カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

暴力から逃れられない自由人たち   菊とギロチン

2020-02-11 | 映画

菊とギロチン/瀬々敬久監督

 関東大震災後の時代。夫の暴力から逃げ出した女性が、女相撲の興行団体に入って相撲に打ち込むようになる。同時期、アナーキズムを標榜する政治ゴロのグループが、エロ目的で女相撲に興味をもって同行するようになる。社会の動きの中で、彼女らの運命も振り回されることになるのだった。
 社会運動家なのか、単なるタカリ屋なのか、それともチンピラなのか分からない連中と、人々を抑圧する権力の横行を描いているようなのだが、なんだかピントがしっかりあっていない感じ。演出上大声を出して暴れる人々が多いので、何か演技が下手な連中がたむろっているような印象を受ける。俳優たちは決して演技が下手なわけではないのだろうが、何か下手にしないとならないような、空気が流れているようだ。そうして、話がやたらに長い。ソリッドに切れるものが、もっとあっても良かったのではないか。
 また後半に様々な暴力が実際に錯綜するが、これらから逃げていることが出発点にもかかわらず、甘んじて受けている人が多いように思う。ボクサーではないのだから、これだけ打たれてしまうと、それなりにダメージは深いものである。暴力も表面的なものに過ぎない印象を受けてしまう。向き合うのであれば、もう少し真摯に向き合うべきなのではないか。
 おそらく実話がベースになっているようだが、必ずしも史実に忠実なわけでもなさそうだ。もちろんドキュメンタリーではないのだから、それでもいいのである。ただし、着色して訴えたかったものがきっとあったはずだ。そうした映画的な文法のようなものが、今一つ読み取りにくい作品だった。ちょっと惜しいところもあって、面白くなりそうなのだが、なんだかそこで切れてしまう。そういうところが、一番残念だったかもしれない。
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