カチカチ

見つめる先に倉庫の壁があって、波うつ壁はところどころひび割れていた。
太陽の光がそのひび割れを通して、刃物のような形を造りながら差し込んでいた。
立ち上がるのも面倒くさかった。
首に巻いたヒモは簡単に切れたのだろう。
頭の後ろが痛かった。
触ると乾きかけた血が手についた。

どのくらい・・・

時計を見た。
文字盤のガラスは割れていた。
秒針は動いていなかった。
廻りの明るさから考えて、ありえない時刻を他の針はさしていた。
カチカチ・カチカチ・カチカチ・・・
耳を当てると、ムーブメントが動く音は、まだ、聞き取れた。

もういいや、もういいかって、思ってここにきたのになあ・・・
結局、これかあ・・・
ふふ・・・
タバコなかったっけ・・・
血が止まったってことはたいしたことないのかなあ・・・
わあ、怖ええ・・
こんなとこも血がついてんじゃん・・・
はは、何、怖がってんだよ・・・
はは、はは、はは・・・
携帯は・・・
ヤバ、もう、充電ないじゃん・・・
はは、誰に連絡すんだよ・・・
はは、はは、はは・・・

起き上がろうとしても簡単には起き上がれそうになかった。
もう一度、壁のほうを見た。
光でできた刃物の先がこちらに伸びて、心臓をえぐりそうだった。