2003年5月15日(木)
#157 バッド・カンパニー「STORIES TOLD & UNTOLD」(east west japan AMCY 2025)
バッド・カンパニー、96年リリースのアルバム。プロデュースはジョシュ・レオ。
オリジナル・メンバーによるバドカンは82年のアルバム「ラフ・ダイアモンズ」を最後に解散したが、86年にラルフス、カーク、バレルに新メンバーを加えて再スタート。以来、メンバー・チェンジを繰り返しながら、現在に至るまで活躍している。
新曲9曲に第一期の7曲の再演をまじえたこのアルバムは、彼らの「原点回帰」の一枚といえる。
やはり、聴きなれた曲には、懐かしさで思わず反応しちゃいますね。
<筆者の私的ベスト3>
3位「CAN'T GET ENOUGH」
説明など不要だろうが、あえていうならバドカンにとって「名刺」的存在のデビュー・ヒット。
前年に新加入の実力派ヴォーカリスト、ロバート・ハートをフィーチャーして聴かせる新録音は、意表をついたアコースティック・アレンジ。これがいかにも新鮮。
ハートの声質は適度にハスキーで、ポール・ロジャーズのそれにかなり似ている。声域もほぼ同じ。
いや、ちょっと聴いた分には、ほとんど区別がつかないくらいだ。こぶしのきかせ方まで似ている。
これがいいかどうかは論の分かれるところだが、少なくとも言えるのは、ロジャーズ時代のバドカンの曲をカヴァーするには、極めて適した声だということ。
ソウルフルな白人女性シンガー、ベッカ・ブラムレットの好サポートを得て、シャウトしまくるハート。ナイスです。
ラルフスが弾くスライド・ギターもいい。全体にどことなく米国南部の鄙びた味わいがある。
こうなるともう、ブリティッシュ・ロックというよりは、ほぼ完全にアメリカンな音といえますな。
2位「I STILL BELIEVE IN YOU」
メロディの美しさが光る、ロマンチックなバラード・ナンバー。オクラホマ出身のカントリー・シンガー、ヴィンス・ギル、92年のヒットのカヴァー。
ここでのハートの歌いぶりは、ロックというよりは、正統派ポップス(マイケル・ボルトンあたりの)という感じ。(他の曲では、エルトン・ジョン風にもなったりと千変万化なのが、また面白いですな。)
ソフトなバックのアレンジといい、いかにも米国市場のウケを狙ったつくり。
バドカンに「ハードロック・バンド」のイメージを求める、旧来のファンが聴いたらズッコケるだろうが、これはこれでなかなかの完成度。若いカップルのBGMなんぞに、よさげである。
1位「SHOOTING STAR」
1位はやっぱり、旧バドカンのナンバーになってしまった。現メンバーには申し訳ないが、オールド・ファンにはこの曲、抗し難い魅力があるのだよ。
オリジナルは75年リリースのセカンド・アルバム「ストレート・シューター」に収録。
のどかで、のびやか、カントリー・フレーヴァーたっぷりの名曲を、ハートはあえてロジャーズのスタイルとかぶらないよう、テクニックを駆使して歌い上げる。
プロデューサー、ジョシュ・レオのギター・ソロ、リッチー・サンボラの12弦ギターが、バックから盛り上げる。
さらには、懐かしや80年代に活躍した白人女性シンガー、キム・カーンズまでがコーラスに加わっております。
もちろん、バンド・メンバーのカークやリック・ウィリス(b)らのプレイも手堅く、聴きごたえ十分。さすがの出来ばえだ。
最後にフォローしておくが、現バドカンのオリジナルにもなかなかいい曲はある。「WAITING ON LOVE」とか「LOVE SO STRONG」とか、往年のバドカンをほうふつとさせるものがあって、ナイス。
だがそれは、同時に問題点でもあって、ハートのヴォーカルが、ロジャーズに似すぎているという事実は、やはり気になる。
今後はいかに、現メンバーならではのカラーを出していくかが、課題だろう。
このままじゃ、黄金期バドカンの「自己模倣」っていわれそうだからね。バンドにとって、「(いまの)オリジナリティ」こそが命でっせ。
<独断評価>★★★☆