ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

塩沢ダム

2018-11-30 09:00:00 | 群馬県
2015年12月09日 塩沢ダム
2018年11月23日
 
塩沢ダムは群馬県多野郡神流町の利根川水系神流川左支流塩沢川上流部にある群馬県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで塩沢川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、神流町への上水道用水の供給を目的として1995年(平成7年)に竣工しました。
 
神流町役場の先で国道462号線から県道46号を北上すると塩沢ダムに到着します。
ダム下手前にゲートがありここまで。 
 
河原へ下りる道があったのでそこから遡上するとダム下に到着。
非常用洪水吐としてクレストに自由越流式洪水吐が4門
中央に自由調節式の常用洪水吐が1門、さらに洪水期用常用洪水吐としてオリフィスのローラーゲートが1門あります。
(2018年11月23日)
 
天端には川魚の装飾。(2018年11月23日)
 
減勢工
左手は利水放流設備。(2018年11月23日)
 
ダム湖(蛇神湖)は総貯水容量30万3000立米と溜池なみのサイズ。
貯水池上流部に県道のアーチ橋が架かり、さらにその奥には砂防ダムがあります。
(2018年11月23日)
 
天端は車両通行禁止
管理事務所と取水設備操作室は日本風建屋。
(2018年11月23日)
 
上流面(2018年11月23日)
 
ダム湖直上にある砂防ダム
ダムにとっては貯砂ダムの役割を果たしているようです。
(2018年11月23日)
 
小さなダム湖のため歩いて一周しても30分もかかりません。
右岸湖畔には東屋もあります。
(2018年11月23日)
 
右岸ダムサイトには巨大な陶板。
(2018年11月23日)
 
ダム巡りを始めて一カ月ちょっと、通算100基目のダムが塩沢ダムとなりました。
 
(追記)
塩沢ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0630 塩沢ダム(0100)
群馬県多野郡神流町塩沢
利根川水系神流川左支流塩沢川
FNW
38メートル
157メートル
303千㎥/280千㎥
群馬県県土整備部
1995年
◎治水協定が締結されたダム

矢木沢ダム

2016-10-13 11:01:47 | 群馬県
2016年10月10日 矢木沢ダム 
 
矢木沢ダムは戦前から複数の事業主体によって計画されていましたが、水利権を巡り係争などから実現することはありませんでした。
そんな中1947年(昭和22年)のカスリーン台風により利根川流域では甚大な被害が発生、さらに首都圏への人口集中による水需要の急増を受け1949年(昭和24年)に『利根川改定改修計画』が策定され、1959年(昭和34年)に建設省によって矢木沢ダムが着工されました。
1962年(昭和37年)に水資源開発公団が設立され矢木沢ダム建設事業は公団に継承され、1967年(昭和42年)に竣工、現在は水資源機構が管理を行っています。
 
矢木沢ダムは他の利根川上流8ダムと連携して利根川の洪水調節を行うほか、利根川流域の既得取水権への補給、赤城・榛名山麓での群馬用水を通じた新規開拓農地への灌漑用水の供給、東京都への上水道の供給、東京電力矢木沢発電所で須田貝ダムとの間での最大24万キロワットの揚水式発電を目的としています。
利根川上流8ダムの代表格で関東の水ガメとして水不足の際などは必ず紹介されるほか、矢木沢ダムとともに実施される春の試験放流は『やぎなら放流』として今や群馬県を代表する観光イベントにもなっています。
 
湯檜曽から利根川に沿って県道63号を進み、須田貝ダムから矢木沢ダム管理道路に入ると右手にアーチの堤体が見えてきます。
 
放流イベントでは人がごった返す洪水吐。
 
ダムの型式はアーチですが、右岸はフィルになっています。
 
ダム湖(奥利根湖)
ボートなどのレジャースポットになっています。
 
堤体上流面。
 
洪水吐導流部
洪水吐は堤体とは地山を挟み下って行きます。
 
ゲート。
 
ゲートはローラーゲート2門、奥は管理事務所と資料館。
 
東京電力矢木沢発電所。
須田貝ダムと揚水発電を行っています。
 
24ミリの広角ではアーチの堤体は入りません。
 
天端。
 
0605 藤原ダム(0637)
群馬県利根郡みなかみ町藤原
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
利根川水系利根川
FNAWP
131メートル
352メートル
千㎥/千㎥
水資源機構
1967年
◎治水協定が締結されたダム

須田貝ダム

2016-10-13 09:24:39 | 群馬県
2016年10月10日 須田貝ダム
 
須田貝ダムは群馬県利根郡みなかみ町藤原の利根川と楢俣川の合流地点に建設された東京電力の発電用重力式コンクリートダムで、戦後の電力分割民営化により利根川流域の電力事業を継承した東京電力が1955年(昭和30年)に建設しました。
竣工は建設省の藤原ダムよりも2年早く、利根川本流に建設された最初のダムとなっており当初の名称は『楢俣ダム』でした。
日本最初の地下式水力発電所である須田貝発電所で最大4万6200キロワットの発電を行うほか、1965年(昭和40年)からは矢木沢ダムとの間で揚水式発電をスタート、矢木沢発電所で最大24万キロワットの発電を行います。
 
1990年(平成2年)に楢俣川直上に水資源機構の奈良俣ダムが完成、字は異なるものの同音のダムが近接することから混乱を避けるために地元での呼称であった『須田貝ダム』に名称変更しました。
なお2020年(令和2年)の東京電力ホールディングスの組織改編により須田貝ダム及び関連発電施設はすべて同社の100%子会社である東京電力リニューアブルパワー(株)に移管されました。
 
湯檜曽から県道63号を北上、須田貝で矢木沢ダムへの管理道路に入ると須田貝発電所の前に出て須田貝ダムを垣間見ることができます。
 
さらに矢木沢ダム方面に進むと樹間から須田貝ダムが見えます。
クレストは3門のラジアルゲート。
 
トンネル手前でもダムが見えます。
ダムへ通じる管理道路はもちろん立ち入り禁止。
 
以前は須田貝発電所に東京電力のPR館があり地下発電所の見学会もおこなわれていましたが、原発事故による東電の業績悪化で閉鎖されてしまいました。
人気の『やぎなら』のハザマでちょっと忘れられたような須田貝ダムですが、いつの日かPR館が復活し発電所の見学会が再開される日が来ることを願っています。 
 
0602 須田貝ダム(0639)
群馬県利根郡みなかみ町藤原
利根川水系利根川
72メートル
194.4メートル
東京電力リニューアブルパワー(株)
1955年

奈良俣ダム(再)

2016-10-12 20:34:38 | 群馬県
2016年10月10日 奈良俣ダム(再)
 
1947年(昭和22年)のカスリーン台風により利根川流域では甚大な被害が発生し、1949年(昭和27年)に『利根川改定改修計画』が、1962年(昭和37年)に『利根川水系水資源基本計画』が策定され、建設省と水資源開発公団により利根川水系の洪水調節及び利水を目的としたダムが7基建設されました。
しかし1970年代に入っても首都圏の人口増加や産業集積は留まる事を知らず水需要は増加の一途をたどりました。
そこで水資源開発公団は利根川の支流楢俣川に新たなダムの建設を決定、1973年(昭和48年)に着工し1990年(平成2年)に完成したのが奈良俣ダムです。
奈良俣ダムは堤体積1310万立方メートルは徳山ダムに次いで第2位、堤高158メートルは第4位の規模を誇る日本屈指の巨大ロックフィルダムです。
奈良俣ダムは他の利根川水系ダムと連携しての利根川の洪水調節、既得取水権の補給、千葉県の両総用水への灌漑用水の供給、首都圏及び群馬県への上水道・工業用水の供給を目的とするほか、群馬県企業局奈良俣発電所で最大1万2800キロワットの発電を行っています。
 
2019年(令和元年)に『藤原・奈良俣ダム再編再生事業』が採択され2022年(令和4年)竣工をめどに事業が着工されています。
具体的には藤原ダムの利水容量239万立米と奈良俣ダムの洪水調節容量239万立米を振り替えることで、藤原ダムの洪水調節容量を増強し、より効率的な治水運用の実施を目的としています。
これに伴い奈良俣ダムでは夏期制限水位の上昇に対応するための常用洪水吐の改良、藤原ダムでは放流設備(バルブ)の副ゲートの設置が行われます。
 
湯檜曽から利根川に沿って県道63号を進むと左手に奈良俣ダムが見えてきます。
堤高158メートルの巨大ロックフィルダムです。
 
堤体脇にある仮排水路。
 
洪水吐。
 
群馬県企業局奈良俣発電所。
 
ダムサイトに上がってきました。
洪水吐は自由越流式2門とローラーゲート1門。
 
竣工記念碑。
 
洪水吐から。
 
天端。
右奥の建物はヒルトップならまた。
 
ダム湖(ならまた湖)
左岸に管理事務所とインクラインがあります。
ダム湖背後は尾瀬の笠ヶ岳と至仏山。
 
ダム湖右岸の奈良俣ダムの銘とモニュメント。
 
下流面。
 
(追記)
奈良俣ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
3707 奈良俣ダム(再)0638)
群馬県利根郡みなかみ町藤原
利根川水系楢俣川
FNAWIP
158メートル
520メートル
90000千㎥/85000千㎥
水資源機構
2022年
◎治水協定が締結されたダム
-----------------
0623 奈良俣ダム(元)
群馬県利根郡みなかみ町藤原
利根川水系楢俣川
FNAWIP
158メートル
520メートル
90000千㎥/85000千㎥
水資源機構
1990年

藤原ダム(再)

2016-10-12 15:28:51 | 群馬県
2016年10月9日 藤原ダム(再) 
 
1947年(昭和22年)のカスリーン台風により利根川流域では甚大な被害が発生し、1949年(昭和24年)に利根川本流及び主要支流に多目的ダムを建設して連携して洪水調節に当たるとともに、電力需要への補給や灌漑用水確保を目的とする『利根川改定改修計画』が策定されました。
この計画に基づき1958年(昭和33年)に建設省関東地方建設局により利根川本流に建設されたのが藤原ダムで、利根川上流8ダム最初のダムであり利根川流域でも鬼怒川の五十里ダムに次いで古いダムとなっています。
 
藤原ダムは他の利根川上流ダム群と連携しての利根川の洪水調節、利根川流域地域の農地への既得取水権の補給を目的とするほか、東京電力藤原発電所で最大2万2200キロワットの発電を行っています。
さらに1982年(昭和57年)からは東京電力が玉原高原に建設した玉原ダムとの間で揚水式発電を開始し、玉原発電所で最大120万キロワットの発電を行っています。
 
2019年(令和元年)に『藤原・奈良俣ダム再編再生事業』が採択され2022年(令和4年)に藤原ダム(再)が竣工しました。
具体的には藤原ダムの利水容量239万立米と奈良俣ダムの洪水調節容量239万立米を振り替えることで、藤原ダムの洪水調節容量を増強しより効率的な治水運用の実施が可能となりました。
これに伴い藤原ダムでは放流設備(バルブ)の副ゲートの設置、奈良俣ダムでは夏期制限水位の上昇に対応するための常用洪水吐の改良が実施されました。
 
湯檜曽から利根川に沿って県道63号を進むと藤原ダムに到着します。
ダム手前の分岐を下るとダムの直下に出ます。
クレストは3門のローラーゲート。
 
副ダムとともに。
 
県道63号から。
 
ゲートの左には発電用取水設備があります。
 
下流面。
1950年代のダムらしく直線的な導流壁。
 
ゲートビアは豪雪地帯ということで被覆されています。
 
導流面と減勢工。
左手は東京電力藤原発電所です。
写真では見えませんが写真奥の橋の先にホロージェットバブルがあります。
 
右岸には取水塔、管理事務所、インクラインが並びます。
この取水塔で取水された水はホロージェットバルブで放流されます。
 
スノーシェッドの下の建物は玉原発電所の放水ゲート。
 
ダム湖(藤原湖)上流から。
 
(追記)
藤原ダムには洪水調節容量が設定されていますが、豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0605 藤原ダム(元)(0637)
群馬県利根郡みなかみ町藤原
利根川水系利根川
FNP
95メートル
230メートル
52490㎥/35890㎥
国交省関東地方整備局
1958年
-------------
3708 藤原ダム(再)
群馬県利根郡みなかみ町藤原
利根川水系利根川
FNP
95メートル
230メートル
52490㎥/35890㎥
国交省関東地方整備局
2022年
◎治水協定が締結されたダム

小森ダム

2016-10-12 14:07:04 | 群馬県
2016年10月9日 小森ダム
 
小森ダムは群馬県利根郡みなかみ町の利根川本流にある東京電力の発電用重力式コンクリートダムで、1958年(昭和33年)に建設されここで取水された水は約10キロの導水路で上牧発電所に送られ最大3万1500キロワットの発電を行っています。
 
小森ダムは湯檜曽から藤原ダムへ向かう県道63号沿いにあります。
ダムの敷地は立ち入り禁止のためここから見るのみです。
堤体は全面越流式、対岸に取水口が見えます。
 
対岸右奥に上牧発電所への導水路呑口が見えます。
 
 
帰宅後、下流から対岸へ渡り道があり左岸からもダムを見ることができると知りました。
予習不足のなせるわざですが、奥利根ダム群はいずれ再訪することもあると思うので、その際にアプローチしてみようと思います。
 
0598 小森ダム(0636)
群馬県利根郡みなかみ町
利根川水系利根川
33メートル
107.4メートル
東京電力リニューアブルパワー(株)
1958年

相俣ダム

2016-10-12 13:29:08 | 群馬県
2016年10月9日 相俣ダム 
 
1947年(昭和22年)のカスリーン台風により利根川流域では甚大な被害が発生し、1949年(昭和24年)に利根川本流及び主要支流に多目的ダムを建設して連携して洪水調節に当たるとともに、電力需要への補給や灌漑用水確保を目的とする『利根川改定改修計画』が策定されました。
利根川支流の赤谷川では群馬県が『赤谷川総合開発事業』として1952年(昭和27年)から赤谷ダムを着工、1956年(昭和31年)に本体が完成しました。ところが試験湛水中にダム左岸から漏水が発生、以降建設省の管理下に置かれ3年の歳月をかけて遮水処理が完了し1959年(昭和34年)に相俣ダムは無事竣工しました。
竣工以来建設省が管理下に置き、結果的に相俣ダムは藤原ダムに続く利根川上流8ダムの一つとなり現在に至っています。
 
相俣ダムは他の利根川上流ダム群と連携しての利根川の洪水調節、利根川流域地域の農地への既得取水権の補給を目的とするほか、群馬県企業局相俣発電所で最大7700キロワット、さらに下流の桃野発電所で最大6200キロワットの発電を行っています。
また1998年(平成10年)には河川維持放流を利用した相俣第二発電所で最大120キロワットの小水力発電を行っています。
 
月夜野から国道17号を北上、猿ヶ京温泉の手前に相俣ダムがありダム周辺は赤谷湖記念公園となっています。
ダム湖左岸のコンクリート遮水工。
試験湛水中にここから漏水が発生、3年の歳月をかけて遮水処理を行い結果的に相俣ダムは建設省が管理することになりました。
 
ダム湖(赤谷湖)。
ダムの上流は猿ヶ京温泉街です。
晴れていれば谷川連峰も一望できるのですが・・・・。
 
左岸のインクライン。
 
特徴的な発電所の取水口。
 
ダム上流面。
 
天端。
 
洪水吐導流部と減勢工。
 
縦長のローラーゲート。
 
左岸から。
ダムの全容を一望できることはできません。
 
最初はコンクリートの遮水工をフィルダムだと思い、てっきりコンバインドかと思いましたが、実施にはダムはこの部分だけで堤高67メートル、堤頂長80メートルの縦長ダムになっています。 
 
0609 薗原ダム(0635)
群馬県利根郡みなかみ町相俣
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
利根川水系赤谷川
FNP
67メートル
80メートル
千㎥/千㎥
国交省関東地方整備局
1959年
◎治水協定が締結されたダム

中之条ダム

2016-10-12 12:12:10 | 群馬県
2016年10月9日 中之条ダム
 
中之条ダムは群馬県吾妻郡中之条町の利根川水系吾妻川左支流四万川にある群馬県企業局が管理する多目的アーチダムです。
群馬県企業局の中之条発電所の取水及び吾妻川流域の灌漑用水の水源として1960年(昭和35年)に建設され、群馬県企業局中之条発電所で最大1万1000キロワットの発電を行い発電所からの放流水は灌漑用水として活用されています。
また1998年(平成10年)には河川維持放流を利用した小水力発電所である中之条ダム発電所も稼働しています。
 
中之条ダムは国道353号線沿いにありダムのそばに駐車場があります。
左岸から
前夜の雨でもしかしたら放流してるかも?と期待しましたが残念ながら放流はなし。
 
クレストはローラーゲートが5門
左岸に土砂吐があります。
 
土砂吐
排砂ゲートみたいなもんでしょうか?
 
減勢工
逆V字のリブ。
 
天端は軽車両通行可。
ダム湖がカヌーやボートで利用され乗り場が右岸にあるためめ車両の通行がOKなんだそうです。
 
中之条発電所への取水口。
 
ダム湖(四万湖)
晴れていればコバルトブルーに輝くそうですがあいにくの曇天で・・・・。
 
河川維持放流を利用した小水力発電の中之条ダム発電所。
 
 
上流から
こちらから見ると湖面の青さがちょっとわかりますね。

(追記)
中之条ダムはは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0607 中之条ダム(0634)
群馬県吾妻郡中之条町四万
利根川水系四万川
AP
42メートル
118.2メートル
1180㎥/250㎥
群馬県企業局
1960年
◎治水協定が締結されたダム

品木ダム

2016-10-12 06:54:00 | 群馬県
2015年10月10日 品木ダム
2016年10月09日 
 
品木ダムは群馬県吾妻郡中之条町入山の利根川水系湯川にある多目的重力式コンクリートダムです。
湯川は利根川水系吾妻川支流白砂川の三次支流で、支流の大沢川・矢沢川ともども火山成分の影響で強酸性の水質となっており、湯川が流入する吾妻川では酸性水の影響で灌漑用水としての利用が困難となるほか発電事業にも支障をきたしてきました。
群馬県は1957年(昭和32年)より吾妻川水系の酸性水を中和するための『吾妻川総合開発事業』に着手し、1965年(昭和40年)に草津温泉直下の湯川に草津中和工場を、湯川と大沢川・谷沢川の合流地点に品木ダムを建設しました。
草津中和工場で酸性水に大量の石灰を混入して中和し、品木ダムのダム湖である『上州湯の湖』で炭酸カルシウムにより中和化を促進するとともに石灰成分の撹拌・沈殿を行い上澄み水を下流に流すというシステムとなっています。
運用開始後、この事業は建設省に移管されさらに支流の大沢川および谷沢川の中和を行うための香草中和工場が完成し、湯川水系の酸性水中和事業は一段落を迎えることになります。
このように品木ダムは他に例を見ない『酸性水の水質改善』(ダムの目的としては不特定利水)を目的とするほか、上州湯の湖の上澄み水の放流を利用して群馬県企業局湯川発電所で最大8200キロワットのダム水路式発電を行っています。
なお品木ダムは国交省直轄管理ながら、建設省の補助を受けた群馬県の事業で建設されたため補助多目的ダムと言う括りになります。
 
草津温泉から国道292号線を東進し、諏訪の原で『品木ダム』の標識に従って分岐を左手に取れば品木ダムに到着します。
右岸から
ゲート操作室や円筒形の階段などおよそダムらしくない斬新なデザインとなっています。
 
中和事業の説明板。
 
右岸管理事務所と湯川発電所の取水口。(2016年10月9日)
 
ゲートはローラーゲートが2門。
右側のゲートにはフラッシュボードがついています。(2016年10月9日)
 
左側のゲート
導流面中央にコンジットが見えます。(2016年10月9日)
 
天端は車道になっており、草津温泉から花敷温泉への近道になっているせいかそこそこ交通量があります。
(2016年10月9日)
 
堤体下流面。(2016年10月9日)
 
ダム湖(上州湯の湖)
中和された石灰成分の影響で美しいエメラルドグリーンの湖面となっています。(2016年10月9日)
 
ダム湖最奥の山は草津白根山です。
石灰成分の沈殿により堆砂が進むため定期的に浚渫が行われています。
 
左岸上流側から。(2016年10月9日)
 
世界最初の河川中和事業を担う品木ダムです。
水質改善により吾妻川は『死の川』から自然豊かな川に変貌し、利水や洪水調節を目的とする八ツ場ダムの建設も可能になりました。
またここでの成果は秋田県玉川でも生かされています。
 
追記
品木ダムには洪水調節容量の設定がありませんが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに16万6000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0610 品木ダム(0009)
群馬県吾妻郡中之条町入山
利根川水系湯川
NP
43.5メートル
106メートル
1668㎥/1273㎥
国交省関東地方整備局
1965年
◎治水協定が締結されたダム

玉原ダム

2016-10-11 17:50:59 | 群馬県
2016年10月8日 玉原ダム
 
玉原ダムは群馬県沼田市の利根川水系発知川源流部、玉原高原にある東京電力リニューアブルパワー(株)が運用する発電用目的のロックフィルダムです。
1972年(昭和47年)のオイルショックによる原油価格高騰を受けて水力発電見直しの機運が高まり、とくに火力や原子力発電との連携が取りやすい揚水式発電に注目が集まりました。
東京電力は建設省が利根川本流に建設していた藤原ダム湖に着目、ここと揚水発電を行うために1973年(昭和48年)に着工し1981年(昭和56年)に竣工したのが玉原ダムです。
玉原ダムは玉原湖を上部池、藤原湖を下部池として有効落差518メートルを利用した玉原発電所で最大120万キロワットの発電を行っています。
 
玉原ダムは当初『たまはら』と読んでいましたが、ダム周辺のリゾート開発が進み地元での呼び名である『たんばら』が一般化したため、2004年(平成16年)にダムの呼び名を『たんばら』に変更しました。
ダム周辺の玉原高原はスキー場やキャンプ場などが整備されているほか、玉原湿原や関東屈指のブナ林を擁す自然環境を生かし四季を通じて多くの観光客やハイカー、登山者が訪れる人気スポットとなっています。
なお2020年(令和2年)の東京電力ホールディングスの組織改編により玉原ダム及び関連発電施設はすべて同社の100%子会社である東京電力リニューアブルパワー(株)に移管されました。
 
沼田から県道266号線を北上、玉原高原を目指すとセンターハウス手前でダムへの道が分かれます。
県道の展望台から俯瞰。
ダム周辺は関東屈指のブナの原生林が広がります。
 
天端は関係車両以外通行止め。
車止めはあちこちのダムで見かけるお魚さん。
 
手前は余水吐
奥が揚水発電用の取水ゲートです。
 
ダムの東には日本100名山の上州武尊山が聳えます。
 
堤体下流面。
 
洪水吐。
 
洪水吐ゲートビア。
 
ゲートはローラーゲート2門。
 
長ーーい導流部。
 
堤体上流面。
 
登山でなじみのある玉原高原ですが、ダムが目当てで来たのは初めてです。
ダム湖周辺はブナの原生林が広がっているので、紅葉の頃はさぞ素晴らしい景色が広がるでしょうね!! 
 
0622 玉原ダム(0632)
群馬県沼田市上発知町玉原
利根川水系発知川
116メートル
570.1メートル
東京電力リニューアブルパワー(株)
1981年

平出ダム

2016-10-11 16:30:00 | 群馬県
2016年 2月4日 平出ダム
2016年 10月8日 
 
平出ダムは群馬県沼田市の利根川水系片品川ある群馬県営の発電用重力式コンクリートダムで、群馬県企業局利南発電所の取水ダムとして1964年に竣工しました、
利南発電所で最大5300キロワット、2011年(平成23年)に増設された新利南発電所で最大1000キロワットの発電を行っています。
 
沼田市内から県道62号を東進すると平出ダム管理事務所が現れます。
事務所から(2016年10月8日)。
 
放流していましたが、下流側の展望ポイントがありません(2016年10月8日)。
 
右岸から
午前9時で氷点下4度、湖面は凍結しています。
 
下流の利南発電所と新利南発電所。
 
減勢工
放流された水が勢いよく流れてゆきます(2016年10月8日)。
 
発電所への取水口。
 
ダム湖(2016年10月8日)。
 
天端は車両通行可能。
2月の訪問時は湖面が凍結、地元の皆さんがワカサギを釣っていました。
 
追記
平出ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに62万2000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0608 平出ダム(0217)
左岸 群馬県利根郡昭和村生越
右岸  同県沼田市白沢町平出
利根川水系片品川
40メートル
87メートル
1400千㎥/500千㎥
群馬県企業局
1964年
◎治水協定が締結されたダム

薗原ダム

2016-10-11 15:40:06 | 群馬県
2016年10月8日 薗原ダム
 
1947年(昭和22年)のカスリーン台風により利根川流域では甚大な被害が発生し、1949年(昭和24年)に利根川本流及び主要支流に多目的ダムを建設して連携して洪水調節に当たるとともに、電力需要への補給や灌漑用水確保を目的とする『利根川改定改修計画』が策定されました。
この中で群馬・栃木。福島県境に源を発し群馬県北東部を南西に流下して沼田で利根川に注ぐ片品川では1958年(昭和33年)に建設省関東地方建設局により薗原ダムが着工され、反対運動や補償交渉の難航などを乗り越えて1965年(昭和40年)に竣工しました。
 
薗原ダムは他の利根川上流ダム群と連携しての利根川の洪水調節、利根川流域地域の農地への既得取水権の補給を目的とするほか、群馬県企業局白沢発電所で最大2万6600キロワットの発電を行っています。
 
今回は県道267号線を南下、ダム湖上流から薗原ダムに至りました。
ダム湖(薗原湖)上流から。
クレストは4門のラジアルゲート、左右に2門の予備ゲートが見えます。
 
右岸から
薗原ダム最大の特徴はジャンプ台式洪水吐。
 
さらに下流から
ジャンプ台式洪水吐の下にコンジットゲート機械室があります。
 
天端は車道で車両の通行可。
 
左岸にインクライン。
 
予備ゲートの移動に利用されるガントリークレーン。
 
右岸に張り付くように建てられた管理事務所。
 
下流から。
 
ちょうどダムと正対できる場所は切り開かれています。
クレストは4門のラジアルゲート 3門のコンジットの機械室と放流口、さらに利水放流設備としてハウエルバンガーバルブがあります。
 
機械室をアップ。
 
0609 薗原ダム(0631)
群馬県沼田市利根町穴原
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
利根川水系片品川
FNP
76.5メートル
127.6メートル
㎥/㎥
国交省関東地方整備局
1965年
◎治水協定が締結されたダム

大滝堰堤

2016-10-11 14:22:22 | 群馬県
2016年10月8日 大滝堰堤
 
大滝堰堤は群馬県利根郡片品村の小川にある東京電力リニューアブルパワー(株)の発電目的の重力式コンクリート型式の堰堤です。
堤高11メートル超と河川法上のダムの要件は満たしていませんが、ダム便覧に参考掲載されているため訪問しました。
ダム便覧ではここで貯留された水は下流の幡谷発電所で使われると書かれていますが、地図を見ると大滝調整池から幡谷発電所への直接の水路は見当たりません。
大滝堰堤で片品川の河川水量の季節変動を平準化し、年間を通して安定した発電を行うための調整池と思われます。
 
まずは堰堤左岸からアプローチしますが立入禁止。
 
堰堤下流の橋からは木の枝が邪魔で堰堤は見えません。
辛うじて魚道が見えます。
落葉したら堰堤が見えるかも?
 
右岸からはこれが精一杯。
 
国道401号線の尾瀬大橋からダムを見ることができました。
 
2門のゲート、左岸の堤体上流面は練石積。
 
S015 大滝堰堤(0630)
群馬県利根郡片品村大字鎌田
利根川水系小川
11.021メートル
87.914メートル
東京電力リニューアブルパワー(株)
1927年

東京電力一之瀬発電所取水口

2016-10-11 12:56:32 | 群馬県
2016年10月8日 東京電力リニューアブルパワー一之瀬発電所取水口
 
一之瀬発電所取水口は群馬県利根郡片品村の自然沼である大尻沼の西端にある東京電力リニューアブルパワーが管理運用する発電目的の重力式コンクリート堰堤です。
1937年(昭和12年)に東京電燈の子会社の上毛電力によって建設され日本発送電を経て戦後の電力分割民営化で東京電力が事業を継承しました。
なお2020年(令和2年)の東京電力ホールディングスの組織改編により釜無川第一発電所及び関連発電施設はすべて同社の100%子会社である東京電力リニューアブルパワー(株)に移管されました。
上流の丸沼ダムで貯水された水はここで取水され、1870メートルの導水路で下流の一之瀬発電所に送られ最大1万700キロワットの発電を行っています。
 
丸沼ダムから国道120号を下ると右手に一之瀬発電所取水口が見えます。
 
堰堤の下流面。
 
堰堤の天端は丸沼遊歩道で立ち入り可能です。
 
堰堤上流面。
 
大尻沼はまだ紅葉の走り。
 
右岸から
小さな自由越流式洪水吐が2門。
 
東京電力リニューアブルパワー一之瀬発電所取水口
群馬県利根郡片品村
利根川水系小川
東京電力リニューアブルパワー(株)
1937年

丸沼ダム

2016-10-11 12:18:58 | 群馬県
2016年10月8日 丸沼ダム
 
丸沼ダムは群馬県利根郡片品村の自然沼である丸沼と大尻沼の中間点にある東京電力の発電用バットレスダムで、1931年(昭和6年)に東京電燈子会社の上毛電力により建設され日本発送電を経て戦後の電力分割民営化で東京電力が事業を継承しています。
丸沼ダム自体では取水せず、丸沼の貯水量を増大させ発電用水を確保し、大尻沼にある取水口から一之瀬発電所に送水して最大1万700キロワットの発電を行っています。
丸沼ダムは日本では8基しか建設されず、現在わずか6基しか残らないバットレスダムの一つで、堤高及び総貯水容量でバットレスダムでは日本一を誇ります。
丸沼ダムはその希少性と土木建築物としての価値から近代土木遺産に選定されるとともに、2003年にはダムとしては3基目、発電用ダムとしては初めて重要文化財に指定されました。
 
国道120号にある丸沼ダムの標識に従うと小さな駐車スペースがあり丸沼ダムの説明板が設置されています。
 
ダムへは関係車両以外通行禁止。
 
もちろん天端も立ち入り禁止。
現在改修工事中です。
 
ダムを見るには遊歩道を下ります。
 
有名な?『トムソーヤー号』で湖面に出ます。
 
重要文化財のバットレスダムを正面に見ることができます。
 
 
 
 
大尻沼です。
紅葉の見ごろまでまだ10日ほどでしょうか?
 
初めて目にするバットレスダムは期待に違わぬ美しい姿でした。
欲を言えば青空のもと、湖面にその姿を映した状態で眺めたかった。
 
0595 丸沼ダム(0629)
群馬県利根郡片品村
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
利根川水系小川
32.1メートル
88.2メートル
㎥/㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1931年
◎治水協定が締結されたダム