政府としては50年後日本の人口を一億人程度に維持するという方針を出したらしい。結論からすると、絶対に無理。で、終わりなのだが、それだと面白くは無い話だ。出生率の低下による社会問題化への警鐘は、既に30年以上前から聞かされ続けてきた問題である。もう耳にタコもいいところで、本当は呆れてものも言いたくない。たいした対策を取れなかったから当たり前だが、現在に至ってみると、既にだからほぼすべて手遅れである。
しかしながら政府として手を打つ方法がまったく無いわけではない。日本社会では不可能なことばかりだし、繰り返すが世論的に根拠を理解できないことばかりだから無理なだけのことだから、実際にはやろうと思えばいくつかはやりようがある。
一番簡単なのは、出生率が実際に上がっている例を踏襲するというのがある。一般的にはフランスを見習え、というのがある(たぶん、形の上ではそういう線で行くだろう)。しかし、実際には将来的な財政の心配をして日本政府は出生率を上げようとしている訳で、フランスのような手厚い子育て支援をやるようなことは事実上不可能である。というか、やはり高齢社会にあって、社会保障の配分さえ変えるのが困難だ。議論は出ても、やる気はさらさら無い。
それに本当のところは、フランスの出生率を上げている内情は、制度というより移民の受け入れに積極的であるということが一番であるようだ。労働生産性の話から言っても合理的なので、日本も取り入れる可能性のある政策だが、これは二次的に諸問題をはらんでいる(一般的には治安問題など。合理的に考えるとお隣の中国や東南アジアから受け入れを緩和すると、すぐに増えることは確実である)。現在は自然に日本語の壁問題(だから国内で働けない)があるし、日本は外国人に対しては鎖国制度を続けているに等しい受け入れのハードルの高さがあるので、政策のハードルはものすごく高い。
それでもやるかというのは、だから無理なのだが、比較的簡単なのは、女性の社会進出を逆に阻害する方法というのもある。現在もそうだといえばそうだが、専業主婦を支える政策を取るほうが逆説的だが出生率は上がる(まあ、ちょっとだけだろうけど)。当たり前だが、鶏と卵問題もあるが、就業女性より専業主婦のほうが出生率は高い。そもそもの話、女性の社会進出が進んだ成熟社会だからこそ、出生率も下がるのである。先進国の出生率が低くなるというのは、根本的にそういうことだから、結果的に何にも悪いことですらないのである。むしろ日本は、まだまだ女性の社会進出を阻害する要因が高いままでありながら出生率も低くなったわけで、もうこれは最悪であるというだけに過ぎない。そもそも専業主婦でもなりたつ所得の保証をする根拠が何もない。結婚する条件としての男性の所得条件のハードルがさらにあがることになり、結婚できない問題がもっと深刻になる。だから、事実上これは選択肢に無いわけだ。
これで分かるように、現在の無策の政策が、今の現実の背景であることは明確である。若者は結婚にさえ絶望しているわけで、子育て以前の問題ということも言われている。婚姻率は下がり続けているし、子育ての経験の無い一生というのも、必ずしも少数派でなくなっていくことは確実だろう。それが個人の選択の一つであるのならなんら問題は無いが、望んでいるのにそれが出来ないとしたらどうなのか。
日本の人口問題というのは、そういう背景を鑑みると、個人の問題、つまり自己責任で解決が可能な領域ではなくなっているといえる。それでも、もう若者は少数派であるばかりか、選挙にも行かない。将来は大変に暗いわけだが、そういう国だからこそ無くなっても仕方が無いという現実があるだけのことではなかろうか。
やっぱりやめたら良かったね、こんな話…。