カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

英国王室を少なからず動かしたインドの青年   ビクトリア女王 最後の秘密

2020-05-19 | 映画

ビクトリア女王 最後の秘密/スティーブン・フリアーズ監督

 女王即位50周年に当たり、英国領のインドからメダルの贈呈を行うことになり、その使者として英国に行くように命じられた若者が、その率直な性格を女王から気に入られ、そのために英国王室を騒動に巻き込んでいく物語。もともと気難しく人間づきあいの好きではない女王は、すっかりインド社会に興味をもって、言語だけでなく、青年から様々なことを真摯に学ぼうとする。その中で英国王室の様々なしきたりに衝突し、関係者はインド人青年への反発を募らせていくのだった。
 女王様の乱心を描いたということもいえるし、植民地支配の英国の醜さを描いたともいえる。権力者に気に入られると毀誉褒貶が激しいのだ、という話なのかもしれない。結果的に女王にたいへんに厚遇されるインド青年だが、確かにそのために調子に乗っているようにも見える。女王以外はすべて敵のようなことになってしまい、女王に頼らなければ、まともに生きていくことさえ難しいだろう。一度こうなってしまうと、このまま乗り切るより道が無いようにも感じる。しかし女王は高齢でもある。どのようにすべきというか、インドに帰るべきタイミングも、考えておく必要があったのではなかろうか。
 史実をもとに作られたものであるようだが、その当時の英国の状況も見て取れるし、インドの青年も好青年であることは確かで、コメディとしてもそれなりに成功している。愛する人を立て続けに亡くして心を閉ざしていた女王が、インドの青年との付き合いの中で、元気になっていったというのは、それなりに信憑性がある。また皇室の閉塞空間の中で、取り巻きがうるさいというのも見て取れて、そういう不自由社会を精神的に打開する方法としても、考えさせられるものがある。皆この地位に、多かれ少なかれ依存していて、逃れることができない。結果的に悲劇的なことにはなるんだが、これはもうシステムが悪いとしか言いようがないのではないか。
 しかしまあ、そうであっても、曲りなりに英国王室は続いているわけで、現在も問題は続いているようにも見えて、のらりくらりやっているようにも見える。そういうのは、その中の人間模様に、それなりにしたたかなものがあるということなのかもしれない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

確かに食いたくなること必至   ラーメン食いてぇ!

2020-05-19 | 映画

ラーメン食いてぇ!/熊谷祐紀監督

 遠くモンゴル秘境で事故にあい、一人の美食評論家だけが生き残り放浪している。息も絶え絶えだったが、もう一度清蘭のラーメンを食べたい一心で力を得て生き延びる気力を振り絞っている。一方その清蘭というラーメン屋の爺さんは、妻に先立たれ、ラーメン作りに懸ける情熱を失いかけて、店もほぼ閉じかけている(味が落ちたと客も離れたようす)。息子たちも継ぐ意思がないし、風前の灯火だ。そんな中、友達に恋仲のことで裏切られ、自殺未遂から立ち直ろうとしている孫娘(女子高生)が、清蘭のラーメンに生きる希望を見出し、この味を受けつごうと名乗りを上げるのだった。
 線の細い女子高生に伝統の味が引き継げるのか? ということなんだが、祖父である爺さんが、この娘に希望を託すのも、また優しくこの技の数々を伝授するのも、なかなかに合理的な展開を見せる。シンプルではあるが、しかし確実にうまいラーメンを作る技というものがなんであるのか、惜しみも無く理解できることだろう。実際には努力を惜しまなければ、誰でも作れるものなのかもしれないが、そうであるからこそ奥深く、繊細で手が抜けない。そうしてそれに掛ける情熱や才能も必要なのだ。
 途中で何かこれは覚えがあると気づいたが、原作漫画があるようだ。数年前にこの漫画が話題になって、少しだけ読んだのかもしれない。基本的には原作の通りに再現された物語のようだけれど、石橋蓮司の坦々とした演技と女子高生役の二人との掛け合いが、それなりに成功している。ものすごく凄い技能を習得している風ではないが、着実に力をつけていく様が、なかなかのサクセスストーリーではないか。
 モンゴルでの日本語の会話が、ちょっと日本語的に説明しすぎるところはあるが、この生存物語も、ラーメンの力を引き立てていていい感じである。映画的にいいというより、このストーリーに力があるということだろう。たかがラーメンかもしれないが、このような食に関する情熱というストーリーが、さらに味を昇華させていくのかもしれない。物語があってさらに旨いものがある。人々が求めている旨いという姿を、なかなかに表現できている作品なのではなかろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする