日々雑感

心に浮かんだこと何でも書いていく。

1,我が師匠 山田耕筰先生

2011年02月08日 | Weblog
1,我が師匠 山田耕筰先生

私が音楽講演会で語るのは、伝説の人・山田耕筰ではなく、直接触れた生身の山田耕筰先生である。
子供の頃からの経済的困難をくぐり抜けたという共通の貧乏体験が、不屈の魂を養うには、最適の道場であったことを認め合い、その部分では人間的に近づいていたと言う自負がある。
先生宅の冷蔵庫から、長崎カステラを取り出して、二人とも涙しながら、食べた記憶とその味は、生涯忘れることは出来ない。それはカステラを食べるという行為そのものではなくて、そこから思い出された共通の幼き日の貧乏体験である。
一切れのカステラの味の中にそういう共通の重いが宿っていて、それを無言の内に共有できたから、感極まって涙の体験となったのである。

そういう人間関係の中で私はいろいろなことを学ばせて貰った。ほぼ毎日出会える先生との会話を私は自分でも驚くほどよく記憶してそれを当時住んでいた学寮まで持って帰り、一言半句も書き漏らさないように、雑記帳に書き留めた。五〇年以上も昔の話で、その貴重な雑記帳はどこかへ行ってしまって、もう手元にはない。
先生とは毎日2時間以上も話した。当時も先生は左半身が不自由で呂律も回らず病んでおられたが、僕には気安く何でも話して下さった。そしてその話の内容こそ今の私を支えている面もあるので、恩師として心に刻んでいる。

音楽特に作曲についてレッスンを受けるつもりであったが、話は宗教におよび、あるときは哲学、人生論に飛び火した。芸術論はもちろんのことだが僕が学んだのは、詰まるところ、「生き方」であった。