カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

猪瀬本(凄いです)(昨年読んだお勧め本3)

2020-02-06 | なんでもランキング

 昨年は、猪瀬直樹を定期的に読んだ。なかなか噛み応えのある本が多いので、一筋縄ではいかないが、面白いのでつい読んでしまう。そうしてものすごくためになる。猪瀬直樹は、日本人の必読書・作家なのではなかろうか。

昭和16年夏の敗戦/猪瀬直樹著(中公文庫)
 先の大戦前に、いわゆる若い日本のエリートを集めて日米大戦のシミュレーションを行った。その結果は、現実の大戦とほとんど同じような展開を見せて、敗戦となるものであった。その報告を受けてもなお、東条首相は(負けると分かっている戦いを)避けることはできなかった。陸軍相としては、軍の後ろ盾から開戦論をぶっていた東条だったが、開戦を避けたい意向だった天皇の指名を受けて首相となり、何とか米国との戦いを避けるよう模索する。しかし、正式な討議をしてもなお、開戦に追い込まれていくしかない日本の政治の姿に、あらがうことはできなかった。戦後は東条のような軍部出身の政治家などは、すっかり悪人に仕立て上げられ、その責任を一部の人間に背負わされてしまった。そうして現代も、そういう誤解は解かれてないのではないか。

天皇の影法師/猪瀬直樹著(中公文庫)
 大正天皇が崩御した朝、東京日日新聞(現毎日新聞)は新元号を「光文」と報じた。実際はご存知の通り「昭和」だったわけで大誤報だったのだが、その顛末とは何だったのか。さらに森鴎外の最晩年に元号にかける強い思いとは何だったのか。歴代天皇棺を担いできた八瀬童子といわれるある村の人々とは。など、天皇にまつわるシステムについて考えるルポルタージュである。新元号が生まれる直近になったので手に取ったわけだが、それ以上に収穫があった。

黒船の世紀/猪瀬直樹著(角川ソフィア文庫)
 副題に「〈外交〉と〈世論〉の日米開戦秘史」とある。徳川の歴史の終焉には、ペリー来航の外圧が大きなきっかけだったわけだが、そのような米国の外圧は、太平洋戦争と突き進まざるを得なかった日本の運命ともつながっていた。開戦前には米国は、日本の脅威におびえていた。そうして日本との開戦を描いた作品がたくさん作られた。実は日本も同じで、日米開戦を扱った作品がベストセラーになったりした。そうして扇動された大衆が、開戦を望む内閣を後押ししていくのである。

ミカドの肖像/猪瀬直樹著(小学館文庫)
 西武グループのコクドが旧皇室の土地を次々と買い取りプリンスホテルを建てていく物語から、皇室を読み解いていく。中心だか周辺だか分からない距離感で、日本人の潜在的に持っている皇室観が浮き上がっていく。いろんな意味で、目から鱗が落ちまくること必至。
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