ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

鳴子ダム

2024-09-26 08:00:00 | 宮城県
2016年4月 2日 鳴子ダム
     5月 4日
2024年4月25日
     7月28日
 
鳴子ダムは宮城県大崎市鳴子温泉の北上川水系江合川にある国土交通省東北地方整備局が管理する多目的のアーチ式コンクリートダムです。
東北地方では1947年(昭和22年)のカスリーン台風をはじめ毎年のように甚大な水害が発生する一方、戦後の食糧難や復興の遅れなど諸課題が山積していました。
これを受け、1950年(昭和25年)に成立した『国土総合開発法』に依り北上川流域での治水・灌漑・発電を目的とした北上特定地域総合開発計画(KVAが着手します。
これに併せて北上川の主要支流である江合川でも建設省(現国土交通省)直轄事業による多目的ダム建設が着手され1958年(昭和33年)に竣工したのが鳴子ダムです。
鳴子ダムは特定多目的ダム法に基づいて建設され、江合川の洪水調節(最大700立米/秒の洪水カット)、江合川流域9000ヘクタールへの新規灌漑用水の供給、東北電力鳴子発電所での最大1万8700キロワットのダム水路式発電を目的としています。
鳴子ダムは国内3例目のアーチ式コンクリートダムとして建設されましたが、それまで2例はいずれも米国をはじめとした海外からの援助や技術指導の下で建設されました。
鳴子ダムは日本人技術者のみで建設した初のアーチダムとして高く評価され日本ダム協会により日本100ダムに選ばれているほか、2016年(平成28年)には土木学会選奨土木遺産に選定されました。
 
鳴子ダムには2016年4月2日に初訪しましたが、この時は天端が開放されておらず同年5月4日の『すだれ放流』イベントに合わせて再訪しました。
さらに、2024年(令和6年)の『すだれ放流』の際に8年ぶりに訪問しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
またすだれ放流の詳細については『鳴子ダムすだれ放流』の項をご覧ください。

国道108号線沿いのダムの下流350メートルほどに駐車場があります。
駐車場から左岸の管理道路を進むと正面に鳴子ダムが姿を現します。
(2024年4月25日)


2016年(平成28年)に土木学会選奨土木遺産に選定されました。
こちらはそのプレート。
(2024年4月25日)

 
ダムサイトには交換されたハウエルバンガーバルブが展示されています。
(2016年5月4日)

 
さらに進むと、鳴子ダムの全容が姿を見せます。
2024年(令和6年)のすだれ放流はゴールデンウィーク前の平日三日間の開催です。初日、二日目はあいにくのお天気でしたが、訪問した三日目は絶好のお天気。
ダム下には虹がかかっています。
(2024年4月25日)

 
クレストには非常用洪水吐となる自由越流頂が8門
最大放流能力は998立米/秒
(2024年4月25日)
 
 
未明にまとまった雨が降り水位が上昇したため、クレストからのすだれ放流のほか低水放流設備であるコンジットバルブからも放流しています。
コンジットバルブはハウエルバンガーバルブで最大放流量は18.4立米/秒。
(2024年4月25日)

 
アングルを変えて
減勢工には円形のデフレクターがあり、越流した水を左岸側に寄せます。
(2024年4月25日)

 
こちらはバルブ放流のない2016年(平成28年)のすだれ放流の写真。
(2016年5月4日)


同じアングルで2024年(令和6年)の写真。
日差しが入ると美しい。
(2024年4月25日)


右岸から
写真右手の縦長の構造物はインクラインで定員は4人、最大斜度は60度もあるそうです。
一度乗ってみたい。
(2016年5月4日)

 
かつてはすだれ放流に合わせて鯉のぼりが張られていました。
奥の白い建物が管理所。
(2016年5月4日)

 
こちらが常用洪水吐となるトンネル洪水吐で最大放流量は750立米/秒。
堤体が薄いため堤体に常用洪水吐を作ることができず、結果として日本初のトンネル洪水吐が採用されました。
現在の洪水吐ゲートは2002年(平成14年)の施設改良事業で改修されたもので、新たに予備ゲートが創設されています。
(2016年5月4日)


ダム左岸高所の国道から俯瞰。
こちらは放流のない初回訪問時の写真。
(2016年4月2日)

 
こちらは2024年(令和6年)の写真。
(2024年4月25日)

ダム湖の総貯水容量は5000万立米、有効貯水容量3500万立米
近年の多目的ダムに比べて堆砂容量が多く配分されています。
右奥に見えるのが東北電力鳴子発電所の取水口。
ダム湖に発電容量の配分はなく利水従属発電となります。
(2016年4月2日)

 
上流面
左手の建屋はトンネル洪水吐ゲート。
(2016年4月2日)


自由越流頂とトンネル洪水吐ゲートの間に小さなゲートが二つあります。
右手はコンジットバルブの取水ゲートで予備ゲートが見えます。
左手は坂見堰取水塔でダムから発電所放流口までの農地への灌漑用取水工です。
(2016年4月2日)
 
 
東北電力鳴子発電所
最大出力1万8700キロワット
ダムに発電容量の配分はなく利水従属発電となります。
 
(追記)
鳴子ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0290 鳴子ダム(0289)
宮城県大崎市鳴子温泉
北上川水系江合川
FAP
94.5メートル
215メートル
50000千㎥/35000千㎥
国土交通省東北地方整備局
1958年
◎治水協定が締結されたダム


2 コメント

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おはようございます (tibineko)
2024-09-26 09:44:04
「すだれ放流」とは・・言いえて妙!!

まっちさんが見せてくれる「水」はどれも神秘的で
想像力を掻き立てられます

すでに30度を超した朝のひと時
涼やかな画像にしばしの涼を楽しませていただきまし😊
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tibinekoさま (まっち)
2024-09-27 11:10:43
もともとすだれ放流はGW中の観光イベントの一環も兼ねて行われていました。
ただ認知度が高まるにつれて来場者が急増。
数年前にライトアップ放流を実施したときは駐車場のキャパが足りず国道が大渋滞となり近接する鳴子温泉の宿泊客が宿に到達できないという事態を招きました。
以来、GW前の平日開催に変更しました。
全国的にダムのイベントを観光の一助にしようという試みが増えていますが、ここはそれが行きすぎて観光の障壁になってしまったという珍しいケースになりました。
何事も過ぎたるは…
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