組織の自浄能力が試されているが、組織が持つ閉鎖性は、良い部分と悪い部分があるが、表裏一体のようであり、そこで働く構成員のモチベーションに依存するといえる。組織が構成員に求める忠誠心(ロイヤリティ)や、不祥事に対する隠蔽性は、組織にとってはそのことを遵守すべき行為としている面があり、構成員からしても生活の糧を得るための収入源ということからして、一蓮托生的な側面があり、自己の存在を無視、理由のない「はずし」や濡れ衣など、よほどのことがない限り、内部告発や上部との諍いを積極的に行うことはない。
ガス抜きという行為があるが、危険分子とされる一部の集団や個人に対する融和措置の形態として酒宴や会食が行われる。早朝ミーティングなども一種のガス抜きとしている組織もあるが、良いこと、悪いことの判断は胸襟を開くことで解消される場合もあり、雰囲気として分かるものである。ほうれん草(報告・連絡・調整)が組織内の情報共有において大変重要であり、業務上の問題点、意見の違い等を摺り合わせる機会でもある。
業務上で生じた不祥事は、対人交渉や、クレーム処理などではケースバイケースであり、両者が満足行く答えはそう多くはない。上司の意見や組織の判断の限界を知った上であっても結論がすぐに出ることもまれである。業務上の監査役や、会計検査役などは結果についての考察が主であり、現場の第一線でのタイムリーな判断は当事者に先決させている。つまり、組織的な判断は当事者の判断ということになる。
仕事の仕方で述べたことであるが、我が国の業務の進め方は通常ボトムアップであることであり、組織の決定があって行われている。最終的な責任は組織のトップが持つが、仕事の当事者は責任を負わないわけではない。そのことの自由度が、不祥事の原因にもなり得る。組織人は自分は歯車の一つであっても、組織全体を背負っているといっても過言ではない。その認識不足は、管理部署(チェック機能)の介在があろうがなかろうが仕事を行うということの根底にあるもので、モラル(倫理)といえる。
不祥事に対する責任は組織全体に及ぶが、第三者委員会や、社外取締役などの外部組織を活用することによって、解決する・改善できるとする考えは妄想であり、外部組織を活用してもすぐに行き詰まる。その理由は、再構築機能と司法権を持つことはないため、自浄能力を強化する方向には向かわず、唯一不祥事を起こさせないようにするためには、構成員のモラル向上以外にはないと考えるが如何であろうか。