うちの町の空き地
うちの近所には家が取り壊されて空き地になったところが一ヶ所、何もされずに放置されています。
管理する人が誰もいないので、いつもゴミが捨てられ町の人の悩みの種でした。どうせ持ち主のいない空き地。うちの家族は、遊びがてらその土地にサツマイモを植えてみようと思いました。
農作業には門外漢ですが、関連する本を見たり、インターネットで検索をして、私たちはサツマイモを育てる方法を少しずつ覚え始めました。紆余曲折の末、青々としたサツマイモの茎が力強く伸び始めました。ところがある日、おばあさんが一人やってきました。
「サツマイモの茎がとても元気がよく育っているね。もしよかったら、茎を少し摘んでいったらだめかい。」
私たちは申し訳ないと思いましたが、おばあさんの頼みを断りました。根が元気になるためには、まず茎が元気でないとダメだという考え。情けをかけてサツマイモをだめにしたくはありませんでした。ですが、数日後おばあさんは、今度は家まで訪ねて来て頼みました。
2回も冷たく断ることもできず承諾しましたが、憎らしいことにおばあさんは、たくさんあるサツマイモの茎の中でも、太い茎ばかりを選んで摘んでいくではありませんか。それを見ていて腹が立ちました。それは娘も同じでした。
「お母さん、あんなことをしたらうちのサツマイモみんな死んでしまうんじゃないの。」
うちの家族は、おばあさんのせいで一生懸命作った畑がめちゃくちゃになったと、不満と泣き言を言っていました。ところがある日、お父さんがまだ知らなかった事実をひとつ教えてくれました。おばあさんの憎らしい行動に対する誤解を解いてくれる情報でした。
「これ、二人とも、この本をちょっと読んで見なさい。サツマイモの茎は根の栄養分を吸収してしまうとあるね。だから茎をまめに摘んでやらないと根がよく大きくならないって。」
私たちは良く知りもしないで、おばあさんを無条件に警戒して恨んでいたのでした。次の日の朝、うちの家族は、おばあさんが玄関前にこっそり置いていった靴下と手紙を1通受け取りました。
「おかげ様でサツマイモの茎を売って小遣いが増えました。本当にありがとう。」
そして明らかになった驚くべき秘密。
「その空き地は実は私の土地です。年をとって気力がなくなり、到底手を入れる元気が無かったけれど、ちゃんと畑にしてくれて本当にありがとう。」
おばあさんは、死んでいく土地に生気を呼び起こしてくれて、ありがたいと言いました。考えてみると土地を使ってもいいと許可をもらったのだから、むしろ私たちが感謝するのが正しいことでしょう。
私の町の小さな空き地には、おばあさんの気持ちに似たサツマイモが元気に育っています。
一緒にお隣同士の情と愛も育っています。