 

 多くの技法が我が国で開発され、芸術性を高めてきたが、現在の生活には、縁遠くなってしまっている。生活の風習が昔と変わってきていて、金襴緞子的な豪華さにも違和感を覚えずにはいられない。

 

 漆や漆器をジャパンと英語では言うが、我が国の名前が付くことはチャイナが陶器を示すのと同じで、折角付いた名前をどのように育んでいくのか、時代にあった漆器が生活を潤うようにするためには何が必要なのかは、当事者は勿論、従事している雇用者にも分かっているはずである。高級志向だけではなく、日用品にも拡大し、販路を広げることであろう。むしろ高級志向からの離脱の方向が、新たな可能性を発見出来るかも知れない。伝統や、過去に拘らず、考えを逆転し、漆の持つ性質を短時間の硬化を可能にする新技術の開発・導入等、積極的であっても良い。手間をかけずに製品化する研究開発を行うべきではないであろうか。