これが私の人生計画/リッカルド・ミラーニ監督
イタリア映画。幼いころから建築家としての才能が芽生え、のちに世界中で活躍するも、故郷のイタリアに戻って建築を続けようとしても、女性であるがゆえにイタリアの男性上位社会で受け入れてもらえない。たまたま建築のコンペで面接官の勘違いに乗じて男性建築家の秘書と偽って採用され、大きなプロジェクトを動かすことになるのだったが…。
女であることの困難が第一だが、そうした保守的な男性社会への風刺と、ゲイなどの様々なマイノリティを交えて、完全にコメディ・タッチで仕事や恋を描いた作品。イタリア独特の過剰な動きと過剰なギャグが延々と続く。しかしまあ、楽しいのは楽しいです。
こういう社会というのは、いかにもアジア的な封建主義みたいな印象があるのだが、ヨーロッパの陽気なイタリアであってもそうなのか、といささか驚いてしまう。今時日本でも、このような男女差別は許されるものではなかろう。また、バイト先のオーナーの魅力的な男性に恋に落ちるが、彼がゲイであるという悲劇も、それなりに面白い。打ち解けた友人にはなるようだけど、結構いつまでも恋が冷めないのもいいのかもしれない。
性的なマイノリティに対しての表現も、それなりにギャグとして過剰である。ゲイだからいつも性的にそればかり考えているのもどうなんだろうか。いや、普通はやっぱり多少の遠慮があって、こういったやり方でのギャグはやらないようにも思う。まるで80年代映画のようである。そういう意味では偏見に満ちてもいるけれど、自由でもある。日本だと批判がいろいろ出そうだけど、まだまだ保守的な境にあるイタリアなら、OKだったということなのかもしれない。
のちにネットの解説を見ると、モデルとなった女流建築がいるらしい。どこまでヒントにしたかはわからないが、やはり珍しかったからこそ映画にしたのだろう。保守的な考えが、すべて前近代的でけしからんとまでは思わないが、まだまだ厳しい偏見の世の中が続いていることを憂うべきなのかもしれない。