アニー・ホール/ウディ・アレン監督
久しぶりに観たという感じ。最初に観たのは高校生くらいの時だったと思う。当時は既に傑作と言われていて、どんなもんかな、という興味だったろうと思う。科白が多くて、さらに演技の途中でその場面を解説したりするめちゃくちゃな演出に、面食らった覚えがある。しかしひどく感心して、すっかりウディ・アレンのファンになってしまった。彼はへんな人間には違いないが、同時にやはり天才ではないのか。今はキャンセル・カルチャーで、アメリカで映画を撮るのは難しくなっていることと思われるが、当時は脂が乗りきっていて、素晴らしいのである。
物語は、いわゆるラブコメで、コメディアンと歌手が知り合って同棲生活を送る。ユダヤ人と普通の白人家庭の習慣の違いなどがあって、なかなかに同調できないことが多い。しかしながらそれなりに楽しくやっている様子であったが、女の方が浮気して離れていくので、自分も浮気してうんざりしたりするが、しかし離れてみると未練たらたらになって苦しむ。典型的な恋の顛末である。
自分の女性遍歴なんかも随所に交えてあって、いわゆるニューヨーカーの人間の生活というのを、なんだか自慢げに紹介した映画でもある。いろいろあるが、人間の生き方の最前線でもあるというように……。まあ、単にあんまり普通じゃない人々ばかりが住んでいる街、ニューヨークってことなんだけど。
低予算ながら、それに型破りな映画の手法をなんでもまぜこぜにしながら作り上げていて、観るものをその混乱に巻き込ませて、いわばいたずらを仕掛けて楽しんでいる、といった趣もある。そういうのが新しいと言えばそうで、やはり独自と言えばそうなのだ。映画のジャンル自体がウディ・アレンで、それに伴った俳優陣も、それなりに付き合って奮闘している。特に当時は公私ともにパートナーだったダイアン・キートンは素晴らしくて、この映画が成立している大きな要素になっている。
若いころに観たことは覚えていたが、やはり詳細はほとんど忘れていた。彼らは当時見栄えが悪いアメリカ人だとばかり思っていたが、ウディ・アレンはともかく変だけれど、それ以外の人たちはいたって普通だというのが、今の感想だった。時代を経て観てみると、傑作には違いないが、それなりにふつうだ。しかしそこまで古くなっていない。そして、やっぱり面白い。大人になってみると、鼻につくところはあるが、それが彼らの若さだったということなのであろう。