ヤマカマスをご存知だろうか。冬枯れの時期に雑木林の木の枝先にちょっと不思議な形をした緑色の繭がぶら下がっているのを見かけることがあるが、これがヤマカマス、ウスタビガという蛾の繭である。
類似種の他の蛾の繭とは異なり、この繭には羽化した成虫が這い出すための出口がきちんと作られている。
ウスタビガは秋に羽化して繭から出てしまうので、われわれがこの繭を目にする頃にはたいていは中が空っぽになってしまっている。
ウスタビガの繭、ヤマカマス(2016.10.11 撮影)
この繭の形に惹かれて、ウスタビガを飼育し繭を作るところを見てみたいと思うようになっていたのだが、ウスタビガの幼虫をどこでどのようにして探せばいいのか判らないまま時間が過ぎていた。
ところが思いがけずその機会が訪れた。昨年夏に南軽井沢の別荘地内を散歩しているときに、妻が足元を這っているウスタビガの終齢幼虫を見つけたのだ。
南軽井沢の別荘地内で見つけたウスタビガの終齢幼虫(2015.7.13 3D動画からのカット画像)
この幼虫はすでに餌を食べるのをやめて繭つくりの場所を探していたようで、持ち帰るとしばらくして用意した枝先で繭を作り始めた。この繭つくりの様子は3D動画に収めることができた。
ウスタビガの終齢幼虫の繭つくり(2015.7.13 3D動画からのカット画像)
この繭を保護用のネットに入れて庭の木にぶら下げておいたところ、秋のある日ネットの中でウスタビガが羽化しているのに気がついた。生まれてきたのはメスであった。これが幸いして今年の幼虫の飼育につながった。
無事に羽化したウスタビガの♀(2015.10.16 撮影)
この♀を網かごに入れて、別荘地に持って行き、横に誘蛾灯をともして♂が来るのを待った。翌朝見に行くと、周りには7匹の♂が集まっていて、無事お婿さんを見つけることができた。
このメスはその後30個ほどの卵を網かごの網に産んでくれた。そして今年の春これらの卵がほとんどすべて孵化し、幼虫が誕生した。
この幼虫の飼育には、餌となる葉の確保にずいぶん苦労させられたが、その甲斐あってか多くの幼虫はすくすくと成長し、昨年に続いて再び繭・ヤマカマスを作るところを次々と見せてくれた。数えてみると20個の繭ができていた。
昨年は気がつくと羽化が終わっていたということもあり、繭から成虫が羽化する瞬間を目撃することはできなかったが、今年は多数の繭があったので、羽化の瞬間を3D動画撮影することもできた。その一例を同時に撮影した写真で見ていただこう。
繭から成虫が顔を出した(2016.10.8 18:38~19:01 撮影)
繭の中で何が起きているのかを外から窺い知ることはむつかしい。繭をよく観察し、中で蛹から抜け出し、外に出てくる瞬間を待った。よく見ていると、羽化した成虫は出口から少し顔を出し、口から液体を吐いて時間をかけて繭の口を柔らかくしていた。そして十分柔らかくなった出口から這い出してきていた。
体の大部分が繭から抜け出した(2016.10.8 19:02 撮影)
繭にぶら下がって翅を伸ばす(2016.10.8 19:02~19:13 撮影)
翅を開いて羽化が完了した(2016.10.8 19:19~20:49 撮影)
繭から顔を出し始めてから、翅が完全に伸びるまでおよそ2時間、羽化してきたのは翅の色が濃い♂であった。
この種の蛾の雌雄判定は触角を見ることで容易に行える。幅が広いほうが♂である。これは、♀が出すフェロモンを敏感に感じ取るために表面積を大きくしているものと考えられている。
今年できた繭は2個が寄生生物のために死んでいたが、残る18個からは♀と♂ほぼ同数が無事成虫となった。
今年も昨年同様これらの♀を別荘地に持ち込んで、誘蛾灯を点けて♂が来るのを待ったのだが、3日間続けても集まってきた♂は2頭のみ。自宅の環境と自然環境との違いであろうか。どうも羽化の時期が少しずれてしまったような気がしてならない。
しかし、その後10頭ほどいた♀から、今年は昨年よりも多くの卵を得ることができた。また、来年につなげていきたいと考えている。
類似種の他の蛾の繭とは異なり、この繭には羽化した成虫が這い出すための出口がきちんと作られている。
ウスタビガは秋に羽化して繭から出てしまうので、われわれがこの繭を目にする頃にはたいていは中が空っぽになってしまっている。
ウスタビガの繭、ヤマカマス(2016.10.11 撮影)
この繭の形に惹かれて、ウスタビガを飼育し繭を作るところを見てみたいと思うようになっていたのだが、ウスタビガの幼虫をどこでどのようにして探せばいいのか判らないまま時間が過ぎていた。
ところが思いがけずその機会が訪れた。昨年夏に南軽井沢の別荘地内を散歩しているときに、妻が足元を這っているウスタビガの終齢幼虫を見つけたのだ。
南軽井沢の別荘地内で見つけたウスタビガの終齢幼虫(2015.7.13 3D動画からのカット画像)
この幼虫はすでに餌を食べるのをやめて繭つくりの場所を探していたようで、持ち帰るとしばらくして用意した枝先で繭を作り始めた。この繭つくりの様子は3D動画に収めることができた。
ウスタビガの終齢幼虫の繭つくり(2015.7.13 3D動画からのカット画像)
この繭を保護用のネットに入れて庭の木にぶら下げておいたところ、秋のある日ネットの中でウスタビガが羽化しているのに気がついた。生まれてきたのはメスであった。これが幸いして今年の幼虫の飼育につながった。
無事に羽化したウスタビガの♀(2015.10.16 撮影)
この♀を網かごに入れて、別荘地に持って行き、横に誘蛾灯をともして♂が来るのを待った。翌朝見に行くと、周りには7匹の♂が集まっていて、無事お婿さんを見つけることができた。
このメスはその後30個ほどの卵を網かごの網に産んでくれた。そして今年の春これらの卵がほとんどすべて孵化し、幼虫が誕生した。
この幼虫の飼育には、餌となる葉の確保にずいぶん苦労させられたが、その甲斐あってか多くの幼虫はすくすくと成長し、昨年に続いて再び繭・ヤマカマスを作るところを次々と見せてくれた。数えてみると20個の繭ができていた。
昨年は気がつくと羽化が終わっていたということもあり、繭から成虫が羽化する瞬間を目撃することはできなかったが、今年は多数の繭があったので、羽化の瞬間を3D動画撮影することもできた。その一例を同時に撮影した写真で見ていただこう。
繭から成虫が顔を出した(2016.10.8 18:38~19:01 撮影)
繭の中で何が起きているのかを外から窺い知ることはむつかしい。繭をよく観察し、中で蛹から抜け出し、外に出てくる瞬間を待った。よく見ていると、羽化した成虫は出口から少し顔を出し、口から液体を吐いて時間をかけて繭の口を柔らかくしていた。そして十分柔らかくなった出口から這い出してきていた。
体の大部分が繭から抜け出した(2016.10.8 19:02 撮影)
繭にぶら下がって翅を伸ばす(2016.10.8 19:02~19:13 撮影)
翅を開いて羽化が完了した(2016.10.8 19:19~20:49 撮影)
繭から顔を出し始めてから、翅が完全に伸びるまでおよそ2時間、羽化してきたのは翅の色が濃い♂であった。
この種の蛾の雌雄判定は触角を見ることで容易に行える。幅が広いほうが♂である。これは、♀が出すフェロモンを敏感に感じ取るために表面積を大きくしているものと考えられている。
今年できた繭は2個が寄生生物のために死んでいたが、残る18個からは♀と♂ほぼ同数が無事成虫となった。
今年も昨年同様これらの♀を別荘地に持ち込んで、誘蛾灯を点けて♂が来るのを待ったのだが、3日間続けても集まってきた♂は2頭のみ。自宅の環境と自然環境との違いであろうか。どうも羽化の時期が少しずれてしまったような気がしてならない。
しかし、その後10頭ほどいた♀から、今年は昨年よりも多くの卵を得ることができた。また、来年につなげていきたいと考えている。
いつも乍ら、画像の美しさに感心します。
楽しみにしてます。
また、繭から顔を出したところは何か別な生き物のような感じがします。
この種の蛾は、羽化してから何も口にすることなく、子孫を残して死ぬそうです。
なんともはかなく、いじらしい生き物です。