農民作家山下惣一さん死去
「減反神社」が、直木賞候補となり地上文学賞を受けた農民作家・山下惣一(86)さんが10日、肺がんのため佐賀県唐津市の病院で亡くなった。
私は、書いて、歩いて、笑って、怒って、よく飲んだという山下惣一さんと、一度唐津市を訪れたとき一緒にお酒を飲んだことがある。
当時、国は大型圃場で機械化農業を進めていたが、小農は貧農ならず、大農は富農足らず。農の問題は近代化で解決しないと言っていた。
目の前の田畑や、山、家族、そして村。 そこには近代化や市場経済と本質的にはなじまないと。 国の政策に翻弄される農家を憂いていた。
昨年2月「老農は死なず消えゆくのみ」と筆を置いた。息子には「死んだら老衰と言ってくれ」と。晩年は病魔との闘いだったようだ。
山下惣一さんは、佐賀県唐津市で農業に従事する傍ら、国内外を積極的に歩き、講演したり、小説やエッセーなどを執筆していた。
「海鳴り」で第13回日本農民文学賞。「ひこばえの歌」「農家の父より息子へ」「土と日本人」「産地直送」など数多くの著書もある。
おれは生涯一百姓と言っていた山下惣一さん。ご冥福をお祈り申し上げます。