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1935年代といえば昭和10年、カメラ・レンズがどのような時代的側面を持っていたのか、想像すると興味が尽きない。
明るいレンズは高速レンズと呼ばれ、軍事的にも重要な要素を持ち、広角レンズも非常に設計が難しく、これもまた上空からの撮影などの意味もあったと考えれれる。
摩天楼が立ち並ぶ2010年代、街頭スナップひとつにしても、かつての35~50mmが主体ではなく、28mmいやそれ以上の広角でも、十分成り立つ焦点距離であろう。
RICOH GRのように銀塩からデジタルまで一貫して28mm単焦点を貫く機種もあり、またズーム主体のいわゆる通常のデジカメも、28mmスタートは珍しくない。最近のスマートフォンも30-35mm換算が多いので、28mmは少し広いが、決してかけ離れた画角ではない。
すなわち現代においては、28mmは珍しくない画角といえる。
ただし昭和初期に、このようなレンズは極めて特殊な超広角レンズであり、設計・製造は非常にッ困難を極めたようである。
さらに広角の21mmに関してはLeitz社も、巨大コンツェルンであるツァイスによるBiogonなど、超高性能広角レンズの前には、ベレークの設計の今回のHektorでは勝負できず、シュナイダー社のSuper Angulonに頼らざるを得ないという、負の歴史がさらに続くことになる。
話をHektor 2.8cm F6.3に戻そう。Leitz社のマックス・ベレーク設計の黎明期ライカのレンズのひとつ。レンズ1本で当時の日本の庭付き一戸建てに相当するのでは、という話があるくらいで、おそらく所有できたひとは国内では数える程であったろう。
日本でいうD型ライカなどに装着し、外付けファインダーを使用しても、レンズキャップに近い外観で、目測でも迅速に合焦できることから、速写にも向いていたと考えられるが、この開放F値の暗さからでは、薄暗くなれば手持ちはまず不可能である(後継のSummaron 2.8cmでも 開放はF5.6)。
28mmに関してはかなりあとの時代の、銘玉 Elmaritの登場を待たねばならない訳だが、M型ライカとの相性は抜群だが、当時のバルナックライカなら、Hektor 2.8cmは装着して置いておくだけでも、風格が漂う。
ミラーレスの時代の現代。もはやISOはフィルム時代の100倍で、とても夕暮れ以降は手持ちが不可能だったHektor 2.8cmを、夜の雑踏に持ち出すことが可能になった。
造られた頃はデジタルはおろか、カラーフィルムすら想定されなかった時代のレンズであるが、それがカラーフィルムの時代を越え、デジタル黎明期を越えていく。
この旧いレンズが本来持つ、素直な描写をそのまま写すこともできるし、デジタルフィルターなどを使って、さらに豊かな描写を表現する素材としても十二分に使える。
しかも手のひらサイズのミラーレスに装着すれば、当時小型ゆえに驚愕と羨望の的になってであろう、バルナックライカよりさらに、小型軽量を楽しむこともできるのである。
いつでもどこでも取り出して、その威力を余すことなく、発揮したくなる・・・
ぜひ鞄に忍ばせて、毎日持ち歩きたくなるレンズだといえよう。
Leitz Hektor 2.8cm F6.3
Panasonic Lumix GM5