秘密のケンミンSHOWという番組があって(今もあるみたいですね)以前はそれなりに楽しく見ていた。ご当地ご紹介というのもあるだろうけど、日本というのもあんがい広いという感じと、アンチグローバリズムを感じさせる爽快感がある。狭い社会こそ人間的なのだ。それで時々驚くわけだが、それがまた楽しいということだった。
それはいいのだが、いつの間にか見なくなった。理由は単純で、やたら食う場面ばかりになったからだと思う。現地の食リポートはわかるが、ほとんどその絵を放送するのが目的化したような感じだったかもしれない。不快というのもあるが、ほんとにこんなものが面白いと思っているのだろうか? もっと他の面白文化を知りたいものだが、正直じれったくなったのかもしれない。スタジオで食ってばかり。ほんとにつまらない。
街のレポート番組というのもあるが、それが目的であるのは理解できるのでそれでいいけど、ほぼ食べ歩きである。たまに食べたってそれはそれでいいが、全部の店で食べて見せないでもいいんじゃないかと思う。一口食べて捨てているんだろうと思うと、店としてはPRだろうけど、やはり勿体無いじゃないか。テレビだから現品を見せて、他の客が食ってるのを見せれば、それでいいと思う。
そのような番組なら、しかしそれでもいいのである。しかしながら今の時期とは違うが、恵方巻きの紹介くらいからだろうか、普通のニュース・バラエティのようなもののなかでもこれを皆で食うようなことが行われるようになった。ネットの紹介を見ると分かるが、ほとんどこれはエロネタである。エロは急速に普及するので、以後定番になっているのではないか。
あんまり民放を見ないので疎いのだが、時々見るともなしに見ていると、本当に食べる場面が増えている。大食い競争なら見てもいいが(何故か下品すぎて好きである)、ほとんど話の筋と関係が無くても食べている。聞くところによると、テレビの食材はたいてい冷えていて、まずいらしい。だから、美味しく(そうに)食べるというのが、タレントの才能であるらしい。しかしながら、ニュースのコメンテーターのような、いわば専門外の人も一緒に食べたりしている。これはうがった見方かもしれないが、これが上手い人が、重宝がられて次の仕事ももらえるのではないかと思える。何故なら旨そうに食えない人は、テレビ画面から早々に消えてしまうように思える。見ていて痛々しいのだが、だから個人的には共感を持っているかもしれない。
こういうのは流行のようなものかもしれないのだが、しかし確実に僕の子供の頃とは違った文化という気がする。それで興味を持てなくて見なくなるというのがあるから、僕らを排除する目的があるのかもしれない。そのほうが社会的には平和だから、語られるのも迷惑な話だろう。しかし食べる作法を見せることまで要求されるタレント文化というのが、今の文化人や教養人のような人々にまで及んでいることを思うと、大変だなあ、と同情を禁じえない。そういうのが得意じゃないから専門性にのめりこめた人もいるだろうに、世の中というのは上手くいかないものではないか。