すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【東アジアカップ・大会総括 その2】川又と永井は切るべきだ

2015-08-10 17:31:20 | サッカー日本代表
マイボールをハジき続けた戦犯の2人

 今回の記事を書くのは正直いって気が重い。だが少しでも早い段階で、だれかが問題提起しておくべきだ。ゆえに、あえて筆を取ることにする。

 今大会、ワントップでたびたび起用された川又は、チャンスをひたすら潰し続けた。どフリーのシュートチャンスに、ボールを利き足に持ち替えてハズす。頭にドンピシャで合っているサイドからのハイクロスを、ゴール前でなんと「肩に当てて」弾くーー。思わず目を覆うばかりの悲惨なプレイを続けた。

 もし仮にもっと決定力のあるフォワードがワントップにいれば、今大会の勝ち星はまったく変わっていただろう。例えば武藤を前で使ってもいいし、スタメンで興梠をワントップで使い、2列目の武藤や宇佐美らゴールゲッターと組み合わせてもよかった。

 興梠は周りを生かすポストプレイがうまい。かつての柳沢のように「最前線のゲームメーカー」的なプレイができる。興梠がクサビになり落としたボールを、前に飛び込んだ武藤や宇佐美がシュートする形を作れば、もっともっと点を取れていたはずだ。

 ところが川又はポストプレイも荒く、非常に精度が低い。せっかく彼にグラウンダーのすばらしいクサビのボールが入っても、足元でボールを弾いてしまいコントロールできない。で、マーカーに時間的余裕をプレゼントして寄せられてしまい、せっかく出たクサビのボールをなんと最終ラインへ戻すシーンまであった。

 川又のところで試合の流れがぷっつり途切れる。彼にボールが渡ると、とたんに流れがギクシャクする。日本はボールを失ってしまう。ボールポゼッションがガックリ下がる。はっきり言って川又は、「ボールを止める」「蹴る」という基礎的な技術レベルがプロの水準にない。

マーカーとの駆け引きがまったくない

 また川又は中央でゴールに背を向けてグラウンダーのクサビのボールを受けるとき、初めから「ダイレクトで落とす」と決め込んでいる。背中にマーカーを背負っているかどうか? なんて関係ない。とにかくクサビはダイレクトで落とすとあらかじめ決めている。ボールを受ける直前に、首を振って背後のマーカーの状態を確認する習慣がついてない。

 おそらくボールコントロールに自信がなく、クサビをもらうと「ボールを早く離したい」という心理が働き、状況に関係なく常にダイレクトで落としてしまうのだろう。

 敵の守備者から見れば、こんなフォワードなんて怖くもなんともない。

 例えばクサビが10回入ったとしよう。そのうち3〜4回はワンタッチでゴールに向き直られ、シュートを狙われるからこそマーカーは怖いのだ。「次は振り向くのか? それとも落とすのか?」。守備者は一瞬そう「考えただけ」でたちまち判断が遅れる。で、フォワードの動きに置き去りにされる。とすればフォワードは駆け引きとして、常に守備者に「二択以上」の選択肢をチラつかせておく必要がある。

 つまり10回入ったクサビのうち、たった2回だけでもゴールの方に振り向く動きをしておけばどうか? 守備者の頭に「次はどう動くのか?』という思考が生まれ、そのぶん判断が立ち遅れる。で、フォワードの動きについていけなくなる。つまり守備者の脳内にいかに雑念を起こさせるか? その勝負なのだ。

 だが川又みたいにクサビを常に100%ダイレクトで落としていれば、彼にボールが出た瞬間、「また落とすぞ」と守備者に素早く判断されてしまう。駆け引きもなにもない。守備者から見て怖くもなんともない。ゆえに相手に正確に対応されてしまうーー。

トラップの技術がプロレベルでない永井

 次は永井である。彼も川又同様、トラップ技術など基本的な技術レベルがはっきりプロの水準ではない。川又と同様、彼にボールが渡ると流れが途絶え、チャンスが潰れる。またシュートを選択する思い切りのよさがなく、窮屈そうにパスに逃げるなど攻撃的な選手として使う意味がない。

 ハリルジャパンは4バックだ。ゆえに中盤から前の選手は6人しかいない。逆にいえばこの6人でパスを回すことになる。にもかかわらず6人中、3分の1を占める2人(川又と永井)がトラップもろくにできないレベルの選手なのだ。これではパスが繋がるはずないし、流れが途切れるのも当然だろう。

 勝てないのは当たり前だ。

 ふり返ればハリル体制がスタートし、彼ら2人が初めて同時に使われたのは2015年3月27日に行われたキリンチャレンジ杯・チュニジア戦の前半だった。このときの模様と、同じく彼ら2人が同時に使われた今回の北朝鮮戦のボールの落ち着きのなさはまったく同質なのだ。どちらのゲームもパスがブレては受け手がハジき、とボールの流れがギクシャクしていた。原因ははっきりしている。

 6人中、3分の1を占める2人が、川又と永井だったからだ。

 今大会の敗因のひとつはハリルが彼ら2人に固執し、使い続けたことにあるといっていい。そのためパスワークが乱れて攻撃の精度が落ち、日本は簡単にボールを失ってしまった。で、敵のカウンターをたびたび食らった。

 新戦力をテストするための大会だというなら、少なくとも第2戦までで彼らに見切りをつけるべきだった。そして若い浅野を1試合は先発で使って時間をやるなど、もっと柔軟な采配をするべきだった。

チーターは足は早いがトラップできない

 おそらくハリルは「川又の高さと身体能力は魅力だ」「永井には爆発的なスピードがある」と考えて招集しているのだろう。つまり彼らを選ぶ理由は技術ではなくカラダ(素材)だ。

 だがいくら足が速いからといって動物のチーターを連れてきてサッカーパンツをはかせても、それはあくまでチーターであり人間ではない。ボールに素早く追いつくことはできても、チーターはボールをトラップしたりシュートしたりできない。

 ハリルがやっていることは、それ(=チーターを連れてくること)と同じだ。

 もちろん川又も永井も「素材」としてはすばらしい。もしこれがクラブチームなら監督が惚れ込み、「よし。彼らを獲得し、じっくり5年かけてオレが育てよう」となるかもしれない。だがここはクラブチームではない。選手個々の技術レベルが一定水準をクリアしているべき代表チームである。決して育成の場ではない。

 トラップやパス出しがスムーズにできない選手が来る場所ではないのだ。

 ハリルはそれほど川又と永井が気に入っているなら、日本代表監督をやめたあとクラブチームの監督になり、彼らを獲得して自分で時間をかけて「トラップの仕方から」教えて育てればいい。はっきりいうが、ハリルの川又と永井への偏愛は代表チームという「公共空間」を私的に流用するものであり、公私混同だ。とうてい私は納得できない。

 もし今後もハリルが川又と永井を招集し続けるなら、そのとき私はハリルホジッチ監督に対する見方をハッキリ変えようと思う。

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【サッカー・東アジアカップ】ポゼッション・スタイルへの転換点 〜日本1ー1中国

2015-08-10 13:14:24 | サッカー日本代表
タテに速いスタイルとポゼッションとの融合が進むか?

 東アジアカップ最終戦になった中国戦。日本はこの試合でそれまでのタテに速いサッカ一辺倒から、ポゼッション・スタイルとの融合にトライした。結果は上々。中国のプレスが甘かったせいもあり、初戦、第2戦とはまったく別のチームのような滑らかなパスワークを見せた。

 戦術的には時計の針を30年くらい昔に巻き戻したような凡戦ではあったが、ポゼッションへの手応えをつかんだ日本にとっての意味は大きい。

 一方、新戦力発掘という意味では、最前線のお笑い芸人、じゃない武藤(浦和レッズ)の華麗なゴールショーや、この日右SBからボランチにコンバートされ獅子奮迅の活躍をした若い遠藤航(湘南ベルマーレ)、また今大会この試合で初出場した左SB・米倉恒貴(ガンバ大阪)の大ブレイクなど、ひさびさに明るい話題が多い試合になった。

新戦力のテストに徹したブレないハリル

 前半10分、中国に先制され「またか」とイヤなムードが漂った。だが日本は40分、センターバックを務める槙野の強くて速いグラウンダーの鋭い縦パスを受け、左SBの米倉が爆発的なダッシュでゴール近くまで抜け出した。そしてダイレクトで折り返しを入れる。

 これに鋭く反応した武藤が倒れ込みながらすばらしいダイレクト・シュートを決めた。武藤は初先発・初代表ゴールとなった北朝鮮戦での得点と合わせ、通算2点目。大会得点王となる目ざましい働きをした。ゲームは1ー1のまま引き分けで終わった。

 日本のシステムは4−2−3−1。1分1敗で迎えたどうしても勝ちたい最終戦だった。だがハリルホジッチ監督はまったくブレなかった。「新戦力の発掘」という今大会の当初からの位置づけ通り、平然と3人の大会初出場選手を抜擢しテストした。左SBの米倉と右SBの丹羽大輝、GKの東口順昭(いずれもガンバ大阪)だ。

 センターバックは槙野、森重の不動のコンビ。また今大会、右SBとしてA代表デビューを飾るや攻守に気を吐きまくる遠藤航をボランチに抜擢し、山口蛍と組ませた。前の両翼は左に宇佐美、右に永井。トップ下は初戦の北朝鮮戦以来の武藤が務めた。ワントップは川又だ。

ハイプレス&ショートカウンター一辺倒からの脱却へ

 さてフタを開けるとそこには懐かしい風景が広がっていた。相手ボールになってもコースを切るだけ、互いにプレスをかけ合わない。よくいえば牧歌的な80年代のようなのんびりしたサッカーが展開された。

 日本はサイドチェンジを織り交ぜながら、あわてずじっくりポゼッションした。まるで時計の針をブラジル・ワールドカップ前に戻したかのような試合運びだった。当時とちがうのは徹底した遅攻だったザックジャパンとくらべ、無意味なバックパスや最終ラインでのボール回しがない点だ。

 またフィニッシュもサイドをうまく使い、ザックジャパンのように中央偏重に陥らない。真ん中から左右へのボールの散らしも有効だった。その意味ではあきらかにザックジャパンとは違う、進化系のポゼッション・サッカーといえる。

 日本はハリルホジッチ監督就任以来、監督が標榜する「タテに速いサッカー」を実現しようとあせる余り、無意味でアバウトなタテパスを繰り返した。そして試合を壊してきた。

 だがこの試合ではボランチを務めた遠藤と山口がボールをいったん落ち着かせ、タテに急がなかった。うまくゲームをコントロールしていた。その意味ではポゼッション・サッカーに初挑戦した中国戦は、いい意味でやっと日本が「親離れ」した試合だといえる。

 今後は監督が目指すハイプレス&ショートカウンターのスタイルに加え、試合の局面に応じて要所でポゼッションを織り交ぜれば新しいスタイルが熟成する。それはトータルバランスに優れたサッカーになるだろう。この戦術的な転換は、今回の東アジアカップで得られた大きな収穫である。

 ただしこの試合は中国がほとんどプレスをかけてこなかったため、そのぶん「ラクにポゼッションできた」という見逃せない側面がある。つまり日本が自然にポゼッションできたのは、中国のプレスが甘かったからだ。

 一方、世界の頂点であるロシア・ワールドカップ本大会を見据えれば、厳しいプレスを受けた状態で「どんなサッカーができるのか?」こそが問題である。それがハリルジャパンの中長期的なテーマになる。世界レベルはその次元だ。くれぐれも「中国戦でポゼッションできたから」などと楽観することのないよう、気をつけたい。

じゃない武藤劇場、開演する

 次は選手別に見ていこう。この試合での武藤と遠藤、米倉の活躍はすばらしかった。まず武藤は前半13分に米倉に見事なスルーパスを出し、受けた米倉はシュートまで行った。このプレイを皮切りに、華麗な武藤劇場が演出された。

 いちばんのハイライトは、いうまでもなく前半40分の先取点だ。倒れ込みながらのあの輝かしいゴールは、おそらく少年たちのあこがれの的になり、そして未来のJリーガーがその背中を見て育っていくーー。そんな貴重な瞬間に立ち会えたことを誇りに思う。

 また武藤は守備も精力的にこなし、相手ボールになると中国のボールホルダーにプレッシャーをかけていた。この日の武藤は前回先発した北朝鮮戦とちがい、時間が経過しても足が止まることはなかった。後半28分に柴崎との交代で退いたが、少なくとも私の目にはさほど運動量が落ちているようには見えなかった。あれはむしろ柴崎を出したいための戦術的な交代だったのではないだろうか?

 一方、ボランチに入った遠藤は、中盤を精力的に動き回り「だれがチームの中心なのか?」をカラダで見せつけた。左右へのボールの散らしやタテへの繋ぎ、カバーリングなど、どのプレイひとつ取っても「なるほど彼はボランチが本職だ」と見る者のだれをも納得させるプレイを続けた。本大会での彼のプレイを見る限り、出来不出来のムラがある柴崎でさえボランチのレギュラーは危なくなったのではないか? と思わせた。

ポリバレント米倉が大ブレイクする

 また今大会、この試合で初出場した左SB・米倉恒貴の働きは目覚ましかった。前半40分には武藤のゴールをお膳立てする爆発的なオーバーラップと完璧な折り返しを見せ、まず名刺を置く。

 また後半5分には左サイドをドリブルで駆け上がり、シュートまで行く。後半30分にもいいオーバーラップを敢行した。加えて攻撃だけでなく守備もよく、後半15分頃にはすばらしいカバーリングをした。

 米倉はジェフ千葉時代はもともと右SHだったが右SBにコンバートされ、点を取れるSBとして知られていた。現在所属するガンバでも右SBで試合に出ている。で、実は本ブログでもつい先日、中国戦のスタメン予想記事で、先発メンバーとして米倉を右SBで推したばかり。

 なのに代表ではいきなり逆のサイドの左SBで初先発し、しかもあの大活躍である。今後は彼のことを「ポリバレント米倉」、もしくは「ミスター・ポリバレント」、あるいは「サッカーパンツをはいたポリバレント」と呼ぼう。

 彼は前からイケメンとして知られており、2014年にはネット上に「イケメン度はすでに日本代表クラス」としたまとめページが立ち上がるほど。ところがどっこい、実はイケメン度なんかよりサッカーセンスのほうがはるかに凌駕していた、というオチがついた。

「日本代表はSBが不足している」といわれていたが、まったくこんな逸材がいるならガンバとハリルは「もったいぶらずに早く出せよ!」って感じだ。しかも中国戦の内容だけから判断すると、この人ったらなんと「左右両SB」ができるんですよぉ? しかも彼を右SBで使えば中国戦のように、遠藤航をボランチで使うことができるのだ。

 この中国戦での新兵器・米倉の新たな発掘は、遠藤のボランチ当確、武藤のチーム得点王ゲットと並び、とんでもなく大きな収穫といえる。

 しかも彼が(この試合だけでなく)左右両用のSBとして継続的に力を発揮できるのだとすれば、チームのメンバー構成的にはいい意味での「流動性」が高まる。例えば試合の展開に応じ、彼を右SBから左SBに動かし(もちろん逆もありえる)、そのぶんほかの選手を投入したり、だれかを交代させるなどさまざまなカードが切れる。このアドバンテージはとんでもなくデカい。

 ぶっちゃけ、今回の東アジアカップは武藤と遠藤航、米倉の3人を新たに発掘できただけでも大成功だ。「屈辱の最下位」、「連覇ならず」などという、サッカーを知らない無知なマスコミの扇情的でくだらない見出しなどクソ食らえだ。

「東アジアカップ、新戦力が躍動し大成功に終わる」

 これが正しい見出しである。さあ、次行こ、次。

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【サッカー・東アジアカップ/大会総括】ショートカウンター一辺倒にポゼッションが加わった戦術面の変化

2015-08-10 02:10:57 | サッカー日本代表
勝てないながら武藤、遠藤ら頼もしい新戦力が芽を出す

 本大会でのハリルジャパンは、3試合で3種類の戦術を試した。

 まず初戦の北朝鮮戦ではタテに速いサッカーを、第2戦の韓国戦では逆にリトリートからのロングカウンターを、そして最終戦の中国戦ではボール保持率を高めるポゼッション・スタイルを、と1戦ごとに異なるサッカーを模索した。

 そのなかでいちばんハマっていたのは第3戦のポゼッション型であり、この結果だけ見ればザッケローニ元監督を見切った意味がまったくない。

 ただし問題はこれからだ。ハリルホジッチ監督が就任当初から掲げていたハイプレス&ショートカウンター・スタイルに加え、1試合のなかで局面の変化に応じ適宜ポゼッションの要素をうまく散りばめて行けば、今後トータルとしてバランスのいいサッカーになるだろう。その意味では、最終戦の中国戦でつかんだポゼッション・スタイルへの手応えは今後に生きる。

 ただしこの試合での中国はプレスをかけてこなかった。ゆえに日本はノー・プレッシャーの状態でラクにポゼッションできた。この点には強く留意しておく必要がある。すなわちこのチームの中長期的な課題は、厳しいプレッシャーを受けたなかで「どんなサッカーができるのか?」である。今後の推移を注意深く見守る必要がある。

海外組が抜けると日本代表はこれだけグレードダウンする

 本大会は、「海外組が抜けると日本代表はこれだけグレードダウンする」という層の薄さが実証された大会だった。

 ただしそのなかでも通算2点を取った武藤雄樹(浦和レッズ)や、攻守に大きく貢献した若い遠藤航(湘南ベルマーレ)、最終戦にきて起用され1アシストに加え質の高いカバーリング能力も見せた米倉恒貴(ガンバ大阪)など、よい結果を出した新戦力も少なからずいた。

 また今大会で点も取ったボランチ・山口蛍は、積極的に前へ出てプレスをかけるスタイルで存在感を示した。中国戦でボランチとして新たに名乗りをあげた遠藤航とあわせ、ボランチのポジション争いはすっかりホットになってきた。また泥臭いハードワークが光る倉田や藤田もおもしろい存在だ。

 もちろん結果を出した新戦力は確かに一部の選手だし、海外組のレギュラー達に取って替わるレベルだとまではいい切れないかもしれない。だが限定的にせよ、選手層の底上げになった大会だったといえるだろう。

毅然として「テスト」に徹したハリルホジッチ監督

 1分け1敗で迎えた最終戦の中国戦。ふつうなら「絶対に勝ちたい」となる局面だった。だがハリルホジッチ監督はスタメンで計算できる選手だけに頼らず、まだ出場してないDFの米倉恒貴(ガンバ大阪)、丹羽大輝(同)、GKの東口順昭(同)の3人を使った。

 このスタメンを見れば、大会に対する監督のスタンスは一目瞭然だ。ハリルは本大会で単に結果だけに囚われず、ガマン強く新戦力をテストし続けたのだ。

 第2戦を終えて1分け1敗。近視眼的な監督批判が世間に巻き起こるなか、ハリルは決して世論に迎合しなかった。自分の哲学とポリシーを曲げない芯の強さを見せた。この点は高く評価されるべきだろう。すべては「テスト」なのだ。確かに勝ち星という意味では直接的な結果は出なかったものの、そんな彼のチーム運営は批判されるような内容では決してない。

 ただしいつまでも結果を出せない川又と永井に拘泥し、最後まで彼らに固執し続けた点は大いに疑問がある。例えば最終戦はスタメンに川又でなく興梠、永井でなく倉田や藤田を選んでおけば結果は変わっていた可能性もある。

 これは単に結果論でなく、第3戦を迎えた時点ですでに川又と永井への評価は固まっていてしかるべきだったと考える。このあたりの選手の見極めについては、ハリルは自分独自の価値観にこだわりすぎ、バランスを欠いたようにも見える。

 こうした選手起用に関する不可解が今後もまだ尾を引くようなら、結果、それがもしかしたら監督解任運動の契機になって行くかもしれない。もちろん、そうならないことを祈ってはいるが。

期待を大きく裏切った宇佐美と柴崎

 なお大会全体をトータルで見て機能した選手、機能しなかった選手はそれぞれ以下の通りである。(どちらにも含まれない選手は、出場時間不足などの理由で判断を見送った選手)

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【機能した選手】

武藤、遠藤、山口、槙野、森重、米倉、倉田、藤田、興梠、西川

【機能しなかった選手】

川又、永井、宇佐美、柴崎、太田、浅野

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 選手別に見ると、特に才能と能力にあふれる宇佐美と柴崎、太田の3人は期待されながら、その期待を大きく裏切る結果になった。宇佐美は実質45分間しか持たないスタミナと、出来不出来の差の激しいムラっ気なプレイぶりが顕著だった。ゴールが取れなかったのも致命的だ。

 また柴崎は実質的な「10番」と目されながら、最後までチームの軸になり切れなかった。そのプレイぶりからは自分がチームを背負っているという気持ちが感じられず、彼の大きな特徴である決定的なラストパスも出せなかった。

 一方、韓国戦に出場した太田は持ち前のクロスの精度がきわめて低く、また韓国が彼のサイドを起点に攻めたこともあり防戦に追われた。ただし彼は十分な出場時間が与えられたわけではなく、これだけで総括してしまうのは酷かもしれない。またもちろん宇佐美と柴崎の代表キャップはこれで終わるわけではなく、本大会は長い長い道程の1里塚でしかない。今後の成長に期待したい。

 一方、同様に結果が出せなかった川又と永井については、基本的な技術レベル自体に疑問がある。これについては彼ら自身というよりも、彼らを選んだ監督自体の責任が大きい。また若い浅野については経験不足に加え、途中出場ばかりでうまくゲームに入れなかった。機会があれば今度はぜひスタメンで見てみたい。

 なお西川、東口の両GKについては川島を脅かすほどのさらなるインパクトがほしいが、ひとまず本大会の結果としてはまずまずのところだろう。

 さてハリルジャパンの「東アジアカップ2015」冒険編は、ひとまず終わった。今後、このチームがいったいどんな化学変化を起こし、それによって日本が目指すべき「世界で勝てるサッカー」はどう変わるのか?

 今後も興味深く見守って行きたい。

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