鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

スパイスの世界11オールスパイス(2回シリーズその1)

2013年06月08日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 【オールスパイス】3種類の香辛料を混ぜ合わせた香りとほろ苦さと甘みを持つ香辛料で、原産地はジャマイカである。オールスパイスのことを産地名で、ジャマイカ胡椒とも呼ばれる。日本語では百味胡椒。3種類の香辛料といったのは、ナツメグ、グローブ、シナモンで、これらのスパイスは大変貴重で、古くから高値取引をされていた。世界各地へ広まったのはそれほど古い時代ではないが、コロンブスのアメリカ大陸発見によって知られるようになった。

 ここに登場したオールスパイス、グローブと同じフトモモ科に属し、常緑樹の花が咲いた後の種子を利用している。オールスパイス1種で3種をカバーするのであるから、価格が安くなるため、発見当初の人気度は相当高かったようだ。どのような料理にも使え、万能スパイスである。

 マヤのインディオたちは古くから使っており、エジプトと同様に、王の死体にはこのオールスパイスを用いていた。エジプトのミイラ作りには、ナツメグやシナモンを使っていたので、古代文明同士の交流がないはずなのに、スパイスの利用での、不思議な共通するつながりがある。現代では死者をミイラ化することはないが、香りがよい花を手向け、死者への想いを巡らせる要因として、雰囲気を醸しだし、香料が持つ精神の清浄・浄化作用(リラクゼーション)によるものが大きいと考えられる。

 キリスト教会やイスラム教のモスクで乳香を焚くこと、寺院での線香や焼香等も同様と考えられる。同様に、四季の変化やお祝い事などの儀式にも香料は欠かせない。例えば、正月の屠蘇散、こどもの日のショーブ、お祝い事には桜茶、秋の味覚は焼き栗や焼き松茸、冬至に使うゆず湯など。(次回へ続きます)

蜘蛛の糸量産化を祝して(2回シリーズその2)

2013年06月07日 00時00分01秒 | 紹介

 米国の映画界ではスパイダーマンを正義のスーパーマンとする物語が人気を集めている。
 蜘蛛のように移動には自在に使える弾力性の糸(ロープ)が登場する。将に蜘蛛の糸の弾力性と強靱性を兼ね備えていた。

 以前ジョロウグモの捕獲の様子を写真紹介したことがあるが、このときには、縦糸と粘着力を持った横糸の話をしたはずであるが、ジョロウグモの臀部には、二種類の糸を繰り出す糸の排出口を持っている。粘着力のある糸にふれないように足裁きをしており、8つも眼がついているのでよく見えるのかもしれないとの話をした。

 通常、蜘蛛の糸は上部から下部への移動用糸には粘着力の無い糸を使っている。獲物をとらえたときに巻いている糸も粘着力のない糸を使っている。蜘蛛の巣の中央部分にえさをつり下げ、身体を中央に移動したら、つり下げた糸をたぐり寄せていた。子供の蜘蛛は生まれた後、風が吹く日に枯れ枝の上まで行き、尻から糸をはき出し、風に乗って移動するといわれている。将にスパイダーマンの移動にも使えるかもしれない。

 発明・発見はまだまだ続くであろう。何時までもロマンを忘れないことが、成功へ結びつく鍵であると思った次第である。(このシリーズ最終回です)

以前掲載したジョロウグモの捕獲の写真を再掲載します。クリックすると拡大します。
























蜘蛛の糸量産化を祝して(2回シリーズその1)

2013年06月06日 00時00分01秒 | 紹介

 「御釈迦様は地獄の容子を御覧になりながら、このカン陀多には蜘蛛を助けた事があるのを御思い出しになりました。そうしてそれだけの善い事をした報いには、出来るなら、この男を地獄から救い出してやろうと御考えになりました。幸い、側を見ますと、翡翠のような色をした蓮の葉の上に、極楽の蜘蛛が一匹、美しい銀色の糸をかけて居ります。御釈迦様はその蜘蛛の糸をそっと御手に御取りになって、玉のような白蓮の間から、遥か下にある地獄の底へ、まっすぐにそれを御下ろしなさいました。」この文は文豪芥川龍之介の蜘蛛の糸の一説である。

 実は蜘蛛の糸が量産に乗り出すとの記事が日経新聞の朝刊に掲載された。まるでお伽の世界が現実に起きたようで、心を躍らせる技術屋冥利に尽きる話である。新素材繊維として、また、自動車部品や医療分野などへの用途開拓が期待されている。早速インターネットで記事を検索し、目的の記事にヒットすると、テレビで放映されたVTRが併せて紹介されていた。映像を見る限りにおいては、弾力性を持つナイロン繊維のようで、光沢もあり、ブルーの婦人服に仕立てられていた。強度や組成についての詳細情報までは提供が無く、知り得なかったが、おそらく炭素繊維に匹敵するぐらいの特性を持っているのであろう。プラスチックでないため、地中に廃棄されて腐敗し、土に帰ることは、循環社会では基本的な大切な要素の一つであろう。

 蜘蛛の糸の遺伝子を合成し、微生物発酵させるようで、微生物からでるタンパク質を原料としているようだ。量産化体制にはいるということは、少なくとも実験段階はクリアしたと思える。山形県の慶応大学先端生命科学研究所の学生だった方が起こしたベンチャー企業で生まれた製品である。今後の展開を期待したい。

 製品化に至る過程では多くの難問を解決し、繰り返す実験結果の分析や分析結果に基づく新たな仮説を立て、それへの挑戦など、大変な努力と情熱が傾注されたことであろう。まずは次世代バイオ素材としての工業化成功には大いにエールを送りたい。(次回へ続きます)

スパイスの世界10シナモン(桂皮)肉桂3回シリーズその3

2013年06月05日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 においの中で見落としてはならないのはフェロモン(刺激性物質を運ぶという意味)である。個体内で作られ・消費されるホルモンと違うのは個体間での情報伝達に使われる点にある。
フェロモンは性衝動等を起こす体内で作られたホルモン物質で体外へ放出される。種類によっては雄、雌関わりない場合と雄だけ、雌だけが出すフェロモンがある。多くの動物では、フェロモンによって繁殖行動を誘引することはよく知られているが、人間には嗅覚の退化で嗅ぎ分けることは出来ないようである。しかし、多くの女性が使う香水や、男性化粧品の匂いの中に、意図的に入っている可能性があると思うが、定かではない。

 言葉を持たない昆虫の世界では、フェロモン物質が意外な行動に利用されている。性フェロモンは前述のとおりであるが、えさを見つけたアリが、巣までの道筋に付ける道標フェロモン、越冬や、交尾のための場所に付ける集合フェロモン、外敵に対して仲間に危険を知らせる警報フェロモンなどがある。また、女王物質といって、女王アリが働きアリに対し、発散する物質で、働きアリの卵巣の機能を抑制し、働きにいそしむために出すフェロモンが知られている。また、修道院での修道女の月経周期が一致するとの研究結果から、女性の腋下部分からでる無臭のフェロモン物質の影響とのことである。

 この時期、害虫が発生するが、椿やサザンカの葉には、チャドクガの卵がかえり、毛虫に成長する。小さな樹木は全ての葉を食べられてしまうこともあるが、近辺の椿やサザンカまで被害が及ぶことは少ない。説によると葉を食べられている木が樹木内で作られる毒素が葉から発散され、その毒素を感知した近辺の同種の木々が同じ物質を作り出し、食害に備えるそうである。将にこのメカニズムはフェロモンが個体間の情報連絡に使われている例として興味深い。(このシリーズ最終回です)

スパイスの世界10シナモン(桂皮)肉桂3回シリーズその2

2013年06月04日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 賦香作用・においについて考えてみたい。においには人が良いにおいという場合には漢字で匂いを用い、いやなにおいの場合は臭いを用いる。ではにおいとは、人が嗅覚によって、とらえる物質が、その人の記憶されている多くのにおいの中からから選ばれて、特定に至る。
その記憶とは、におい物質の単独ではなく、その匂いを記憶するに至った環境経験である。逆ににおいから展開した出来事を思い出すこともある。

 におい物質といわれるものは、大別すると天然と合成に分けられる。天然香料の殆どは植物から得られ、農産物である。動物から捕れるものに麝香(ムスク)があり、ジャコウジカやジャコウ牛から採取する。マッコウクジラの腸からでる蝋状の分泌物からは龍涎香(りゅうぜんこう、アンバーグリス)がある。合成香料も自然界からとれ、多くの合成香料は原油やナフサの分留によって生産される。

 においを持つ物質は化学的に特定できるが、その数は数千とも数万ともいわれ、複合されると無限大に広がる。熱や風量との関係もあり、ほのかな香りから極端な異臭まで環境によっても変化する。かおりをおそらく「香道の世界」まで引き上げたのは日本人だと思うが、古くは公家の遊びとして発生し、香を嗅ぎ分ける遊びである。香炉と呼ばれる容器に灰を入れ、炭火を熱源とし、雲母板をかぶせ、香木から立ち上る香気を嗅ぐ。東南アジアの奥地に自生する伽羅木は有名な香木で、正倉院に保管されたものを歴代の為政者の中にはそれを削り取り、政争の道具にもされたようである。(次回へ続きます)

スパイスの世界10シナモン(桂皮)肉桂3回シリーズその1

2013年06月03日 00時00分01秒 | 緑陰随想

【シナモン】ニッキ、ニッケ等と呼んでいるが、正しくは、シナモンはクスノキ科の常緑樹シナモンの桂皮であり、学名が異なり、混同している同族のカシア(肉桂)のどちらも木の樹皮から採取される。八つ橋という京都のせんべいや、ニッケ飴で我が国でも古くから有名な賦香作用のシナモンを利用した菓子である。世界最古の香辛料といっても良く、紀元前4000年前のエジプトミイラの防腐剤として使われていた。刺激性のある甘みとさわやかな清涼感を持っている。
 
 用途は粉末の香料として菓子類に使用することが多いが、紅茶の撹拌用にスティックを利用する。シナモンロールケーキは有名である。リンゴと相性が良く、焼きリンゴやトルテ、アップルパイなどにも使われる。

 薬用には胃腸薬がある。飲み過ぎや胃炎には健胃整腸薬としてなじみ深い。シナモンの芳香成分である桂皮アルデヒドに解熱や血圧降下作用があるといわれている。このほかにも、オイゲノールやサフロールなどが含まれている。原産地は中国南部、ベトナムなどで、熱帯各地で栽培されている。(次回へ続きます)

スパイスの世界9クローブ(丁子)(2回シリーズその2)

2013年06月02日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 古代から香辛料が貿易の主流であり、大航海時代を産んだ裏には、唯単に、食物の腐敗防止や矯臭を目的とした香辛料の利用ばかりでないことは薄々感じている方も多いはずだ。

 特にサフラン、カルダモン、ガーリック、ナツメグやクローブ等がもてはやされ、黄金と引き替えに高値取引されており、アラブ人の商魂のたくましさを背景として、媚薬といわれていた香辛料の原産国をかたくなに秘密とした意図があったのであろう。

 現在でもアロマセラピーといわれる芳香性豊かなアロマオイル(精油)を全身に塗ってマッサージする美容術は、リゾート地では大人気である。
 香料の成分である精油が揮発すると鼻で感知され、鼻孔を経由して脳に嗅覚刺激として伝達される。脳における嗅覚を司る部位は、脳の中でも心拍や呼吸運動などを司る旧皮質に存在する。脳が、嗅覚刺激を受け取ると無意識のうちに情動(本能的な食欲や性欲等の欲求の感情)を引き起こす。脳内にアルファ波やエンドルフィンなどの物質が大量に分泌され、その結果、癒され、リラックスするのである。

 確かなことはいえないが、想像するに、古い時代においては、太陽が沈むと、明るさが消え、暗くて長い夜を過ごすためには、媚薬と呼ばれた香辛料や香料は生活の必需品であったはずである。その意味では香辛料が持つ目的(機能)の一つに、癒しまたは情動作用を入れても良いようである。(このシリーズ最終回です)

スパイスの世界9クローブ(丁子)(2回シリーズその1)

2013年06月01日 00時00分01秒 | 緑陰随想

【クローブ】クローブは漢字で丁子(ちょうじ)と書く。釘の形をしているということで英語での語源も釘のことをいう。チンチョウゲ・ジンチョウゲというにおいが芳しく春先に咲く低木の花との混同があるが、チンチョウゲの方は丁子のような花が咲くことに由来している。グローブの方はフトモモ科に属し、熱帯地方が原産の中高木常緑樹の花芽(花蕾)である。香料には開花前に蕾を摘み取り乾燥させたものを使う。

 インドネシア、スリランカ、マダカスカル、ドミニカなどの国で栽培されている。香辛料を使う料理には主に精肉の矯臭作用(におい消し)を利用した肉料理である。また、カルダモンや、肉桂(ニッケ)、ショウガなどとブレンドして紅茶の香り付けにする。カレー粉にもブレンドされている。口臭を消すために歯磨き(マウスウオッシュ)にも混入されている。特徴のある香りの成分は、オイゲノールである。グローブの精油には殺菌・防腐作用があり、弱い麻酔性や鎮痛作用がある。仁丹にクローブの粉末が入っている。

 クローブは大変古い時代から、香料・防腐剤として、使われていたようで、エジプトのミイラ作りには、シナモンや肉桂(ニッケ)とともに死体の防腐剤としてクローブの精油が塗られていたとの記録がある。死体の腐敗臭を消すためには乳香や、没薬(ミルラ)(乳香と同じく樹液を固めたもの)が使われ、ミイラの語源になったといわれている。マルコ・ポーロの東方見聞録にも記述されている。アラブでは、興奮性の媚薬として、インポテンツの治療薬にも使われている。(次回へ続きます)