ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

セバ谷ダム

2016-06-06 10:20:00 | 長野県
2016年6月4日 セバ谷ダム
 
セバ谷ダムは長野県松本市安曇の信濃川水系犀川右支流セバ川にある東京電力リニューアブルパワー(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
水量豊富で急流河川である梓川上流部では戦前から複数の事業者によって電源開発が進められてきましたが、セバ谷ダムもそんな発電施設の一つで1928年(昭和3年)に湯川発電所の調整池として京浜電力によって建設されました。
日本発送電による接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により東京電力が事業継承しました。
湯川や梓川で取水された水がいったん当ダムに貯留されたのち湯川発電所に送られ最大1万7400キロワットの水路式発電を行っています。
セバ谷ダムは犀川水系で最初に建設されたハイダムであり、且つ最上流部にあるハイダムとなっています。
 
ダムへは車道は通じておらず、最寄りの県道から標高差200メートルの徒歩となります。
 
奈川渡ダムから国道158号線を上高地方面に向かい、沢渡~白骨温泉へ向かう県道300号に入ります。
ダムへの巡視路入口付近の落石の心配のない路肩に車を止めます。
 
橋を渡って巡視路に入ります。
 
エゾハルゼミの大合唱の中、照葉樹林を登ってゆきます。
 
巡視路入口から登ること約30分、杉の植林になってくると瀬音が聞こえてきます。
 
ようやく目指すセバ谷ダムに到着です。
手前は余水路、奥に曲線状の堤体が見えます。
 
余水路を見ながらダム湖の上流側を歩いてみます。
 
アーチに見えますが型式は重力式コンクリート。
曲線重力式という珍しいダムです。
 
ダム湖上流から
 
いったん引き返し堤体を見学します。
これは余水吐。
コンクリートが新しく改修の跡が見られます。
 
天端を進みます。
ゆるやかな曲線を描いていますが型式はAやGAではなくGです。
 
ダム湖のインレットです。
左は梓川上流及び白骨温泉から来る導水路、右はセバ川本流です。
白骨温泉からの水のせいか多少硫黄臭が漂います。
 
堤体直下。
もともとセバ谷にある滝をせき止めて作ったダムのようです。
 
 
排砂ゲートと書かれています。
ゲートを開けても落ちるのは先ほどの谷底です。
 
左岸から
 
左岸に取水口がありここから湯川発電所へと水が送られます。
 
巡視路はよく整備され標高差200メートル強の山道も登山をしていれば全く問題のない行程です。
とはいえ、建機や重機がない時代、人力だけで1年強の工期で1000メートルを超える山中にこのようなダムを作り上げた成果には頭が下がるばかりです。
 
聞こえるのは水の瀬音とエゾハルゼミの大合唱ばかり。
いつの間にか蝉の声に慣れ瀬音だけが響きます。
芭蕉の句を借りれば『閑さやダムにしみ入る蝉の声』
立ち去りがたい気持ちは山々でしたが、先の予定もあるので後ろ髪をひかれる思いで山を下りました。
 
追記
セバ谷ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0982 セバ谷ダム(0433)
長野県松本市安曇
信濃川水系セバ川
22.7メートル
42.4メートル
58千㎥/52千㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1928年
◎治水協定が締結されたダム

奈川渡ダム

2016-06-06 10:10:00 | 長野県
2016年6月4日 奈川渡ダム
 
奈川度ダムは左岸が長野県松本市安曇、右岸が同市奈川の信濃川水系梓川にある東京電力リニューアブルパワー(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
北アルプスを水源とし水量豊富で急流が続く梓川上流部では戦前から梓川電力や京浜電力による電源開発が進められてきました。
戦後梓川の発電事業を継承した東京電力は、高度成長による電力需要増大に対処するために1961年(昭和36年)より梓川に3基のアーチダムと2基の混合揚水式発電所の建設事業に着手、それぞれ1969年(昭和44年)に竣工し最大86万8000キロワットの発電施設が誕生しました。
このうち最上流部に建設されたのが奈川度ダムで当ダムを上部池、水殿ダムを下部池とした安曇発電所で最大62万3000キロワットの混合揚水式発電を行っています。
またこの電源開発事業に合わせて梓川下流域では農水省による国営中信平土地改良事業が着手され、灌漑施設や耕地整理などが行われました。これらの灌漑用水は既得取水権であり東京電力の各ダムに貯水容量の設定はありませんが、ダムの建設と発電所の稼働により梓川の水位が安定したメリットを大いに享受しています。
梓川のように同一河川に3連のアーチダムが連続するのはわが国には他に例がありません。
さらに奈川度ダムの堤高155メートルは完成当時はアーチダムとしては黒部ダムに次ぐ日本第2位、現在でも第3位の高さを誇り日本ダム協会により『日本100ダム』に選ばれています。
 
国道158号線を西進、水殿ダムを抜けると上高地方面に進むと右手に奈川渡ダムが姿を見せます。
 
トンネル内で県道26号を分けると国道は奈川渡ダムの右岸に飛び出します。
24ミリの広角ではこれが限界です。
 
堤体直下に安曇発電所の建屋が見えます。
扇形の建屋はダム式発電の1・2号建屋です。
 
右岸お山にへばりついているのがダム水路式発電及び混合揚水発電を行う3~6号建屋です。
発電所上部の岩盤補強や山留めの造作がすごい。
 
左岸バス停奥には発電所の改修等で利用されるガントリークレーンが鎮座。
 
左岸から
 
改めて右岸側の岩盤補強や山留めを見てみます。
宇宙戦艦ヤマトに出てくる宇宙要塞のようです。
 
天端は国道158号線が通っており、ハイシーズンにはダムの天端で渋滞も起きます。
左手は閉館中のTEOCO館。
右岸湖岸に3~6号機の取水口があります。
 
ダム直下に発電所があるためダムは非越流式
左岸に洪水吐がありトンネル式導水路で放流されます。
 
右岸に戻りプラント跡の展望台から俯瞰してみます。
堤体中央部に1~2号機の取水口があります。
 
展望台側にもガントリークレーンが置かれています。
こちらは3~6号機の取水ゲート交換用。
 
追記
奈川度ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1018 奈川渡ダム(0432)
左岸 長野県松本市安曇
右岸     同市奈川
信濃川水系梓川
155メートル
355.5メートル
123000千㎥/94000千㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1969年
◎治水協定が締結されたダム

水殿ダム

2016-06-06 09:45:00 | 長野県
2016年6月4日 水殿ダム
 
水殿(みどの)ダムは長野県松本市安曇の信濃川水系梓川にある東京電力リニューアブルパワー(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
北アルプスを水源とし水量豊富で急流が続く梓川上流部では戦前から梓川電力や京浜電力による電源開発が進められてきました。
戦後梓川の発電事業を継承した東京電力は、高度成長による電力需要増大に対処するために1961年(昭和36年)より梓川に3基のアーチダムと2基の混合揚水式発電所の建設事業に着手、それぞれ1969年(昭和44年)に竣工し最大86万8000キロワットの発電施設が誕生しました。
3基のダムの中間に建設されたのが水殿ダムで当ダムを下部池、奈川度ダムを下部池とした安曇発電所3~6号機で最大41万2000キロワットの混合揚水式発電を、さらに当ダムを上部池、稲核ダムを下部池とした水殿発電所で最大24万5000キロワットの混合揚水式発電を行っています。
一つのダムが二つの揚水発電の上部、下部貯水池として機能するのは、ここと中部電力の富永ダムだけで非常に珍しいケースとなっています。
 
稲核ダムから国道158号線を上高地方面に走り、稲核集落を過ぎると水殿発電所への道が分かれます。
ここを下って行くダムと正対できます。
向って左手にジャンプ台が見えます。
 
いったん国道に戻り、上高地方面へ進むと道の駅の手前でダムへ向かう道が分かれています。
右岸ダムサイトは公園として整備され、天端も自由に歩くことができます。
右手に2門のラジアルゲート、対岸にプラント跡が見えます。
 
ジャンプ台式洪水吐を見下ろします。
 
下流側からゲートを見てみます。
 
ラジアルゲートは上部に切れ込みがありゲート上部を越流させる越流式ラジアルゲート。
 
天端は歩行者は自由に立ち入りできます。
 
堤体直下に混合揚水発電を行う水殿発電所があります。
 
ダムの直下は稲核ダムのダム湖です。
水殿発電所はこの湖を下部池として揚水発電を行っています。
 
左岸のガントリークレーン。
 
左岸からダムを眺めます。
アーチダムとジャンプ台式洪水吐の組み合わせと言えば宮崎の上椎葉ダムや一ツ瀬ダムがありますが、片側だけに設置されているのはここだけじゃないでしょうか?
 
国道を奈川渡ダム方面に走ると上流からダムを見ることができました。
 
 
追記
水殿ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1022 水殿ダム(0431)
長野県松本市安曇
信濃川水系梓川
95.5メートル
343.3メートル
151000千㎥/4000千㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1969年
◎治水協定が締結されたダム

稲核ダム

2016-06-06 09:15:00 | 長野県
2016年6月4日 稲核ダム
 
稲核(いねこき)ダムは長野県松本市安曇の信濃川水系梓川にある東京電力リニューアブルパワー(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
北アルプスを水源とし水量豊富で急流が続く梓川上流部では戦前から梓川電力や京浜電力による電源開発が進められてきました。
戦後梓川の発電事業を継承した東京電力は、高度成長による電力需要増大に対処するために1961年(昭和36年)より梓川に3基のアーチダムと2基の混合揚水式発電所の建設事業に着手、それぞれ1969年(昭和44年)に竣工し最大86万8000キロワットの発電施設が誕生しました。
3基のダムの最下流に建設されたのが稲核ダムで当ダムを下部池、水殿ダムを上部池とした水殿発電所で最大24万5000キロワットの混合揚水式発電を行うほか、当ダムから約2.7キロの導水路で竜島発電所に送水し最大3万2000キロワットのダム水路式発電を行っています。
さらに1999年には河川維持放流を利用した稲核発電所で最大510キロワットの小水力発電が開始されました。
 
国道158号線の稲核橋からちょうど正面にダムを見ることができます。
堤高60メートルと3ダムの中では最も低くなっていますが、3基の中で唯一クレストにゲートを装備しておりダムらしい形状となっています。
手前はダム建設で廃道となった旧稲核橋。
 
 
クレストにはローラーゲート6門装備。
 
少しアングルを変えます。
 
ハウエルバンガーバブルです。
バルブの脇に見える細い管は稲核発電所への導水管です。
 
堤体まで上がってきました。
天端は立ち入り禁止となっています。
 
ゲート部分をズームアップします。
 
さらに上流側に回り込んでみます。
このアングルで見るとドーム型アーチであるとよくわかります。
 
追記
稲核ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1019 稲核ダム(0430)
長野県松本市安曇
信濃川水系梓川
60メートル
192.8メートル
10700千㎥/6100千㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1968年
◎治水協定が締結されたダム

沓沢池

2016-06-06 09:00:00 | 長野県
2016年6月4日 沓沢池
 
沓沢池は長野県塩尻市洗馬の信濃川水系小曾部川右支流にあった灌漑・上水目的のアースフィルダムです。
長野県の事業で1953年(周防和28年)に建設され長く奈良井川流域農地の灌漑用水源となってきたほか、1973年(昭和48年)からは塩尻市向けの上水道水源としても活用されました。
しかし、老朽化により堰堤の耐震性に問題があることが判明、代替水源の確保ができたこともあり2018年(平成30年)より池の埋め立て作業が開始され、2020年(平成32年)に埋め立て工事は竣工、沓沢池はは廃止となりました。
沓沢池には2016年(平成28年)6月に訪問、写真はその際のものです。
また諸元等については存続当時のものを記載しています。
 
堤体下流面
時節柄草が伸びています。
 
堤体は立ち入り禁止で天端にも入れません。
 
左岸の洪水吐導流部
 
洪水吐
 
この時点で廃止が決まっており、池の水は抜かれています。
 
竣工記念碑です。
 
上水道水源となっていることから池への立ち入りは厳しく制限されています。
 
1002 沓沢池(0429)
ため池コード
長野県塩尻市洗馬
信濃川水系小曾部川
AW
27.4メートル(ため池データベース 281.1メートル)
140メートル(ため池データベース 145メートル)
918千㎥/918千㎥
奈良井川土地改良区連合
1953年竣工
2020年廃止

古谷ダム

2016-04-18 19:00:00 | 長野県
2016年4月16日 古谷ダム
 
古谷(こや)ダムは長野県南佐久郡佐久穂町大日向の信濃川水系抜井川にある長野県建設部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
群馬県境に源を発し佐久穂町を横断して佐久穂町中心部で千曲川に注ぐ中河川ですが、急流が続くうえに千曲川との合流点手前3キロ地点で大きく蛇行を繰り返すため豪雨のたびに洪水被害をもたらしてきました。
一方佐久地域は内陸性気候のため年間降水量が1000ミリ程度と少なく渇水による干ばつ被害も深刻な問題でした。
そこで長野県が1982年(昭和57年)に抜井川上流部に建設したのが古谷ダムで、抜井川の洪水調節、安定した流量の保持と既得取水権への補給を目的としています。
 
海瀬から国道299号を東進、臼石温泉を過ぎるとすぐ右手に古谷ダムが見えてきます。
 
右岸から。
 
減勢工。
 
天端は車両通行禁止
右岸に管理事務所があります。
 
ダム湖
ダム湖が切れると古谷渓谷の峡谷となります。
 
左岸から
クレストは自由越流式洪水吐が4門。
中央にコンジットゲートがあります。
 
左岸には展望台がありダムを俯瞰できます。
 
ここから見るダムはサイズ以上に大きく見えます。
 
ダム竣工時に左岸から堤体直下に下りる遊歩道が作られたようですが、今は立ち入り禁止で利用できません。
ダムを下流側から見える場所を探しましたが残念ながら見つかりませんでした。
 
追記
古谷ダムには160万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに26万6000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1029 古谷ダム(0318)
長野県南佐久郡佐久穂町大日向
信濃川水系抜井川
FN
48[5メートル
162メートル
2200千㎥/1800千㎥
長野県建設部
1982年
◎治水協定が締結されたダム

余地ダム

2016-04-18 15:00:00 | 長野県
2016年4月16日 余地ダム
 
余地ダムは長野県南佐久郡佐久穂町の信濃川水系余地川源流部にある長野県営の多目的重力式コンクリートダムです。
余地川は延長11.8キロの中小河川ですが、急流で蛇行が多いため豪雨のたびに洪水被害をもたらしてきました。
一方佐久地域は内陸性気候のため年間降水量が少なく、渇水による干ばつ被害も頻発していました。
さらに山間部でも下水道が普及したため水需要の増加が見込まれ新たな水源の確保が必要となっていました。
これらの諸課題に対処するために2004年(平成16年)に建設されたのが余地ダムで、抜井川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への補給、旧佐久町地区への上水道用水の供給を目的としています。
ダム湖の総貯水容量は52万3000立米でいわゆる生活貯水池として建設されました。
 
海瀬から国道299号~県道108号を東に進み、ドン詰まりに余地ダムがあります。
右岸の学習広場から
 
天端は歩行者のみ通行可。
 
右岸に管理事務所があります。
 
減勢工
M字の導流壁が特徴的。
 
小さな貯水池、山を越えれば群馬との県境です。
 
左岸から
 
下流からもアプローチできますが、堤体直下は立入禁止です。
下から見るとあちこちの自治体ダムでよくみられるデザインです。
 
ダムの先の余地峠は道路が整備されておらずこのダムで県道はどん詰まり。
ダム湖右岸は公園になっていますが、ほとんど利用されていないようです。
ダムの下流は千本桜と名付けられた桜がずらっと植樹されています。
花にはまだ早かったですが、満開になればダムに足を延ばす人も増えるのでしょう。
 
追記
余地ダムには26万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに10万2000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
3081 余地ダム(0317)
長野県南佐久郡佐久穂町余地
信濃川水系余地川
FNW
42メートル
147メートル
523千㎥/397千㎥
長野県建設部
2004年
◎治水協定が締結されたダム

香坂ダム

2016-04-18 13:00:00 | 長野県
2016年4月16日 香坂ダム
 
香坂ダムは長野県佐久市香坂の信濃川水系香坂川にある農地防災目的のロックフィルダムです。
農林省(現農水省)の補助を受けた長野県の農地防災事業により1972年(昭和47年)に竣工、完成後は作詞が管理を受託し、香坂川流域の農耕地約250ヘクタールの防災を目的に運用されています。
 
岩村田から県道138号を東に向かうと香坂ダムが右手に見えてきます。
左岸に洪水吐があります。
 
洪水吐導流部と減勢工
右手は取水棟からの水路です。
 
天端は車両通行可能
左岸に取水設備、管理事務所、洪水吐があります。
 
防災ダムということでダム湖はカラカラ。
 
堤体はわずかに湾曲しています。
 
ダムの下流に立ち入ることはできますが、とくに公園として整備されている節はありません。
 
洪水吐と取水棟。
 
洪水吐と小さな管理事務所。
 
追記
香坂ダムには農地防災容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により最大87万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1023 香坂ダム(0317)
長野県佐久市香坂
信濃川水系香坂川
38.5メートル
184メートル
1050千㎥/870千㎥
佐久市
1972年
◎治水協定が締結されたダム

湯川ダム

2016-04-18 12:00:00 | 長野県
2016年4月16日 湯川ダム
 
湯川ダムは左岸が長野県北佐久郡御代田町豊昇、右岸が同町広戸の信濃川水系湯川にある長野県建設部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
碓氷峠に源を発する湯川流域は浅間山の火山堆積物により地質がもろく、湯川は洪水のたびに乱流を繰り返してきました。
一方で内陸性気候のため年間降水量がが少なく、安定した灌漑用水の確保も大きな課題となっていました。
これらの課題に対処するために長野県が1978年(昭和53年)に建設したのが湯川ダムです。
湯川ダムは湯川の洪水調節、安定した河川流量の保持と既得取水権としての流域の灌漑用水への補給を目的としています。
湯川ダムは堤高50メートルに対して堤頂長53メートルと広島県の帝釈川ダムに次いで日本で2番目の縦長ダムで、長方形の赤い2門のラジアルゲートが特徴となっています。
 
湯川の天端は御代田町道になっており、ダムの南側は別荘分譲地、北側は農地です。
右岸に管理事務所と駐車スペースがあります。
 
右岸から減勢工。
 
左岸から減勢工
火山堆積物からなる地質はもろく、浸食による深い谷が続いています。
 
真っ赤なラジアルゲート。
 
天端にはゲート巻き上げ機が置かれ、右岸にインクラインがあります。
 
右岸上流から
縦長の2門のラジアルゲートが特徴です。
 
スライドゲートの左にもう1門ゲートがあるようですが残念ながらよく見えません。
 
下流からダムを眺めることができないのが残念ですが、上流から見ても縦長の赤いラジアルゲートは個性満点です。
 
追記
湯川ダムには245万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに7万1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1025 湯川ダム(0315)
左岸 長野県北佐久郡御代田町豊昇
右岸            広戸
信濃川水系湯川
FN
50メートル
53メートル
3400千㎥/2700千㎥
長野県建設部
1978年
◎治水協定が締結されたダム

金原ダム

2016-04-18 11:00:00 | 長野県
2016年4月16日 金原ダム
 
金原ダムは長野県東御市和の信濃川水系金原川にある長野県営の多目的ロックフィルダムです。
湯の丸山南西麓から千曲川に注ぐ金原川流域は、年間を通して少雨地帯で金原川の安定した水量と上水道水源の確保は至上命題でした。
一方流域は火山堆積物で形成さているため地盤がもろく。いったん洪水が起きると大きな被害をもたらしました。
そこで長野県が金原川上流部に1999年(平成11年)に建設した治水・利水目的のロックフィルダムが金原ダムです。
金原川流域は透水性が高い一方で地下水位が高く、通常の工法でのダム建設は困難でした。
そこで掘削した貯水池全面を土質ブランケットで止水処理する一方、本体のコアゾーンもブランケットに接続しやすいよう傾斜コア型ロックフィルとする独自の工法が採用されました。
 
県道4号から金原川沿いの市道を北上し信州大学の農場を抜けると金原ダムに到着します。
天端は車両進入禁止。
 
上流面
 
右岸の洪水吐と取水設備
 
堤体直下は立ち入り禁止。
天端からは美ヶ原が遠望できます。
 
ダム湖
貯水池は土質ブランケットで止水処理されており、すべてロックフィルとなっています。
 
洪水吐導流部。
 
洪水吐。
 
洪水吐と上流面。
 
一見普通のロックフィルダムですが、実は透水性の高い火山堆積物で構成された土地に対応するために珍しい工法で建設されたダムでした。
なお、ダム下流側は立ち入り禁止で、ダムを下流から一望できる場所が見つかりませんでした。
 
追記
金原ダムには17万1000立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに11万1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
3011 金原ダム(0314)
長野県東御市和
信濃川水系金原川
FNW
36.5メートル
224メートル
388千㎥/277千㎥
長野県建設部
1999年
◎治水協定が締結されたダム

和池

2016-04-18 10:00:00 | 長野県
2016年4月16日 和池
 
和(かのう)池は長野県東御市にある灌漑用アースダムで和水利組合が管理をしています。
東部湯の丸インターから県道4号を北上し、浅間高原ゴルフクラブを過ぎると和集落の手前で和池が見えてきます。
和集落は湯の丸山南西山麓最奥の集落ですが、山中の侘しさはなく清々しい高原の佇まいです。
 
左岸から
近年改修されたようで堤体はすっきりとしています。
 
天端
手前に洪水吐を跨ぐ橋があります。
 
左岸の洪水吐。
 
上流面。
 
下流面は二段になっており、綺麗に刈りこまれています。
 
右岸の斜樋。
 
和池は標高1000メートル近く、ちょっとした高原のリゾートの佇まい。
 
1006 和池(0313)
ため池コード
長野県東御市和
信濃川水系成沢川
16.6メートル(ため池データベース 23.7メートル)
140メートル
80千㎥/80千㎥
和水利組合
1954年

弁天池

2016-04-18 09:00:00 | 長野県
2016年4月16日 弁天池
 
弁天池は長野県東御市の湯の丸高原南麓の丘陵地にある灌漑用アースダムで、東御市所沢川水系土地改良区が管理をしています。
浅間サンライン沿いの道の駅『雷電くるみの里』の東側の道を山手のほうに上って行くと正面に弁天池の堤体が見えてきます。
 
右手にあるのは上水用タンクで弁天池と直接の関係はありません。
 
ダム周辺の桜はこれからが見頃。右岸は東屋もあるプチ公園となっています。
 
上流面。
きれいに刈り払われています。
 
右岸に斜樋と導水路吐口が見えます。
 
水路はカスケード式
実はこの導水路、ダムの西側の河川からサイフォンで汲み上げています。
果樹園の増加で年間を通して水需要が高まったため改修で追加された施設です。
 
洪水吐はトンネル式
洪水吐からは常に越流し、この水は周辺に増えた果樹園に供給します。
 
トンネル式導流部の出口。
 
洪水吐からの水はこの滝を下り用水路に注ぎます。
滝の上には不動明王の石像。
 
ダム右岸には古墳と思しき石室があり、中には男性器と女性器をなぞった石が置かれています。
古墳の石室は現世と黄泉の国との境界で、イザナミ神話を起源とするクナド信仰の原初的形態です。
 
本来貯水の対象だった水田に加えて、果樹園が増加したことで灌漑の目的が変化したようです。
サイフォンで水を汲み上げ常にオーバーフローさせて果樹園に水を供給しています。
もちろん田植え期には取水設備を経由して溜池本来の目的である供給も行います。
 
1005 弁天池(0312)
ため池コード
長野県東御市滋野乙
信濃川水系所沢川
19メートル(ため池データベース 16.3メートル)
130メートル(ため池データベース 122メートル)
112千㎥/112千㎥
東御市所沢川水系土地改良区
1954年

印内耕地整地池

2016-04-18 08:00:00 | 長野県
2016年4月16日 印内耕地整理池
 
印内耕地整地池は長野県佐久市印内、合併前の望月町の北端にある灌漑目的のアースフィルダムです。
大正時代に耕地整地組合(農地所有者の組合団体)によって建設され、現在は御牧ヶ原台地土地改良区が管理をしています。
なお長野県のため池データベースには該当する溜池は登録されていません。
 
左岸から
池の周辺はバブル期に別荘地として開発され、別荘が点在しています。
貯水池奥には望月温泉みどりの村がありその建物が垣間見えます。
 
天端と堤体
下流面は秋に刈り払われたようです。
 
 
ダム湖(悠玄湖)
右上に別荘が見えます。ダム湖奥に竣工碑と取水設備があるようですが、そこへ向かう道は立入禁止でした。
 
天端からは北アルプスが遠望できます。
春霞で鮮明に見えないのが残念。
 
池のすぐ上にフィールドアスレチックののコースがありますが、あまり使われていない雰囲気。
 
ダム便覧によれば普段は水をポンプアップして貯水し、田植え期に利用するというシステムだそうです。
左岸に小さな洪水吐があるとのことですが、気がつきませんでした。
 
3432 印内耕地整地池(0311)
ため池データベース
長野県佐久市印内
信濃川水系大門川
15.4メートル(ため池データベース 2.6メートル
100メートル(ため池データベース 63メートル)
36千㎥/36千㎥
御牧ヶ原台地土地改良区
1922年

美鈴湖

2015-12-14 11:00:00 | 長野県
2015年12月13日 美鈴湖
 
美鈴湖は長野県松本市三才山の信濃川水系女鳥羽川左支流小寺尾川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
起源は16世紀末の安土桃山時代に遡り当初は『芦の田池』と呼ばれていました。
1939年(昭和14年)の大干ばつを契機に池の規模拡大機運が盛り上がり、1941年(昭和16年)に県営女鳥羽用水改良事業が採択され嵩上げ再開発が着手されました。
戦況悪化や戦後の混乱により工事は大きく遅延しますが、1951年(昭和26年)に無事竣工し現在の規模となりました。
さらに2年後の1953年(昭和28年)に美鈴湖と改名、以来管理は松本市が行っています。
貯水容量の大半は山の東側の女鳥羽川からの導水により、さらに当池西側に位置する番場池とも連絡水路で結ばれ一体運用されています。
美鈴湖周辺は浅間温泉や美ケ原に近い立地を生かし各種アウトドア施設が整備され、とりわけ管理釣り場は季節を問わず多くの釣り師が訪れる人気スポットとなっています。
 
美鈴湖の水の流れ
 
下流から
左岸から洪水吐導流部が伸びています。
 
天端は車道。
 
ダム湖は管理釣り場となっており、訪問時はヘラブナ釣り客でにぎわっていました。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
左岸の洪水吐
実質的には河道外貯留のため池のサイズに比べて洪水吐は小ぶり。
 
事前予習不足のため、女鳥羽川からの導水路吐口や番場池への取水口などを確認しないままに終わりました。
機会があれば再訪したいと思います。

0999 美鈴湖(0112)
ため池コード 
長野県松本市三才山 
信濃川水系女鳥羽川左支流小寺尾川
19メートル
174メートル(ため池データベース165メートル)
809㎥/809㎥
松本市
1951年

山口ダム

2015-11-25 06:00:00 | 長野県
2015年11月22日 山口ダム
 
山口ダムは左岸が長野県木曽郡南木曽町吾妻、右岸が同町田立の一級河川木曽川本流にある関西電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した関西電力は戦後の電力不足に対処するため各所で活発な電源開発を進めます。
特に木曽川はでは新規電源開発や既存の発電施設の再開発が積極的に進められ、その一環として1957年(昭和32年)に完成したのが山口ダムです。
当ダムを取水ダムとして同時に建設された山口発電(最大出力4万2000キロワット)が稼働したほか、従来水路式発電を行っていた賎母発電所(最大出力1万6300キロワット)も当ダムを取水ダムとすることで安定した発電が可能となりました。
 
中津川から国道19号を北上し県境の賎母大橋を超えると右手に山口ダムが現れます。
下流の河原に下りダムと正対できます。
 
関西電力ではおなじみブラックのラジアルゲート6門を装備
河川維持放流として1門が開放されています。
左岸(向かって右手)1門だけゲート幅が細く越流高も低くなっています。これが排砂ゲートの役割を担っているようです。
 
右岸上流から。
 
左岸の取水口。
右手が賎母発電所、左手が山口発電所への取水ゲートで、それぞれスクリーンの上に除塵機が並びます。
 
追記
山口ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1009 山口ダム(0058) 
左岸 長野県木曽郡南木曽町吾妻
右岸         同町田立
木曽川水系木曽川
38.6メートル
181.4メートル
3484㎥/1264㎥
関西電力(株)
1957年
◎治水協定が締結されたダム