街角にある3階建ての集合住宅淵が白く十文字になっている窓ガラスには、濃くて淡いの青色のカーテンがかけられている。そこには、右手で頭をかかえるひとりの女性の姿があった。
――――この雨は止まないのかなぁ――――
部屋の中にはグランドピアノが1つ空間を埋め尽くすかのようにおいてあった。
――――――哀しみと希望のあの歌を歌ってみよう――――――
彼女は、窓越しからグランドピアノへ向かうと蓋を開け、巾を取り出し、背もたれの無い椅子に腰かけると、おもむろに分散和音を奏で始め、歌い始めた。
―――雨歌か―――
彼女が歌い弾く哀しみと希望の歌を隣の一室で聴く一人の男性の姿があった。
―――雨が止んでも降り続いても絶望に希望は消える訳じゃない。ただ、今と言う、刻々と無機質に時が過ぎ行く哀しみを噛み締めるだけか。この雨は止みそうにないな――――
雨と哀しみと希望の歌は続く。そして2人の今日も明日も…。