アメリカの日本化が始まった インフレ抑制法は"インフレ加速法"(前編)
2022.08.28(liverty web)
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《本記事のポイント》
- 42%ものアメリカ人が家計のやりくりに苦しむ
- 内国歳入庁(IRS)の武装化!?
- IRSの肥大化よりもフラット・タックスが解決策に
バイデン大統領は8月に「インフレ抑制法」に署名し、成立させた。歳出は4330億ドル(約58兆円)にも上る。
だがアメリカ国民の12%しか「インフレ抑制法」がインフレ抑制に効果があると信じていないようだ。
The EconomistとYouGovの世論調査によると、40%のアメリカ国民は「インフレ抑制法がインフレを加速させる」と懸念している。"インフレ加速法"になるという認識だ。また、23%がインフレに対して影響を与えないと答えていることからも、「インフレ抑制法」という名の法律に、国民は騙されてないことが分かる。
42%ものアメリカ人が家計のやりくりに苦しむ
第1四半期と第2四半期がマイナス成長であったことから、米経済は「景気後退」に入ったとされる。政権側は否定しているが、この点においても有権者との温度差が開いている。有権者の56%は「景気後退に入った」と考え、80%は「景気が悪化している」と答えている。一方、「景気が上向いている」と答えている国民は15%しかいない。
有権者が秋の中間選挙の最大の争点だとするのがインフレである。物価高に見舞われるにつれ、42%もの有権者が「家計のやりくりをするのがやっとだ」と答えており、国民の困窮度は極まってきている。
「乳幼児用粉ミルクを手に入れたいが、ガソリンがなくて車で探して回ることもできない」と嘆く母親の声も少数派のものではないのだ。
乳児用粉ミルクは、ヨーロッパから空輸しなければならない状況にある。冷戦下のベルリン封鎖時は、アメリカがベルリンを助けるために物資を空輸したが、今はアメリカが東側に転落したかのような様相を呈してきているのだ。
埋め込まれたブルー・ステイトへの補助金
この「インフレ抑制法」は、民主党の政権基盤である「ブルー・ステイト」に対するバラマキでもある。
例えば法律の中には、電気自動車の購入を促すために1人当たり7500ドルまで税控除すると定められている。
この補助金政策で一番得するのは誰なのか。まずEV車販売シェアの40%を占めるカリフォルニア州である。続くのがシェア4.4%のワシントン州、3.6%のニューヨーク州。これら3つの州が補助金の半分を受け取ることになる"設計"だ。
インフレ抑制法は、「民主党買収帝国」を完成させる一環なのだ。
内国歳入庁(IRS)の武装化!?
もう一つ、「インフレ抑制法」で見逃してはならない問題が、歳入確保の方法だ。法人増税の実現が難しくなった今、バイデン政権は、日本の国税庁にあたる米内国歳入庁(IRS)の徴税権力の強化で歳入増を図ることになった。
800億ドル(約10兆円)の予算増と8万7000人の職員増で、徴税力を高めるというのだ。
「格差是正」を政策の柱に掲げるバイデン政権は「大企業」から税金を徴収すると息巻くが、下院歳入委員会の調べでは、7万5000ドル(約1000万円)以下の所得層も狙い撃ちにされることが明らかになっている。
しかもIRSが武装化されることも「インフレ抑制法」の中に規定されている。国民は武装したIRSの役人に脅されながら、税金を徴収されることになるのだ。
歴史的に民主党政権はIRSを政治利用してきた。オバマ政権下では、共和党への寄付者や、「小さな政府」を掲げる市民運動のティー・パーティや愛国心を尊重する非営利団体への免税特権を差別的に取り扱うといった措置を行い、政敵への嫌がらせを行ってきた。
しかもそうした不正行為についてIRSの官僚は、誰一人として起訴されていない。
IRSの肥大化よりもフラット・タックスが解決策に
では官僚機構を肥大化させれば、大企業から多くの税金を絞りとることができるのか。
「インフレ抑制法」では、利益が10億ドル以上の大企業は、最低でも税負担が財務諸表ベースで利益の15%に達するよう義務付けられるという。
IRSの役人がやってきて、大企業の財経担当者と膝詰めで財務諸表とにらめっこしながら、利益を確定し、15%の税金を徴収することになるのだが、日本と同じく米大企業は優秀な公認会計士や税理士を雇っている。
彼らが財務諸表を操作するのはそれほど難しいことではないはずだ。要するに「いたちごっこ」なのである。
所得税の最高税率を上げても、納税額があまり増えないことは歴史的に証明されている。税負担を財務諸表ベースにしても、問題解決にはならないはずである。そんなことをせずとも、アーサー・ラッファー博士の提唱するフラット・タックスを導入するほうが、企業は会計士や税理士といった仕事にエネルギーをとられないばかりか、政府も税収を確保しつつ、官僚の肥大化や腐敗を防げる。
ラッファー博士は、「法人付加価値税」と「個人所得税」を除いて、すべての連邦税を廃止すべきだと説く。
売上から、原価および減価償却費や寄付などを除いたものに課税をする「法人付加価値税」であれば、工場の設備投資や減価償却費などは、外部からも簡単に確認できるので、財務諸表を精査する必要もない。
大川隆法・幸福の科学総裁が収録した7月2日の霊言で、バイデン大統領の守護霊は、「アメリカ自体が貧乏になれば、貧富の差はあまりなくなるんだよ。日本もそうなろうとしているんで」と本心を明かした。それを実現すべく、全体の32%にあたる45兆ドル(約6000兆円超)を有する上位1%の富裕層を狙い撃ちにするというのが、一連の政策の奥にある魂胆だ。
だがそれでは税収を増やせないばかりか、IRSがモンスターになって国民に襲いかかる未来がやってくる。
アメリカの自由と繁栄の時代が終わり、「長期的衰退」へと向かうのを止めるには、フラット・タックスという解決策があることを忘れてはならないだろう。
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