英国総督 最後の家/グリンダ・チャーダ監督
インドを統治していたイギリス人の最後の総統の着任の物語とともに、インド独立にかかるパキスタンとの分離のいきさつを描いている。宗教もあるが、当然このために引き裂かれる運命の人々もいる、様々な思惑の中でそうならざるを得なかった人々の苦悩と、翻弄される人々の姿が描かれている。そしてこれを作った監督も、この物語で翻弄されるある家族の孫娘であるという。ドキュメンタリー作品ではないけれど、おそらくそのような逸話の中には、事実も含まれているのだろう。
インド自体が階級社会であると言われている(実際そのようだ)。そういう階級の社会を武力で統治しているのが英国である。インドは独立の機運が沸き起こっているし、英国も、実際は遠いアジアの大国を持て余している、という事情もあったようだ。インド人との賃金格差に大きな開きがあるので、まだまだ多くの使用人を使って巨大な建物の中で君臨して行ける役人たちがたくさんいる様子である。
インドの独立運動は、人種や宗教も複雑に絡んでいる。インド全体で独立することが重要だとする派閥と、この機に分離独立を果たしたいパキスタン側の思惑もある。これらは水と油で激しく対立しあっており、普段は一緒に料理をしている料理人たちであっても、そういうイデオロギーの話になると、たちまち喧嘩しだして収拾がつかなくなってしまう。住んでいる地域は混在しているし、もともと同じコミュニティにある。だからそこで暮らす中で、宗教が違っても好きあって一緒になるものはいる。そういうことだから、分断されては困る人もたくさんいるわけで、なかには怒り諦め泣き暴れる人たちが出てくる。先の分からない不安に、疑心暗鬼になってしまっている。
最終的には、統治している英国が決めるということになるわけだが、この統治者がこの状況を理解し得るわけが無いのである(ひとごとなのだから)。そうしてくだされた決断のために、さらに多くの混乱と血が流れることになっていくのだった。
もうこれはどうにもならんな、というのは観ながら見て取れる。何もガンジーが頑張って、インドが独立したわけではなかったんだな、と分かる。もちろんこれは映画だが、監督さんはこの混乱の中、まだ少女で物語に関わってはいるようである。彼女からすると、そのような事実の物語なのだろう。可哀そうな人がたくさんいて、やっぱり恋の問題が一番つらいですね。時代に左右されない恋愛というのは、それだけで大変しあわせなことのようです。