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退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界 7

2015-07-06 11:10:50 | 韓で遊ぶ


新婚旅行で降った雨
私たち夫婦の結婚の贈り物は糸の指輪ひとつでした。
何もない状態で始まった貧しい結婚生活でした。夫は傘を作る会社に勤めていました。ですが、3ヶ月も給料を受け取ることができず、一文無しと同じようなものでした。両親から受け継ぐ財産がある訳でもなく。
私もまた夫と状況は似ており、私たちの暮らしでは新婚旅行は無理な状況でした。だから後に行こうと思っていたら、友達がそれではいけないと旅行の費用を出してくれました。涙が出ました。
旅行に行っている間だけでも、しばらくの間現実を忘れたいと思いました。ところが古い乗用車がうまく動きません。エンジンをかけてもかからずひやりとしました。
天も助けてはくれませんでした。出発した時からぐずついていたのですが、結局、雨がはげしく降り始めました。
目的地には到着はしたものの、激しい雨のせいで観光はもはや水を渡って行くような状況でした。やっと来た新婚旅行なのに、、、。その上、心配していたことが起こりました。車のエンジンが止まってかからなくなってしまいました。
「あ、どうしよう。大変だ。まず傘を出そう。」
傘を出すために夫が車のトランクを開けました。この間、給料の代わりに受け取った傘が2箱ありました。夫は傘をいくつか広げて車の周りをうろうろしました。すると、急に観光客が集まって来ました。
「おじさん、傘ひとつ下さい。」
「えっ、申し訳ないけど、これは売り物ではないので。」
「そんな事いわないで、売ってくださいよ。雨がこんなに降っているのに、傘もなくて旅行できないじゃないですか。」
急に降った雨のおかげで、うっかりと積んで来た傘2箱はあっという間に無くなりました。夫と私は新婚旅行だということも忘れて傘を売るのに忙しく動きました。
私たちは傘を全部売って宿に入りました。向かい合って座って濡れたお金を乾かしましたが、懐が暖かくなりもしましたが、慌てもしました。お金を数えて夫と目が合うと笑ってしまいました。夫も私が笑うと、つられて笑い始めました。
はじめは貧しかったけれど、これから暮らしていく日々は、そうではないかもしれないという小さな希望が生まれました。
私の横に夫がいて、夫の横に私がいるから怖いことがあるでしょうか。
生きていけば出し抜けに降る雨に当たる時もあるでしょう。ですが心配はしません。夫と私は愛という傘をさして、希望という虹の橋を渡るからです。
コメント
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