幸福は愛半分、憎らしさ半分
結婚して3年と少し過ぎた頃、夫は外国へ派遣勤務で行きました。
当然、私は韓国に残って二人の子供の世話をすることになりました。夫は7年ぶりに家族の元に返って来ました。ですが、夫さえ帰って来たら寂しく辛かった時間も終わると思っていたのですが、期待は外れました。
7年ぶりに一緒に暮らせるようになった夫に多くのことを期待したのではありません。ただ、親しい一言、暖かい抱擁を一度してくれることを期待しました。夫にとっても、それほど大変だとか難しいことではありませんでした。夫も夫なりに不満が多く積もったのか、毎日のように酒を飲みました。
「それでなくても韓国の生活に適応しようと大変なのに、妻は顔を合わせると小言ばかりで、、、」
夫はひどい酒の匂いをさせて夜遅く帰る日が頻繁になりました。とうとう何の連絡もなく明け方に帰ってきて私を苛々させました。私がこんなことになろうと長い時間を我慢してきたかと思うとカッとしました。何かの形で感情を吹き出さずには怒りが爆発しそうでした。
私はこの際、積もった不満を吐き出そうと心を決めて夫に手紙を書き始めました。
「10年恋愛して結婚して、7年離れて暮らして、これでやっと一緒に暮らせるようになったから、気をもんでいるあなた、、、、」
読んで反省しなさいという意味で、夫に見なさいというばかりに家の中のあちこちに、自分の感情を書いた手紙を貼り付けておきました。冷蔵庫、食卓、たんす、テレビ、しまいにはトイレにまでも貼り付けて置きました。そうでもして夫の心が楽になると思ったのにそうではありませんでした。私の感情を出せば出すほど夫の心情も理解できるようになりました。私は考えを変えました。酒を飲んで遅く帰ってくる夫のために蜂蜜水と一緒に愛のこもった手紙を食卓の上においておきました。
「私は家族のために長い間苦労して帰ってきたあなたを、とても愛しています。」
手紙を書いておいて夫を待っていて、そろそろ寝ようと一人で寝床に入ろうとしたら、夫が帰ってくる気配がしました。
私はドアの隙間からこっそり夫の行動をのぞき見ました。夫は服も着替えないまま、あちこちに貼り付けてある愛半分、憎らしさ半分の手紙をじっと読んでいました。そして、部屋に入って来て、寝た振りをしている私を後ろからしっかりと抱きしめました。
「おまえも俺と同じぐらい寂しかったのか。今まで自分のことばかり考えてごめん。一人で子供を育ててお前のほうが大変だったろうに。ありがとう。俺もお前を愛している。」
そうやって私たちは和解しました。その後、夫は家族に力いっぱい愛を注ぎました。そうして2年、夫はフィリピンにまた派遣されることになりました。
それで今度は別れて暮らしたかって?まさか。今度は家族みんなが飛行機に乗りました。
相手と争うことも愛だし、理解することも愛でしょ。たくさんの試行錯誤をしながら互いの愛を確認していくことが夫婦のようです。