⭐️⭐️浅野まことのここだけの話⭐️⭐️

浅野まことがここだだけの話をブログで大公開!!

新日鉄住金、「鉄冷え」の今こそ好機 国内外で相次ぎ出資、割安で世界に供給網

2016年04月09日 | 企業研究
【真相深層】新日鉄住金、「鉄冷え」の今こそ好機
国内外で相次ぎ出資、割安で世界に供給網 日本経済新聞 朝刊 2016/4/9 3:30
 新日鉄住金が相次ぎ国内外の鉄鋼会社への出資に踏み切っている。過剰な生産能力を抱える中国から安価な鋼材があふれ出し、各国の鉄鋼会社が「鉄冷え」に苦しんでいることが背景。市況が悪い厳冬期こそ割安に世界で供給網を築ける好機とみて、ブラジル鉄鋼大手への追加出資など矢継ぎ早に手を打っている。


新日鉄住金が追加出資するウジミナスの製鉄所
力業で拠点守る

2月、日新製鋼子会社化の記者会見に臨む進藤社長(左)
 市場で資金ショートの噂すら飛び交ったブラジル鉄鋼大手、ウジミナス。新日鉄住金の出資先である同社は18日に予定する臨時株主総会で増資を決め、ようやく一息つく見通しだ。

 「南米の供給拠点を守るために手を尽くせ」。新日鉄住金の進藤孝生社長は2月中旬、担当役員らに号令をかけた。中国産鋼材の流入増やブラジル経済減速でウジミナスの経営が日増しに厳しくなっていたからだ。

 同社を共同で運営するアルゼンチン鉄鋼大手テルニウムは「まず資産売却を検討すべきだ」と主張。再建には増資が不可欠と考える新日鉄住金と主導権争いが続き「チキンレース」(同社幹部)の様相を呈した。

 融資の返済期限などを考えると増資決定のデッドラインは3月中旬。同社の橋本英二副社長執行役員らがブラジルに飛び、調整に奔走した。ウジミナスのホメル・ソウザ社長と国際協力銀行幹部との会談などを通じ、増資を条件に返済期限を延長することで金融機関と話をまとめた。

 だがテルニウムは新日鉄住金と同様に議決権ベースでウジミナス株3割弱を持ち、対等の関係。テルニウムを無視して再建策は策定できない。進藤社長はテルニウムの実質的オーナーと直談判し、交渉に動いた。

 チキンレースを制する切り札となったのは「テルニウムが出さないなら、必要な資金10億レアル(約300億円)を新日鉄住金単独でも出資する」という力業の交渉だった。この提案に他の株主が賛同。テルニウムは反対したが、多数決で増資することが決まった。

かつては「標的」
 かつて欧州アルセロール・ミタルの買収攻勢におびえた新日鉄住金が一転し、買う側に回っている。油田開発用鋼管が原油安で売れず苦境に陥った仏バローレックへも総額400億円強を追加出資し、2017年度に持ち分法適用会社にする。

 中国の増産攻勢にさらされた00年代半ば、新日本製鉄(当時)はミタルからの買収を防ぐため住友金属工業(同)や神戸製鋼所、韓国ポスコと株式持ち合いを進めた。10年ほどたった今、ミタルは15年12月期の79億ドル(約9千億円)の連結最終赤字となり、往時の勢いはない。

 12年の新日鉄と住友金属の合併後、新日鉄住金は負債削減などで財務体質を改善し、時価総額でも世界最大に躍り出た。バローレックは当初提携していた住友金属が一時、数千億円を投じて追加出資を検討したこともある。関係強化に必要な金額は現在、当時の10分の1程度で済む。「鉄冷えの今こそ、投資の好機」との姿勢に転じている。

 国内でも攻勢をかけている。「遅まきながらもやっと動いたか」。日新製鋼の三喜俊典社長が子会社になることを受け入れると打診してきたとの報告を受けた新日鉄住金首脳は周囲に漏らした。

 1990年代から幾度も浮上した再編構想は独立心の強い日新製鋼側が傘下入りを受け入れず膠着していた。だが主力のステンレスは中国の過剰供給で収益が悪化。生産設備の維持は困難とみた日新製鋼が歩み寄り、長年の懸案が前進した。

 新日鉄住金が決めた出資額は2月以降だけで総額1千億円超に及ぶ。少子化を受け内需が先細りになるなか、中長期的には海外市場が成長をけん引する見込み。「3年後までに海外事業を何としても黒字転換させる」(同社幹部)。赤字体質が続く海外事業への危機感が強まっている。

 4月1日の入社式。進藤社長は「今年は忍耐、我慢の年になる。だがその先の未来、世界中どこでも新日鉄住金の名前が聞かれるような圧倒的なプレゼンスをもった会社を築く」と語りかけた。厳冬を乗り越えたとき、理想型の生産体制を整えられているのか。進藤社長の視線は再編の先に向いている。

(林さや香)