キューピーヘアーのたらたら日記

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『猫を棄てる』 村上春樹

2020-06-04 13:03:08 | 
NHKのテレビ番組にファミリーヒストリーというのがある。

ゲストの芸能人や有名人の両親や祖父母あるいはご先祖様の

生きざまを、歴史資料とともに紹介する番組である。

この本は、主に父親の村上千秋氏の人生について書かれているのだが、

村上版ファミリーヒストリーといった内容である。

千秋氏は京都の安養寺の住職の次男として生を受け、

幼いころから仏教に親しんで育ったにもかかわらず、

先の大戦で3度も徴兵された。

初年兵のときは中国人捕虜の処刑に立ち会わされたそうだ。

仏教に帰依しながら、残酷な殺人に加担しなければならない

心の苦悩はいかほどであったろうか。

僕はノモンハン事件をあつかった『ねじまき鳥クロニクル』を

思い出した。

そうか、あれを書かせたのは父親だったかと腑に落ちた。

同時に『海辺のカフカ』のレビューでつまらないことを書いた、

と後悔した。

僕は、村上春樹が伝統や血脈を無視して、

「僕」一代だけの経験でものを言ってるから世界が浅い

と書いてしまった。

だけど、村上春樹はちゃんと父親と対峙していたんだ。

それを知ってうれしかった。

ファミリーヒストリーもいいもんだ。

作品の理解に肉付けがされる。

本書を書いてくださってありがとう、

春樹さん。

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