ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

百谷ダム

2018-10-18 11:42:17 | 鳥取県
2018年10月9日 百谷ダム
 
百谷ダムは鳥取県鳥取市百谷の一級河川千代川水系天神川源流部にある鳥取県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで天神川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給を目的として1973年(昭和48年)に竣工しました。
百谷ダムは日本で最初にクレスト自由越流式洪水吐が採用されたダムです。
今でこそ当たり前のように建設されているゲートレスダムですが、その第一歩となったのが百谷ダムで、日本のダム史において大きな転換点となったダムと言っても過言ではないでしょう。
 
ダム下は私有の農地でダム直下には行けません。
ゲートレス黎明期のダムということで、越流した水を中央に集水させるために導流部は独特の曲線形状となっています。
クレストには扶壁を挟んで2門の自由越流式非常用洪水吐、オリフィスに自然調節式常用洪水吐があります。
 
左岸ダムサイトに上がります。
下流から見た洪水吐はダムの一部で、堤体の右岸寄りに洪水吐が位置しています。
 
導流面はアーチダムのように湾曲
クレスト越流部がセットバックされており、コンジットゲート上の扶壁は逆ハングになっています。
 
天端
ここだけ見ると普通のダム。
 
諸元プレート
目的にかんがいが入っていますが、これは既得取水権への灌漑用水補給、つまり『N』の意味かと思います。
 
減勢工もきれいな扇形、そして導流面はアーチ状
ここだけ見たら紛うことなきアーチダムです。
 
ダム下には農地。
 
総貯水容量は28万立米とため池サイズ。
インレットは湿地になっていてスイセンの群落があるよです。
 
越流堤は円形を描き上流側に大きくセットバックされています。
 
越流部をアーチ状にすることでより大きな放流量を確保するとともに、放流された水を減勢工に収束される意図のようです。
写真では見難いですが、ゲート中央にオリフィスの補助ゲートとしてコースターゲートがあります。
 
余所ではちょっと見られない、異形のゲートレス。
日本初のゲートレスとして紆余曲折、さまざま模索しながらたどり着いたのがこの形だったんでしょうね。
 
(追記)
百谷ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

1683 百谷ダム(1399)
千代川水系天神川
FN
18メートル
79メートル
280千㎥/242千㎥
鳥取県県土整備部
1973年
◎治水協定が締結されたダム


桜溜池

2018-10-18 03:07:47 | 鳥取県
2018年10月9日 桜溜池
 
桜溜池は鳥取県倉吉市桜の天神川水系国府川左支流にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1973年(昭和48年)に鳥取県の事業で竣工と記されており、農水省の補助を受けた県の事業で整備もしくは建設されたものと思われます。
ただ既存の溜池を改修したのか、新たに溜池を新設したのかは不明です。
池の管理は久米ヶ原土地改良区が行っています。

桜溜池という名前から、富山の桜ヶ池のような池公園として整備された小奇麗な池を予想していましたが実際は普通の溜池。
桜地区にあるので桜溜池だそうです。
左岸から
山陰では池の草刈りは稲刈後に行われるのが一般的で、当池もあいにく草刈り前。
 
環境整備の看板。
 
池直下の施設。
池は減圧水槽、建屋は揚水機場になります。
 
総貯水容量54万6000立米。
 
左岸の斜樋。
 
天端は車道になっていますが、見学中1台も車は通りませんでした。
 
上流面はコンクリートブロックで護岸。
 
右岸の越流式洪水吐。
 
上流から。
 
洪水吐導流部。
草刈り後に来ればイメージも変わるんでしょう。
 
1684 桜溜池(1398)
ため池コード
鳥取県倉吉市桜
天神川水系国府川
36.6メートル(ため池データベース23.1メートル)
115メートル(ため池データベース124メートル)
546千㎥(ため池データベース534千㎥)/546千㎥
久米ヶ原土地改良区
1973年

鉄山池

2018-10-17 16:55:35 | 鳥取県
2018年10月9日 鉄山池
 
鉄山池は鳥取県東伯郡北栄町上種の由良川右支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1940年(昭和15年)に鉄山谷土地改良区の事業で竣工と記されており、土地改良区の前身となる耕地整理組合もしくは水利組合等の事業、つまり受益農家の持ち出しで建設されたものと思われます。
現在の管理者は鉄山谷土地改良区です。
 
池の場所は明確ですが、国土地理院地形図を見てもアプローチがあやふや。
池の周辺は国営東伯地区かんがい排水事業で整備された畑地やビニールハウスが広がり、偶々農作業をされていた農家の方に場所を伺いました。
車で直接池に乗り付けるのは無理で最後は200メートルほどの歩きとなります。
丘陵地を開拓した畑地が広がる中、池の周囲だけは杉林に囲まれ鬱蒼とした雰囲気。
 
天端は下流面はきれいに草が刈られ、いまだ貴重な水源であることが伺えます。
 
貯水容量5万1000立米の小さな溜池。
 
下流面。
 
右岸から天端と上流面。
訪問直前に通過した台風の影響か満水。
 
右岸の小さな洪水吐。
 
堤体右岸に沿って流下する導流部。
 
下流面
夏場に草刈りが行われたようです。
 
このまま池下に下りて底樋管の写真を撮ったはずなのに見当たらない…
あと取水設備も池のどこを探しても見つかりませんでした。
たぶん左岸側に池栓などがあると思うのですが、直前に通過した台風の影響で水位が上がり水没していたのかもしれません。
池周辺は東伯地区かんがい排水事業で開発された畑地やビニールハウスが立ち並んでいますが、この池はそれらとは無関係で由良川流域の水田の水源として利用されています。 

1675 鉄山池(1397)
ため池コード
鳥取県東伯郡北栄町上種
由良川水系由良川右支流
19メートル(ため池データベース19.6メートル)
79メートル(ため池データベース78.5メートル)
51千㎥/50千㎥
鉄山谷土地改良区
1940年

西高尾ダム

2018-10-17 13:49:03 | 鳥取県
2018年10月9日 西高尾ダム
 
西高尾ダムは鳥取県東伯郡北栄町西高尾の由良川水系西高尾川源流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
大山北東山麓に位置する東伯郡琴浦町から北栄町一帯は広く火山堆積物で覆われた台地が広がり、地味は豊かながら水利に乏しく灌漑施設の整備が強く求められていました。
1979年(昭和54年)より農水省による国営かんがい排水事業東伯地区が着手され3基のダム、3箇所の揚水機場、延長38.2キロの幹線水路の整備が開始されました。
まず1992年(平成4年)に西高尾ダム、2003年(平成15年)に船上山ダム、に2006年(平成18年)に小田股ダムが竣工、同年かんがい排水事業全体も完了し約2700ヘクタールの田畑への灌漑設備が整備されました。
運用開始後はダムを含めた灌漑施設全体を東伯地区土地改良区連合が管理を受託しています
 
ダム下から
水田に沿って進むと奥に堤体が見えてきます。


ダム下の放流設備
右手に切れている白い建屋が揚水機場。


リップラップを見上げます。
リップラップ自体は草も少なくきれいに保たれています。

右岸の洪水吐斜水路。
ダム建設にあわせダム下は公園として整備されたようですが、今は荒れ放題。
この写真も蜘蛛の巣をかき分けてようやくシャッターを切りました。

 
左岸ダムサイトに上がります。
完成記念碑。


右岸の洪水吐。


2車線幅の天端ですが車両進入禁止
左奥が管理事務所。


上流面
こちらもきれい。
管理事務所から斜樋が伸びています。


天端から
木の陰になりますが白い建物は揚水機場と放流設備。


総貯水容量は201万立米で同じ国営事業で建設された3ダムの中では最大。
雲が架かっていなければ奥に大山が見えるのですが・・・・。

 
下流面。
奥の草付きの向こうが洪水吐斜水路。

定礎石。
農政局長は就任中に国営事業でダムを完成させれば、碑に名を残せる栄誉を賜ります。

水利使用標識
受益農地の大半は畑作のため年間を通して水利権が配分されます。

 
管理事務所裏手に斜樋と浮桟橋。
斜樋と浮桟橋がセットになっているのは船上山ダム小田股ダム共通。


ダム湖畔にはレークサイド大栄というレクリエーション施設が整備され周辺住民の憩いの場となっています。
 
1690 西高尾ダム(1396)
鳥取県東伯郡北栄町西高尾
由良川水系西高尾川
46.2メートル
237メートル
2010千㎥/1970千㎥
東伯地区土地改良区連合
1992年

小田股ダム

2018-10-17 13:09:08 | 鳥取県
2018年10月9日 小田股ダム
 
小田股ダムは鳥取県東伯郡琴浦町倉坂の洗川水系倉坂川源流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
大山北東山麓に位置する東伯郡琴浦町から北栄町一帯は広く火山堆積物で覆われた台地が広がり、地味は豊かながら水利に乏しく灌漑施設の整備が強く求められていました。
1979年(昭和54年)より農水省による国営かんがい排水事業東伯地区が着手され3基のダム、3箇所の揚水機場、延長38.2キロの幹線水路の整備が開始されました。
まず1992年(平成4年)に西高尾ダム、2003年(平成15年)に船上山ダム、に2006年(平成18年)に小田股ダムが竣工、同年かんがい排水事業全体も完了し約2700ヘクタールの田畑への灌漑設備が整備されました。
運用開始後はダムを含めた灌漑施設全体を東伯地区土地改良区連合が管理を受託しています
 
ダム下から
堤体と地山を挟んだ左岸側(向かって右手)に洪水吐導流部があります。


洪水吐減勢工と取水設備からの用水路がダム下で合流します。
フィルダムのこの絵柄、個人的にはかなり好みです。

 
ダムサイトに上がります
左岸の越流式洪水吐。


左岸ダム湖畔の管理事務所^手に斜樋と繋留設備があります。


ダムサイトの事業説明板。


竣工記念碑兼定礎石。


水利使用標識
受益農地の大半が畑なので年間を通して水利権が配分されています。


天端から
ちょっとわかりづらいですが海が見えます。


総貯水容量200万立米の貯水池。
雲が切れれば大山が見えるのですが・・・。


管理事務所と斜樋、浮桟橋
3枚目の写真を遠望したものです。


草がほとんどない奇麗なリップラップ。


広い天端は徒歩のみ開放。


上流面。


同事業で建設された船上山ダムともどもとても美しいロックフィルダムです。
 
1689 小田股ダム(1395)
鳥取県東伯郡琴浦町倉坂
洗川水系倉坂川
50メートル
347メートル
2000千㎥/1950千㎥
東伯地区土地改良区連合
2006年

船上山ダム

2018-10-17 02:30:54 | 鳥取県
2018年10月9日 船上山ダム
 
船上山ダムは鳥取県東伯郡琴浦町山川の勝田川水系勝田川源流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
大山北東山麓に位置する東伯郡琴浦町から北栄町一帯は広く火山堆積物で覆われた台地が広がり、地味は豊かながら水利に乏しく灌漑施設の整備が強く求められていました。
1979年(昭和54年)より農水省による国営かんがい排水事業東伯地区が着手され3基のダム、3箇所の揚水機場、延長38.2キロの幹線水路の整備が開始されました。
まず1992年(平成4年)に西高尾ダム、2003年(平成15年)に船上山ダム、に2006年(平成18年)に小田股ダムが竣工、同年かんがい排水事業全体も完了し約2700ヘクタールの田畑への灌漑設備が整備されました。
運用開始後はダムを含めた灌漑施設全体を東伯地区土地改良区連合が管理を受託しています。
また2014年(平成26年)から河川維持放流を利用した船上山発電所(最大出力110キロワット)が稼働しています。

下流から
堤高43.9メートル、堤頂長232.7メートル
堤体下部は芝が張られツートンカラー
手前の黒いドアの下が小水力発電所。

 
右岸の洪水吐斜水路。

 
左岸から
農業用ロックフィルダムの場合、管理の手が届かずせっかくの美しいリップラップが草まみれになっているダムが少なからずありますが、ここはきれいに整備されています。


天端から
ダム下は万本桜公園、奥の赤い屋根は県立少年自然の家。
船上山の登山口になっています。


ダム湖の総貯水容量は72万立米。
これだけの規模のダムにしては貯水量は小さい気が。


右岸の繋留設備も兼ねた斜樋。


天端中央の定礎石。
この位置に置かれるのは珍しい。


天端は徒歩のみ開放
背後に聳えるのが船上山。
ぱっと見メサかと思いましたが、大山の火山活動で噴出した溶岩流が侵食されてこんな姿になったとのこと。
ということで凝灰岩。


水利使用標識
かんがい面積2740ヘクタールのうち、畑が2000ヘクタールを占めるため年間を通じて水利権が配分されています。


右岸の横越流式洪水吐
僅かに越流しています。


上流から
右手は管理事務所ですが職員の常駐はなく巡回のみ。


上流面
こちらも草はなくきれいなロック。


竣工記念碑と船上山
できれば青空の下で眺めたかった。


1688 船上山ダム(1394)
鳥取県東伯郡琴浦町山川
勝田川水系勝田川
43.9メートル
232.7メートル
720千㎥/520千㎥
東伯地区土地改良区連合
2003年

寺谷池

2018-10-17 01:46:09 | 鳥取県
2018年10月9日 寺谷池
 
寺谷池は鳥取県西伯郡大山町東坪の真子川水系寺谷川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1989年(平成元年)に新田井手組合の事業で竣工と記されています。
池の状況を見るともっと歴史は古いと思われ、たぶん団体営事業による改修が竣工したのが1989年ではないかと思われます。
また便覧では堤高15メートルとなっていますが、鳥取県のため池データベースでは堤高13.9メートルとなっており、これを採ると河川法上のダムの要件未達となります。
 
寺谷池への道は一応舗装路ですが、直前の台風による倒木などがあり結構荒れ気味です。
右岸から下流面
時節柄草が伸び放題でなんの写真かわかりません。
草刈は稲刈り終了後にするんでしょう。
 
天端
一応舗装道路が通っています。
 
上流面も草ボウボウ。
 
左岸に越流式洪水吐がありますが、草が伸びていて近寄れません。
 
総貯水容量は10万2000立米
直前に通過した台風の影響でずいぶん濁っています。
 
左岸から。
 
たぶん右岸上流側に取水設備があると思われますが、これまた草生していて接近できませんでした。
稲刈りが終わると池の草刈りも行われると思われ、そのあとに訪問すれば池の印象も違ったものになったんでしょうね。

3667 寺谷池(1393)
ため池コード
鳥取県西伯郡大山町東坪
真子川水系寺谷川
15メートル(ため池データベース13.9メートル
95メートル
102千㎥/102千㎥
管理者未確認
1989年

川手川第2ダム

2018-10-16 18:28:05 | 鳥取県
2018年10月9日 川手川第2ダム
 
川手川第2ダムは鳥取県西伯郡大山町豊房の阿弥陀川水系川手川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
ダム便覧には1993年(平成5年)に院内土地改良区の事業で竣工と記されており、土地改良区の事業ということで農水省の補助を受けた団体営事業により建設されたものと思われます。
ダムの直上を大名農免道路が跨いでいますが、ダムへの降り口はわからず終いでした。
帰宅後右岸にダムへの下り口があることがわかりましたが後の祭り。
 
大名農免道路から
ダムは全面越流式で、直下には副ダムがあります。
 
 
アングルを変えて
台風の影響で水位が上昇し越流が見られます。
ドローンでも飛ばさない限り直上からこのような越流が見れるダムはちょっとないんじゃないでしょうか?
 
総貯水容量は14万7000立米。
火山堆積物で形成された地質のため、谷は深く川をせき止めて水源を確保するにはコンクリート製の堰堤しか手はなかったのかもしれません。
 
帰宅後、ダムへの下り口を確認しました。機会があれば再訪したいところですが遠方ゆえなかなか難しいものがあります。
 
3668 川手川第2ダム(1392)
ため池コード
鳥取県西伯郡大山町豊房
阿弥陀川水系川手川
17メートル
46メートル
147千㎥/147千㎥
庄内土地改良区
1993年

茗荷谷ダム

2018-10-16 13:41:52 | 鳥取県
2018年10月8日 茗荷谷ダム
 
茗荷谷ダムは鳥取県八頭郡若桜町茗荷谷の千代川水系舂米(つくよね)川上流部にある鳥取県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により、新たに中国電力が誕生します。
同社は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めますが、送電網末端部にあたる鳥取県では中国電力だけでは電力需要を賄いきれず公営発電である県企業局による電源開発が併せて進められました。
とくに千代川水系八東川流域では融雪による豊かな水量と急流に着目して各所に水力発電所が建設され、1960年(昭和35年)に八東川右支流の舂米川に春米発電所の取水ダムとして建設されたのが茗荷谷ダムです。
ここで取水された水は4.7キロの導水路で春米発電所に送られ242.16メートルの有効落差を生かして最大7900キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
若桜町中心部から国道462号を東進、渕見地区で旧国道に入り九十九折れの急カーブを進むと突然目の前に茗荷谷ダムが現れます。
クレストにはラジアルゲートが2門ありますが、訪問直前の台風の影響でクレスト放流が行われています。
放流のため写真では見えませんが、導流部左岸(向かって右手)に後付けの河川維持放流設備があります。
 
ゲート部分をズームアップ
扶壁上の丸みを帯びたゲート操作室に目が行きます。
 
アングルを変えて
なんだかオスプレイみたい。
 
堤体は左岸側が緩やかに湾曲しています。
 
奥は取水設備の屋根。
こちらも円形のデザインがいい感じ。
 
堤体下流面にダム名と施工者の銘板がはめ込まれています。
 
天端は立ち入り禁止。
 
総貯水容量は61万2000立米の貯水池。
 
上流面
左岸が湾曲しているのが分かります
円形の取水設備がいいですね。
 
追記
茗荷谷ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに27万7000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1680 茗荷谷ダム(1391)
鳥取県八頭郡若桜町茗荷谷
DamMaps
千代川水系舂米(つくよね)川
40メートル
124.5メートル
612千㎥/400千㎥
鳥取県企業局
1960年
◎治水協定が締結されたダム

三滝ダム

2018-10-16 02:00:11 | 鳥取県

2018年10月8日 三滝ダム 

三滝ダムは鳥取県八頭郡智頭町芦津の千代川水系北股川源流部にある中国電力の発電目的のバットレスダムです。
電力事業が自由競争だった戦前、兵庫県西部から岡山・鳥取東部地域では姫路に本拠を置く山陽中央水電と岡山に本拠を置く中国合同電気が2大勢力となって対峙します。
両者の覇権争いは1928年(昭和3年)の山陽中央水電による中国合同発電の買収で決着がつきますが、三滝ダムを建設したのはこの山陽中央水電です。
三滝ダムは1936年(昭和11年)に山陽中央水電芦津発電所の取水ダムとして竣工、ここで取水された水は約1.5キロの導水路で芦津発電所に送られ有効落差189.32メートルを生かして最大出力2600キロの発電を可能にしました。
山陽中央水電傘下となった中国合同電気は1927年(昭和2年)にバットレスの恩原ダム建設の実績があり、さらに1933年(昭和8年)には奥津発電所調整池でもバットレス工法を採用しており、中国合同電気の技術的蓄積を生かして建設されたのがこの三滝ダムと言えるかもしれません。
なお、三滝ダム以降日本でバットレスダムが建設されることはなく三滝ダムは文字通り『最後のバットレス』となりました。
中国地方東部の覇権を握った山陽中央水電ですが、1942年(昭和17年)の電力統制令により発送電設備は日本発送電に接収され会社は解散解散しますが、戦後の電力分割民営化により誕生する中国電力の礎となりました。
三滝ダムはその土木技術的価値を評価して土木学会選奨土木遺産及びBランクの近代土木遺産に選定されています。
 
智頭町中心部から国道373号線を南下、郷原交差点で左折して県道6号に入ります。芦津地区で『芦津渓谷』を示す案内板に従って右折し北股川に沿って隘路をひたすら進むと三滝ダムに到着します。
ダムへは左岸上流側からアプローチする形となります。
対岸に芦津発電所への取水口があります。
 
上流面、バットレスではおなじみ傾斜がついています。
 
三滝ダムには左右両岸に洪水吐があります。
恩原ダム同様扶壁に溝が刻んであり、かつて可動ゲートがあったことが伺えます。
 
選奨土木遺産のプレート。
 
天端は中国自然歩道の一部で立ち入りができます。
 
総貯水容量17万8000立米と小さな溜池なみの貯水池です。
左手は取水口。
 
右岸側の洪水吐導流部。
 
右岸管理事務所の裏手を回り込むとバットレスに対面できます。
渓谷をせき止めた左右両岸に洪水吐を備えたV字形のバットレス。堤高23.8メートルとは思えない高度感があります。
 
右岸からダム下へと降りてみます。
 
まだ木々は青々とした葉を付けていますが、これが色づいたらサイコーの1枚になるでしょうね。
 
三滝ダム以前のバットレスダムは洪水吐が堤体本体と分離する形で建設されてきましたが、三滝ダムで初めて堤体に接続する形で洪水吐が設置されました。
傘下に置いた中国合同電気の技術を生かしながら、両側に洪水吐を設置するという新しい姿で最後に花を咲かせたバットレス。
三滝ダムはバットレス最終形と言っても過言ではないでしょう。
 
追記
三滝ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに14万7000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1673 三滝ダム (1390)
鳥取県八頭郡智頭町芦津
千代川水系北股川
23.8メートル
82.5メートル
178千㎥/158千㎥
中国電力(株)
1936年
◎治水協定が締結されたダム

佐冶川ダム

2018-10-15 20:19:15 | 鳥取県
2018年10月8日 佐冶川ダム
 
佐治川ダムは鳥取県鳥取市佐冶町尾際の千代川水系佐冶川源流部にある鳥取県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省の補助を受けて建設された補助治水ダムとして1971年(昭和46年)に竣工しますが、1983年(昭和58年)に鳥取県企業局佐冶発電所が増設され多目的ダムとなりました。
現在は佐冶川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、鳥取県企業局佐冶発電所での最大5000キロワットのダム水路式発電を目的としています。
 
佐冶川ダムは国道482号線沿いにあり、今回は岡山県の恩原ダムから辰巳峠を越え佐冶川ダム上流側からアプローチしました。
国道を進むとダム湖越しに佐冶川ダムの上流面が見えてきます。
クレストにはラジアルゲートが1門、右岸にインクラインと艇庫、左岸に佐冶発電所への取水塔があります。
 
佐冶発電所の取水塔
1983年(昭和58年)に発電所が増設されました。
 
ダム下へと回ります。
弥留気(やるき)地蔵の脇を進むとちょうどダム正面に出ます。
放流設備としてクレストにラジアルゲート1門、コンジットゲート2門、ホロージェットバルブ1条を装備しています。
注目すべきはその配置でコンジットゲート機械室の屋根がクレストゲートのジャンプ台式減勢工となっています。
 
コンジットゲートおよびバルブ操作室
左右に高圧ラジアルゲートが2門、中央にホロージェットバルブがあります。
 
右岸天端脇にあるダム名及び諸元碑。
 
下流面
コンクリートの色が異なり、導流壁が改修によってかさ上げされているのがわかります。
 
天端から導流部と減勢工。
 
アングルを変えて。
 
ダム湖は『名馬湖』
総貯水容量は231万立米で、県営の多目的ダムの貯水池としてはずいぶん小ぶりです。
 
上流面
堤体のかなり上まで水の跡があり先日の台風の際に目いっぱい貯め込んだことが伺えます。
 
コンジット操作室の屋根の上のジャンプ台は一見の価値あり、なかなかいいダムです。
 
追記
佐治川ダムには147万6000立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに31万3000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1682 佐冶川ダム(1389
鳥取県鳥取市佐治町尾際
DamMaps
千代川水系佐冶川
FNP
46.5メートル
105メートル
2310千㎥/1880千㎥
鳥取県県土整備部
1971年
◎治水協定が締結されたダム