2017年5月6日 弥栄ダム
小瀬川は広島県廿日市市の鬼ヶ城山に源を発し広島・山口県境を形成して瀬戸内海に注ぐ一級河川で、流域は花崗岩質で形成されているため保水能力に乏しく豪雨のたびに大きな洪水被害をもたらしてきました。
しかし県境河川のため広島・山口両県の利水・治水調整は難航し1964年(昭和39年)にようやく中流域に両県共同管理の小瀬川ダムが完成したものの、さらなる洪水対策を求める声が高まっていました。
一方で、高度成長を受けた瀬戸内海沿岸地域の発展に伴う水需要の急速な増加を受けて新たな水源の確保も喫緊の課題となってきました。
これらの諸課題に対処するために建設省は『小瀬川総合開発計画』を策定、大規模な多目的ダムの建設に着手し1990年に竣工したのが弥栄ダムです。
弥栄ダムは総貯水容量1億1200万立米と中国地方最大の貯水量を誇り、小瀬川下流部の洪水調整、慣行水利権分の用水補給と安定した河川流量の維持、広島・山口両県への上水道用水の供給、岩国・大竹地域及び柳井地域への工業用水の供給を目的とするほか中国電力弥栄発電所で最大出力7000キロワットの発電を行っています。
ダム完成による治水・利水効果は絶大で1994年(平成6年)秋の大渇水ではダムがなければ280日の給水制限があったものが140日間の給水制限にとどめ、2005年(平成17年)の台風14号襲来においても流域での洪水被害をほぼ皆無に抑えています。
弥栄ダムは国道186号線沿いにあり、ダム左岸に管理事務所や資料館、駐車場が整備されています。
左岸から
左右両岸が屈曲した堤頂長540メートルの堤体はまるで巨大な猛禽のようです。
天端は車両通行可。
ゲート越しに見る減勢工。
ダムが県境になっています。
上下流ともに建屋がずらっと並ぶ天端。
左岸のインクライン。
右岸展望台から
弥栄ダム定番の撮影ポイントです。
上流面
ダムの周囲には花崗岩質特有の尖峰がそびえています。
下流面。
左岸上流から
屈曲した堤体がよくわかります。
上流から
クレストは4門の真っ赤なラジアルゲート
コンジットの予備ゲートが3門 右手は選択取水設備。
下流からもダムを見ることができますが、残念ながら逆光となってしまいました。
追記
弥栄ダムには5800万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに4458万5000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
1996 弥栄ダム(0982)
左岸 広島県大竹市八丁
右岸
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
小瀬川水系小瀬川
FNWIP
G
120メートル
540メートル
㎥/㎥
国交省中国地方整備局
1990年
◎治水協定が締結されたダム
24時間体制で動く巨大現場で若い自分のできることは、駆け回るだけ、、、
先日30年以上経って初めて完成した姿に会うことができました。
感慨無量でした。
すぐ下流にある安条地区の道路は改良されて、二つあった商店。一つは立ち退き、一つは廃業。。
当時と変わらないのは、昇る朝日、休憩のとき眺めた周辺の花崗岩の白い山肌でした。。。。。
建設に携わった方のコメントを頂き大変恐縮です。
本文にも書いたように巨大な猛禽を彷彿とさせるような雄姿と周辺の花崗岩が織りなす奇峰岩峰の山々、弥栄ダムはこれまで訪問したダムのうちでも五本の指に入るほどのお気に入りとなっております。