RAW 少女のめざめ/ジュリア・デュクルノー監督
フランス映画。菜食主義者だった娘は、姉も両親も通う獣医学校に通うことになり、そこで新入生への通過儀礼として生肉を食べなければならなくなり、やむなく口にした。その後激しいアレルギーのような拒絶反応が出るが、猛烈に肉を欲する体に変貌していくのだった。
まず、新入生を歓迎する様々な儀式があることに驚く。やることが過激で、非常に危なっかしい。日本をはじめとするアジアのそれとは、根本的に違った先輩後輩の序列があり、逆らうことが許されない。さらにこのようないじめのような乱暴を受けても、おそらくそれは伝統として容認されている様子だ。獣医学校の授業自体はまじめなのかもしれないが、こんな学校で学び通せる日本人なんて、ほとんどいないのではないか。寮生活には多かれ少なかれこんなことがあるのかもしれないが、日本人に生まれて本当によかった、と思う人もいるのではないか。
しかし、物語は、異常な学校以上に異常性を見せる姉妹の姿を描いていくことになる。これがまた気持ち悪いことこの上なく、観る側もかなり苦痛を味わうことになると思う。僕なんかは、こんなホラー映画だとはつゆ知らず見てしまい、たいへんに困惑した。気持ち悪いが、先が気になってみてしまう。尺もそれなりにまとまっているので、そこのあたりは観やすいが、しかしいろんな嫌悪感がわいてきて、困った。僕はただでさえ血に弱いが、こんなのは、とても耐えられない。いじめと異常性が行き着く危なさは、それは当然破滅だろうが、ちゃんと次のステージが用意されていて、いちいち驚かされた。まあ、そういう意味では、確かによくできた映画なのである。数々の映画賞をとり、さらにヒットもした。おそらく熱狂的に支持されたということだろう。なんというおぞましさだろう。
特に感動作というのではないだろうが、ただのエログロサスペンスと片付けられない迫力がある。そういう意味では歴史的に残るかもしれない作品なのかもしれない。こんなのをお勧めするのもどうかしているとは理解しているものの、やはり一定の人は観るべき作品である。後悔もするだろうが、きっと理解もしてくれることだろう。