マリーゴールド・ホテルで会いましょう/ジョン・マッデン監督
それぞれに事情があって、英国を離れて老後の生活を営んでみたくなった人々が、豪華な宮殿暮らしのように謳っていた広告を目にし、インドに旅立つ。しかしそこは、ろくに扉も閉まらないさびれたオンボロ宿を切り盛りする調子のいい青年の居る宿だった。それでも気を取り直して、それぞれにこの新天地での生活を始めようとするのだったが……。
植民地にしていたインドに対して、英国はどのような感情をもっているのかはよく知らない。しかし旧植民地としての面影もあるし、なかには少年時代をここで過ごした人物もいる。貿易の関係なのか、単に映画的な配慮なのか、一定の人は英語を使うので根本的な生活は困らないということかもしれないが、恐ろしく生活の文化が違う世界に飛び込んで、毎日さまざまな事件が持ち上がってくる。そういうものだという楽観とあきらめのある人はいいが、さらに意固地になって外界を遮断するような人だっている。そうしてインド的な騒動の中、それぞれ英国では果たせなかった心の平穏のようなものを取り戻すことができるようになる人もいるのだった。
文化ギャップを刺激にして、物事をあれこれ考えるのは良いことだとは思う。しかしながら、得てしてこういうのが得意なのは若者である。受け入れる側にそれなりの許容と自由な精神が無ければ、そういうものに対応できにくいと思われる。ところがこの映画では、真逆の偏屈な高齢者集団である。ひどいところであることは、実はまったく知らなかったわけでもなかろうが、もうこれはこの喧噪世界に慣れるよりない。面白いところもあるし、まあ、呆れることも多い。そうやって本国で味わった心の傷のようなものが、段々と癒されていき、そうしてここで、また新たなドラマが生まれていくわけだ。
この映画評判が良くて、続編まで作られたようだ。僕としてはちょっと良い話過ぎるかな、という感じはしないではない。何故ならアジアンないい加減さは、それなりに実際に体験してきたことだから(まったく酷い目に会ったものだ)。もっと激しい葛藤が無ければ、異文化なんてそう簡単に受け入れられるものではない気もする。まあ、映画の時間もあるんで、これくらいでちょうどいいのであろうけど……。