世界のクロサワといえば、言わずと知れた「黒澤明」という相場になっていたはずだが、しかし世界のクロサワはもう一人いる、と言わしめられたのが「黒沢清」監督である。
日本でもカルト的に人気が高いが、しかしやっぱり興業的にはヒットメーカーというところではないのかもしれない。何しろ一般的ではないし、たまに売れはする作品もあるんだけれど、そういうのは特に関係のない僕らが見て自慢できる楽しさがあるわけではない。なんだかちょっとひねくれて好きだという人に囲まれてしまった感のある、やはり変わった人という気がする。
だから紹介するけれど、ちっとも実はお勧めではない。強力に注意しておかないと危ないので繰り返すが、観ない方がいいかもしれない場合もある。人間知らないで生きていた方がしあわせな場合があろう。
そういう場合は「回路」だとか「CURE」だとか「ドッペルゲンガー」あたりで一度立ち止まってみて、行く先を確認する方がいいかもしれない。前に進んでいいと思ったら、以下の作品を探してみるといいだろう。映画というか、当時はVシネマとか言われて、劇場でなくレンタル・ビデオを中心に発表された作品のようだ。
最初に紹介するのは「復讐 運命の訪問者」である。一言で言って、僕は結構「これはなんだろう」と困惑した。でも、なんだかわからないがいい映画じゃないかと思ってしまった。どこかおかしいのだが、そのおかしさはそれなりに計算されている。そうして自分が狂わされてしまった、ということになるんだろうか。でもまあ、普通はこれはおかしいな、でとどまるべき作品だろう。
で、次に「蛇の道」なのである。拷問なんかもあるし、これは普通に変だとわかる。分かるが、今度はストーリーが変な具合のミステリーになっていく。そうしてこれは結構面白いのである。それでネタバレになるから言えないが、最後のあたりは結構怖い。たぶんこれはハマったのだろうな、とあきらめるしかない。人生を踏み外したのだ。
そうして「蜘蛛の糸」。もうこれは進んで観てしまって後悔先に立たずだ。いや、後悔するんじゃないかという気持ちは持ちながら、それでも後悔へ向かって共に進んでいく自分がいる。最後もやはり怖い。これがホラーだなんてちょっと困るじゃないか。
そうして最後は「降霊」なのだ。これはもう最初から変で、そうしてもう最初から結構怖い。怖さは持続して嫌になるが、そうしてもうやめてくれという気分になるが、でももう逃げられないじゃないか。こんな人たちと僕は絶対に友達になりたくないのである。
ということで、今はもう黒沢清のことは嫌いなんだが、でもまた新作を作ったりされたら観てしまうのだろう。あんまり人気なんか出ないで、そうして彼に金を出す人なんかが居なくなれば、もう彼の映画を観ないで済むのだ。それがきっとみんなにとってはいいことなんだけどな。
追伸:今朝の新聞をパラパラ見ていてびっくり。実はこの文章はひと月くらい前に書いていて今朝アップしたのはまったくの偶然である。これまでも監督賞は取っていたと思うが、改めておめでとうございました。まあ、そういう意味ではよく認められた変な監督さんだなと思う次第です。