鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

スパイスの世界2(カルダモン・ミョウガ)(3回シリーズその2)

2013年05月16日 00時00分01秒 | 緑陰随想

【カルダモン】アラビア語でアホアという言葉の意味であるのコーヒーは、トルキッシュコーヒーといわれ、コーヒーにカルダモンという香辛料が配合され、粉末にして、特徴ある柄のついた銅製のカップに水を加えて沸騰させ、コーヒーカップに移して、粉末のコーヒーかすが沈むまでしばらく放置し、その上澄み液を飲んでいた。一種のドリップコーヒーであるが、砂漠の中のテントで火をおこして、そこで客に振る舞い、または自分で飲んでいるようだ。もちろんカイロ市内にはコーヒー店があり、水たばこを喫煙できるとともにコーヒーや甘い紅茶が飲める。大変美味で、一度飲んだら忘れられない味である。エジプト人から聞いた話であるが、カルダモンには身体を冷やし、媚薬の効果があり、古くは金の重さと同量で交換されたといっていた。

 カルダモンはショウガ科の多年草で原産地はインド、スリランカ、マレー半島である。最も古い香辛料の一つで、種子が香辛料となる。カレー粉の香辛料にはなくてはならない。清涼感があり、レモン油や樟脳油のような強くて甘い香りがし、味は辛く、スパイスの女王といわれていて、なかなか高貴な香りを持っている。暑い国では手放せない香辛料である。芳香の成分はα-テルピネオール、1,8-シネオールである。

 何でヨーロッパ諸国の人々が香辛料を確保しようとしたのであろうか、考えられることは、狩猟民族の食事の中心が動物の肉であり、腐りやすく独特の臭気を持っており、それを防ぐためだろうと思う。流通が機能せず、保存食として香辛料と塩が大量に必要であったためであろう。ハーブティーや紅茶、コーヒーが現在でもよく飲まれていると聞くが、このためだけではないであろう。7~15世紀に中東のイスラム商人が手がけた香辛料が胡椒、シナモン、グローブ、ナツメグなどで、抗菌、防腐作用を持つようだ。におい消しや着色、風味付けなど考えられるが、漢方でも使われている病気の治療薬としても使われたと思われる。

 香水が発達したのは、今ほど風呂に入らなかっただろうし、体臭を消すためと、水洗のトイレは完備されていた都市は極僅かであったので、道ばたや住居地近くに捨てていたため、臭気が強かったことは容易に想像できる。汚物のにおいを消すためともいわれている。
ご婦人の足先を優雅にするハイヒールが生まれたのも裾周りに汚物がつかず、接地面積を小さくするためであったと記憶している。これらのこともいずれはっきりさせたい。古い時代に取引されていた香辛料の全てに抗菌・防腐機能があったわけではなく、思い込みもあったようである。(次回へ続きます)

スパイスの世界2(カルダモン・ミョウガ)(3回シリーズその1)

2013年05月15日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 早い時期から西アジア世界には植物の花、果実、皮などの食料品に入れ、防腐力を高め、食欲の増進を図る東方産の香辛料(スパイス)も知られていた。その中心は、インドと東南アジアの胡椒や肉桂(シナモンとカッシア)、インドネシアのモルッカ諸島の丁香・丁字(グローブ)、肉ずく(ナツメグ)などであった。ムスリム商人は、インド洋からペルシャ湾を経由してこれらの香辛料を輸入し、バクダッドを始めとするイスラム世界の需要に供するとともに地中海を渡ってヨーロッパへ再輸出することにより、大きな利益を上げた。

 インド洋から紅海を経てエジプトへ運ばれた香辛料は、アレキサンドリアでヨーロッパ商人に売り渡された。特に胡椒と香料の商人と呼ばれたカーリミー商人は東方からの香辛料の輸入を独占して莫大な利益を上げ、政府に貸付金を提供するばかりでなく、モスクやマドラサ(学校)を建設して社会的にも重要な役割を演じた。(イスラム辞典から引用)

 何故に引用したかといえば、香辛料の貿易がイスラム商人を産んだかを知りたかったからである。エジプトへ技術協力で派遣されていたときに、カイロの市場には、香辛料を商いする商店が多くあり、現地の人に理由を聞くと香辛料が古くから貿易の主流を占めていたことを知らされた。コロンブスのアメリカ大陸の発見や、マゼランの世界一周航海路発見などの偉業はスパイスを求めるための冒険の結果なのである。これらの偉業が植民地を形成し、ヨーロッパが海洋国家として世界戦略に繋がる発端になったことや、中東がヨーロッパと東アジアを結ぶ中継地として繁栄したことなどにスパイスが関わっていることが分かった。香辛料との係わりについて古人の行動に想いを馳せると、興味が尽きない。筆者なりに少しずつ紐解いてみようと思う。(次回へ続きます)

スパイスの世界1わさびと生姜(5回シリーズその5)

2013年05月14日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 次はショウガ(生姜)である。生姜は生姜科に属する多年草でショウブに似た植物である。古くから「はじかみ」と呼ばれていた。日本料理の焼き魚には酢漬けにした新生姜に赤身が付いたはじかみを添える。語源には「端赤味」から来たといわれている。また、刺激的な味で顔をしかめる「恥じらい」からともいわれている。寿司屋ではガリと呼んでいるが、噛んだときにガリッと感じる擬音からか、よく分からない。

 英語ではジンジャーといい、ジンジャーエールの飲み物は有名である。食用とするのは地下茎で、南アジアが原産地であり、世界各国でも栽培されている。辛み成分はジンゲロンとショウガオールで、黄色い色素であるクルクミンが含まれる。甘い芳香性の主成分はジンジベロールである。生姜は魚や肉料理の生臭さを消すために用いられる他、漬け物や、菓子などにも使用され、二日酔い防止時に飲む健胃剤にも使われる。最近は健康食品として見直され、女性の冷え性には生姜湯に効き目があるとされ、多飲されている。柴舟といって生姜の砂糖を片面に塗ったせんべいや、臼杵せんべいも同様で、生姜の乾燥スライスを砂糖漬けにしたドライフード、どちらも生姜の香りがする名品である。

 生姜の香りが甘、辛どちらの料理にも合い、中華料理にはニンニクと長ネギと生姜のみじん切りをいためることは殆どの料理に使われるベースとなっている。にぎり寿司には必ず甘酢に漬けた生姜があり、直前に食した握りの味を洗い流すというか、舌の感覚を戻すために食するといわれている。ソース焼きそばやたこ焼きには紅色に着色した千切り生姜(紅生姜)が入っていか、付け合わせにでるか、牛丼にはトッピングに用いられている。柴漬けの中身も生姜の千切りが入っているし、生姜は脇役として料理に独特な辛みを加えているスパイスである。豚肉ロースの生姜焼きは、月に1回は口にする定番料理で、大人から子供まで多くの方に愛されている。生姜をベースにした焼き肉のたれは有名で、甘口から辛口までのバリエーションも豊富である。
なぜか暑いさなかに食する素麺や冷や奴、鰺や鰹のたたきにも生姜は欠かせない薬味である。(このシリーズ最終回です)

スパイスの世界1わさびと生姜(5回シリーズその4)

2013年05月13日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 わさびの西洋版はホースラディッシュと呼んでいるスパイスがある。ラディッシュは大根のことで、そういえばわさびと大根は親戚である。日本のわさびよりは辛さがないが、ローストビーフやステーキには必ずといって良いほど薬味としてついてくる。すり下ろしているので焼きサンマにつく大根おろしと同じようである。辛み大根でローストビーフを味わっても同じ効果があるかもしれない。

 最近はチューブに入った練りわさびが廉価で市販され、手軽に利用されている。しかし生のわさびは高級料理屋か高級寿司店ぐらいでしか使われず、粉わさびを水で溶いて使う寿司店も多い。成分が揮発性のため、粉わさびをぬるま湯で溶いた方が辛みは強くなる。しかし時間とともに揮発するため、辛みは次第に弱くなるか無くなる。

 粉わさびは、生わさびの下級品、わさび大根やアイヌわさびなどを主原料にし、これらをスライスして低温乾燥させ、粉末としたものに、でんぷん、色素、香料、芥子粉などを加えて作ったもので、香料にアリルからし油(アリルイソチオシアネート)が使われている。保存には密閉した容器に入れ、湿気を防ぐ。保存が悪いと変質し、辛みが失われる。通常、深めの器に温湯で指を使って練る。熱湯では酵素が作用しなくなるので注意する。
古くは粉わさびを溶いて布等に張り付け、リュウマチや神経痛に家庭貼り薬として使われたようである。(次回へ続きます)

スパイスの世界1わさびと生姜(5回シリーズその3)

2013年05月12日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 まずはわさびである。わさびの辛さは鼻に抜けるツーンとした辛さであり、大根や小松菜と同じく、我が国特産のアブラナ科多年草の植物である。元来山奥の清流で気温が低く、水温の変動が少ないが場所が生育に適している。自生していたものを沢わさび田や陸畑で栽培している。わさびの辛み成分は芥子と同じシニグリンで、おろすことによってシニグリンに酵素(ミロシナーゼ)が働いてアリルからし油(アリルイソチオシアネート)を生じる。これは揮発性の精油成分を持っており、この成分は和辛子にも含まれている。

 日本以外ではこの辛さは殆どといって食体験していないようで、外国人が、わさびの辛さに驚き、にぎり寿司を拒む原因になったようである。しかし、最近では外国の多くの都市にある寿司店が賑わっていることからすると、結構、さび抜きではあるが、通といわれる経験者が増えているのであろう。伊豆や静岡産を本場物と呼んでいて、多摩川上流や長野産のものより高値で取引されている。辛み成分の含有量は、中央部より上部が最大で、下端が低い。わさびをおろすときは上端よりすり下ろした方がよい。

 わさびは大きい方が味も良く、イボが小さく緑の部分が多いものほど上等である。おろすときは粗めのおろし金が良く、香りと甘みがでる。おろし金を暖めると粘りがでて、辛みを増す。細かい目のおろし金では辛みが強くでるといわれている。すり下ろした緑色のわさびはにぎり寿司や刺身には付き物で、日本人にはなじみ深い。魚の鮮度を保ち、清涼感があるため、酒粕と合わせてわさび漬けはご飯にも合うし、「板わさ」はかまぼこの間に挟んで酒の肴には良く合う。

 わさび漬けには金印というランクがある。わさびの根もと部分を千切りにし、酒粕とあえたもので、あまり市場にはでていないようであるが、この大辛のわさび漬けを長野のわさび専業店から何度か取り寄せたこともある。食すると涙が止まらない辛さである。しばらくは口の中にしびれが残る一品である。わさびは時期になると葉や茎、花を食することがある、ちょっと湯がき、直ぐに冷水にさらし、水気を切って酒とみりん、醤油を合わせて調味液につけ込む。半日もつけ込むとシャキシャキ感が残るわさびの醤油漬けになる。(次回へ続きます)

スパイスの世界1わさびと生姜(5回シリーズその2)

2013年05月11日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 反面、腐敗防止のためのスパイスの利用は必要なかったのか、または、素材の味を楽しみ、旬の味に季節感と美意識とが加わり、自然へのこだわりを見て取れる。極力添加物やスパイス更には調味料を避ける方向に進んだことは、良し悪しの判断は別にして、日本人の味覚の幅を狭めてきたようである。海外旅行へ行って、現地語で書かれたメニューを見て分からないままに食事を注文し、出てきた料理の味をうまいと感じることはラッキーで、まずは、受け付けない方が多いのではないか。こうしたエピソードなどをご紹介できればと思った次第である。

 味覚には甘い、辛い、苦い、酸っぱい、えぐいであるが、これらの組み合わせがあり、中でも辛いは芥子の辛さや胡椒の辛さの違いがあり、その強さは激辛や大辛、中辛など段階がある。胡椒と唐辛子はどちらも辛いスパイスであるが、同じ辛いといっても、こしょう辛さか唐辛子辛さとでは微妙に異なる。山椒の辛さも独特なしびれを伴う。正しく伝えるためにはスパイスの名前でいうほかない。つまり、味覚の表現は個人的な感覚であり、舌は覚えていても再現する表現が難しい。

 九州で生活していたときに胡椒というと唐辛子のことをいっていたようだ。ホワイトペパーやブラックペパーもやはり胡椒と呼んでいて、テーブルに卓上瓶があるとどれをいうのかとまどうことがあった。唐辛子は南蛮ともいい、南蛮漬けは有名である。胡椒の胡の字は国外のことを指すので、胡椒は外国のものという意味が含まれていたのであろう。唐辛子は唐から来たのであろうか、いずれ検討したい。(次回へ続きます)

スパイスの世界1わさびと生姜(5回シリーズその1)

2013年05月10日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 食生活が欧米化した結果かどうか不明であるが、味覚の変化はスパイスによるところが大きい。日本のスパイスといえば一味や七味唐辛子、わさびに、黄芥子、しょうが(ジンジャー)と相場は決まっているが、この他にもタケノコやウナギにはサンショウ(山椒)、青じそやミョウガ、ネギにニンニク、タマネギ(オニオン)シナモン(桂皮)白・黒こしょう(胡椒)など日常の食事に欠かせない。セロリやパセリ、ローレル(月桂樹の葉)、マスタードやケーパー、バニラなども比較的良く口にしていると思う。中華料理やタイ料理にはスターアニス(八角)や香菜(コリアンダー)、イタリア料理にはオレガノがかかせない。世界にはこの他にも数多くのスパイスがある。スパイスは今や食生活に欠かせないし、名前を知らなくてもカレー粉のように多くのスパイスが混合され食されている場合にはそれを構成しているスパイスの種類を言い当てることは難しい。更にソーセイジに入っているナツメグ(肉づく)などもいわれて初めてそうかと分かる部類であるが、知らずに食しているスパイスも多い。

 そもそもスパイスが食物の腐敗防止から来たことはあまり知られていない。我が国では魚介類、鶏肉、豚肉、牛肉などの肉類、野菜など流通機能が良いため、新鮮なものが食卓に上る。最近は極端な賞味期限やちょっと神経質ともいえる時間で加工食品を廃棄するなど売れ残った食品の管理は徹底されている。食中毒が発生すれば提供した食堂は営業停止となり、食品メーカーは保健所の指導を受ける。場合によっては回収や風評等倒産に繋がることもあり、特に腐敗しやすい時期は相当の神経を使うことになる。冷蔵や冷凍設備も完備されていることで、安全な食材が手にはいる。食材の多さから古くからあまりスパイスに頼らない食生活が出来たことは先人の努力だけではなく、食材をムダにしない食材の加工方法によるところも多い。生で食べたものを焼いて、煮て、塩漬けや、佃煮などの塩による加工や、ひもの(乾物)、発酵食品とする、缶詰にするなどの工夫が行われてきた。(次回へ続きます)