戦前に特高警察の拷問で死亡した、プロレタリア作家であった小林多喜二の著書
「蟹工船」(S4年発表)が大変な売れ行きだといいます。
小林多喜二といえば小樽商業高等学校(現在の小樽商大)では、チャタレー裁判で
有名となった伊藤整の先輩であり、官憲に追われた時には伊藤整が陰ながら援助の
手を差し伸べたという話を当時伊藤整の援助者であった小林某氏のご長男から聞いた
ことがあります。
この小林氏という方は、伊藤整と同じ塩谷の出身で、やはり小樽商業高等学校から
東京商科大学(現一橋大学)に進まれた秀才だったようです。
大学卒業後は某大手生命保険会社に勤務し、自宅も神奈川県逗子に居を構えていたと
いいますから、当時は高校、大学の後輩だった伊藤整に援助の手を差し伸べたのは
当時としては当然だったかもしれません。
ただし、先輩であった小林多喜二は、当時官憲に追われる身であったことから、
小林邸には寄り付かなかったようで、伊藤整を通じて何らかの援助があったと
思われますが、今では想像の域を脱しない話と言えるでしょう。
小林多喜二は、昭和5年に不敬罪、治安維持法で逮捕され、翌年には仮出獄されるも
翌年の共産党入党がきっかけで、S8年に特高警察の拷問でこの世を去っています。
私が蟹工船を読んだのは、中学生の時に学校の図書室で「小林多喜二全集」のなかから
読んだ覚えがありますが、おどろおどろしい冬のオホーツクでの過酷な状況で働く労働
者の怒りには共感を覚えたものでした。
21世紀を迎えた現在になって再度(戦後は一時ブームになったはず)小林多喜二の作品が
陽の目を見て、若者の評価を得たと言うことは、とても喜ばしいことだと思います。
現在の働く環境や政治への不満は、物言えぬ世代が大きな声をあげる時代へのきっかけと
なるでしょう。