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昭和の終わりの昭和の記録

某国営放送が1986年に放送した「ドキュメント昭和」シリーズを基にした書籍を読む。

日本の選択〈2〉 魔都上海 十万の日本人
日本の選択〈4〉 プロパガンダ映画のたどった道

元の番組タイトルはそれぞれ「上海共同租界」「トーキーは世界を目指す」。
20年も前の本なので中身はどうよ?と思われる向きもあるかもしれませんが、結構面白い。

まず上海本ですが、こちらは特に新しい事などは出てこない(と思う)のですが、
取材した1986年と言うのは改革開放路線(1978~)以降、天安門事件(1989)以前。
本を読むと上海市内をかなり自由に・精力的に動き廻れていて、
しかもバンドだけでなく虹口(←凡ミス訂正)の旧日本人居留地帯などの建築もリサーチしている感じです。
ここ10年くらい上海は物凄い勢いで建物を壊していて、
残っている当時の建物もどんどんなくなっているらしい。
なのでこれは是非映像を見たい、という気にさせられます。
また、当時上海で暮らしていた人のナマの証言(こちらも時間的にギリギリ?)が
取れているのも貴重(工場と社宅を往復するだけのせまい日本人社会で暮らしてる人が多かったみたい)。

映画本は上海本より更に面白いです。
まず、題が「トーキーは世界を目指す」から「プロパガンダ映画のたどった道」に変っているのですが、
実は本書はサイレントからトーキーへの技術的変化を背景とした映画界の変化、
「国家」の登場(トーキーだと言語が絡む、サイレント映画には言葉の壁は無い!)を描くと言う
非常に面白い、メディア論的視点で構成されているのです(だからどっちの題も正解)。
しかもさすが国営放送、ハリウッド、ポツダム(ウーファー社があった)と
ガンガン出かけていて取材力も資金力もすごい。
ハリウッド取材時の臨場感溢れるエピソードも面白いし、ドイツはまだ東ドイツだし。
映像が気になると言う意味では番組も見てみたいですが、
書籍としても幅広い内容を上手くコンパクトに纏めてあるので超お勧めです。
古本屋さんではかなり安いみたいなので、見つけたら即買いですね。
(あはは、例によって図書館から借りました)
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