【コリアンダー】タイ語ではパクチー、中国語では香菜(シャンッァイ)で、日本ではカメムシ草等と呼ばれている。セリ科の植物で、一年草である。最近は国内のデパートやハーブ専門店で売られている。生の葉や茎、根や種子も利用される。また、葉を乾燥したものや、種子を粉末にしたものも市販されている。和名が示すとおり、独特の香りがして、料理には合わないとする方も多く、好き、嫌いがはっきりしている。東南アジアや中国へ行かれた方は日常、食事で接する機会が多い。
ベトナム料理のフォー(太めのビーフンを使ったスープうどん)や春巻きには欠かせない食材である。タイ料理の辛いスープであるトム・ヤム・クンやタイスキにも風味を与えている。インド料理のカレーには、種をすりつぶしたコリアンダーが入っている。
香りの主成分はピネン、リナロールで、バラや柑橘系の香りであるモノテルペン類である。粉末状にしたものは生の葉のような強い香りはない。その理由は、テルペン(テレピン)類の揮発性による。生の葉はビタミンCが豊富に含まれている。
栽培は簡単で、家庭菜園でも作られている。花は密生して咲くがなかなかかわいらしい。性能としては、食欲増進と鎮静効果がある。
自分も初めて食した香菜(ベトナム語ではザウムイ)はあまり好きではなかったが、来日したベトナムの友人がいて、蒲田のベトナム家庭料理店へ何回か通うちに、以前ほどいやではなくなり、今では積極的に食するようになった。ベトナム料理の味付けには魚醤(ナンプラー)が使われるが、この味も好き嫌いが多い。どのような料理にも香菜が入っていて、食材の香辛料は目で見て、においを嗅ぎ、舌で味わうが、舌が一番記憶に残りやすいようである。舌が記憶した味覚は目で見た形や、色彩のように説明できないところがある。
舌にとっては食する回数であり、うまいと感じたら、再度、感じようとするわがままな存在でもある。時間が作り出す味覚経験の長さ、たとえていうなら、家庭の味、お袋の味のような習慣的な味覚、慣れた味覚であるということも分かった。(次回へ続きます)