風に吹かれて豆腐屋ジョニー/伊藤信吾著(講談社)
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世の中にはけっこう変人がいるものだ。しかしながら変人でありながら社会的に成功するのは大変ではないかと思ったりする。いや逆に、一定以上の社会的な地位を確立すると、変人ぶりがかえって愛嬌になる場合はあるだろう。そうではなくて、変人だからこそ道を切り開いていけるということがあるという奇跡のような物語があったのである。少なくとも、本田宗一郎だけが成功した日本を代表する変人ではなかったのである。
豆腐は日常的に食べる。爆発的に旨いわけではないが、しみじみうまい食材だ。冷奴なら多少醤油をかけて食うけれど、醤油をかけなくてもそれなりに旨い。湯豆腐も旨いし、麻婆豆腐も大好きだ。変わりものなら沖縄の腐り豆腐(「豆腐よう」と言うらしい)も珍味だ。厚揚げも、ついでにオカラもけっこういける。甘くなければ豆乳も旨い。
しかしながら男前豆腐は、これらのどの豆腐とも違うものだ。ひとことで言うとものすごく濃い。値段は特価品の10倍ぐらい(300円)するけれど、ものすごく旨いことは確かだ。旨いだけでなく、どうにも変わっている。僕が食べたのはこの本の表題と同じ「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」である。食ってみてそれなりに感心し、どういう工夫があるのか、興味が湧いてこの本を手にしたわけだ。
最初はウケ狙いなのかな、とも少し思った。しかしそんな考えが根本的に違うことに気づかされる。いや、ウケは狙っている。楽しんで狙ってはいる。しかし、そういう側面だけでは解けない謎が、いかんなく紹介されている。はっきりいってかなり凄い。これってものすごく日本人くさい。だけれど凄く新しい感じだ。どんどんいくところまで行ってしまって、それでも遠くに行くわけじゃない。これはウケなきゃ損である。がんばれっという気持ちと、なんだかもりもり力が湧いてくるような、躍動感に満ちている。閉塞感の微塵もない世界。ちょっと次元が違うところに行き着いている感じだ。偉い。
正直に言うと、男前豆腐の価値観自体が憧れるほどかっこいいとは思っていない。僕の好きなデザインでも全然ない。しかし本当に共感できるのだ。
僕は宝塚やジャニーズという世界は、冗談としては面白いと思う。しかしながらあれがかっこいいというのはダサいと思っていた。別に嫉妬して言っているわけではない。あれが好きな人は別にかまわないけれど、遠くの世界でがんばって欲しい。別にハーフの人には何の恨みもないけれど、芸能人にそういう関係者が多いということに、決定的な価値観の違いを感じる。それじゃ駄目なんだよな、と漠然と思っていた。別にそこだけ共感したわけではないが、この人も同じようなことを考えていたようだ。なんだかとても嬉しい。かっこ悪いけれど、とてもいい感じだよ。
こういう世界は主流ではないかもしれない。しかし着実に支持を広げていくのではないか。亜流だって生まれるだろう。しかし生き残るのは結局この考えを本当に理解した人だけだろう。そうしてもっとごてごてしたり、ごつごつしたりしていろんなところから顔を出したらいいと思う。お互い「ああ、やられた」とか「おーし、こんちくしょう」とか思うような世界が開けたら、日本の未来は安泰ではないか。まあ、日本だけでなくてもいいんだけれど、日本人には向く世界なんじゃないかと思う。面白くなってきたなあと思うのである。これはもうすぐ次の伊藤さんが生まれてくるよ、きっと。僕は希望を込めて確信したのだった。
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世の中にはけっこう変人がいるものだ。しかしながら変人でありながら社会的に成功するのは大変ではないかと思ったりする。いや逆に、一定以上の社会的な地位を確立すると、変人ぶりがかえって愛嬌になる場合はあるだろう。そうではなくて、変人だからこそ道を切り開いていけるということがあるという奇跡のような物語があったのである。少なくとも、本田宗一郎だけが成功した日本を代表する変人ではなかったのである。
豆腐は日常的に食べる。爆発的に旨いわけではないが、しみじみうまい食材だ。冷奴なら多少醤油をかけて食うけれど、醤油をかけなくてもそれなりに旨い。湯豆腐も旨いし、麻婆豆腐も大好きだ。変わりものなら沖縄の腐り豆腐(「豆腐よう」と言うらしい)も珍味だ。厚揚げも、ついでにオカラもけっこういける。甘くなければ豆乳も旨い。
しかしながら男前豆腐は、これらのどの豆腐とも違うものだ。ひとことで言うとものすごく濃い。値段は特価品の10倍ぐらい(300円)するけれど、ものすごく旨いことは確かだ。旨いだけでなく、どうにも変わっている。僕が食べたのはこの本の表題と同じ「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」である。食ってみてそれなりに感心し、どういう工夫があるのか、興味が湧いてこの本を手にしたわけだ。
最初はウケ狙いなのかな、とも少し思った。しかしそんな考えが根本的に違うことに気づかされる。いや、ウケは狙っている。楽しんで狙ってはいる。しかし、そういう側面だけでは解けない謎が、いかんなく紹介されている。はっきりいってかなり凄い。これってものすごく日本人くさい。だけれど凄く新しい感じだ。どんどんいくところまで行ってしまって、それでも遠くに行くわけじゃない。これはウケなきゃ損である。がんばれっという気持ちと、なんだかもりもり力が湧いてくるような、躍動感に満ちている。閉塞感の微塵もない世界。ちょっと次元が違うところに行き着いている感じだ。偉い。
正直に言うと、男前豆腐の価値観自体が憧れるほどかっこいいとは思っていない。僕の好きなデザインでも全然ない。しかし本当に共感できるのだ。
僕は宝塚やジャニーズという世界は、冗談としては面白いと思う。しかしながらあれがかっこいいというのはダサいと思っていた。別に嫉妬して言っているわけではない。あれが好きな人は別にかまわないけれど、遠くの世界でがんばって欲しい。別にハーフの人には何の恨みもないけれど、芸能人にそういう関係者が多いということに、決定的な価値観の違いを感じる。それじゃ駄目なんだよな、と漠然と思っていた。別にそこだけ共感したわけではないが、この人も同じようなことを考えていたようだ。なんだかとても嬉しい。かっこ悪いけれど、とてもいい感じだよ。
こういう世界は主流ではないかもしれない。しかし着実に支持を広げていくのではないか。亜流だって生まれるだろう。しかし生き残るのは結局この考えを本当に理解した人だけだろう。そうしてもっとごてごてしたり、ごつごつしたりしていろんなところから顔を出したらいいと思う。お互い「ああ、やられた」とか「おーし、こんちくしょう」とか思うような世界が開けたら、日本の未来は安泰ではないか。まあ、日本だけでなくてもいいんだけれど、日本人には向く世界なんじゃないかと思う。面白くなってきたなあと思うのである。これはもうすぐ次の伊藤さんが生まれてくるよ、きっと。僕は希望を込めて確信したのだった。