すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー・東アジアカップ】苦肉のリトリートでクリンチを繰り返す弱気なボクサー 〜日本1ー1韓国

2015-08-06 02:20:43 | サッカー日本代表
引いて守ってロングカウンターの「新生日本代表」がお目見え

 まるであの引き分けに持ち込まれたシンガポール戦に学んだような試合だった。韓国を相手に、ベタ引きで少ないチャンスを狙うクリンチ戦法に徹した我らが日本代表。だがそれは結局、海外組がごっそり抜け、大幅に戦力ダウンした急場をしのいだだけにすぎない。ロシア・ワールドカップへ向けての「輝ける未来」は見えてこなかった。

 日本は前半25分に森重がペナルティエリア内でハンドを取られ、いきなりPKから韓国に先制を許した。いやなムードが漂う中、日本は我慢のサッカーで耐え続ける。そして迎えた前半39分。山口蛍がゴール左スミを撃ち抜く豪快なシュートを決め、1ー1のまま引き分けで試合を終えた。

 日本は最終ラインの前にアンカーを配した4-1-4-1。左SBに太田を入れ、右に遠藤航、センターに槙野と森重を配する最終ラインを組んだ。かたやサガン鳥栖の藤田直之がアンカーとして代表初出場し、インサイドハーフは山口蛍と柴崎岳。左SHは同じく代表デビューのガンバ大阪・倉田秋、右SHはグランパスの永井。ワントップは浦和レッズの興梠が務めた。

猛暑の中を90分間戦い抜く「省エネ戦法」

 日本は前半立ち上がりから試合終了まで、かなり低く構えて戦った。韓国の最終ラインがボールを持つと全員が自陣に引き込み、ハリルジャパン初のリトリート・スタイルで試合を進めた。

 パスを回す韓国のバックラインに対し、ワントップの興梠がほぼセンターラインあたりにポジショニングし、この低い陣形により無理せず自陣でボール奪取を狙うロングカウンター的な試合運びをした。

 必然的にボールポゼッションは高くないが、全体のバランスはそう悪くない。ハイプレス信者が見れば怒り狂いそうなゲームプランだが、猛暑の中を90分間戦い抜く「省エネ戦法」としては理にかなっていたかもしれない。

 現に後半30分以降、韓国の足がパッタリ止まったのに対し、日本はしっかりゲームの流れをつかんで最後は優勢のまま試合を終えた。

 ただしすでに1敗している以上、引き分けでなくどうしても勝ちたかったのが本当のところだ。その意味ではハッキリ評価が分かれる試合だろう。ボール運びのスムーズさは北朝鮮戦よりはマシになったが、限られた乏しい戦力でなんとかクリンチに逃れたようなかっこうである。

 ハリルホジッチ監督は「組織的だった」と胸を張ったが、果たして将来につながるような一戦だったといえるだろうか?

山口と遠藤は輝きを放った

 戦術的には見るべきものがなかった試合だが、光明といえるのは輝きを見せた山口蛍である。前半39分、韓国のバイタルエリアに一瞬スペースができた。中央でボールをもった倉田が、山口の前にそっと置くような柔らかい横パスを出す。山口は待ってましたとばかりに走り込み、まるでシュート練習のような美しいゴールを決めた。

 彼はこの得点だけでなく、積極的に前へ出る爆発的なプレッシングを見せた。北朝鮮戦に続き、エネルギッシュに躍動していた。彼がボランチのレギュラー争いに力強く名乗りをあげた意味は大きい。

 また同じく北朝鮮戦から右SBに抜擢された遠藤航も輝いた。クレバーな守備だけでなく前へのフィードもいい。後半に入ってすぐ、目の覚めるような強くて速いグラウンダーのロングパスを通したときには驚いた。このチームですでに彼は、「軸」とさえいえる存在感を示している。

 一方、左SHとしてチャンスをつかんだ倉田も、山口同様、意欲的でエネルギッシュなプレスをかけ続けた。彼は球際が強く守備に粘りがある。攻めては1アシストもし、リンクマン的な繋ぎ役としてスポットライトを浴びた。

 また最前線に目を移せば、ワントップの興梠はボールの収まりのいい捌きをしていた。ボールコントロールが明らかに川又より安定している。なぜハリルホジッチ監督はあそこまで川又にこだわるのか? この日の興梠のプレイを見て、ますますわからなくなってしまった。(ただし未来に向け手放しで喜べないのは、29歳という興梠の年齢ではあるが)

 ともあれこの試合限りで、もう川又と永井は見切っていいのではないか? そんな強い思いに囚われた。

ビルドアップ不全症は相変わらずだ

 一方、チームとしての問題点は相変わらずだ。日本は最終ラインからのビルドアップに苦しみ、韓国に前からプレスをかけられてはボールを失っていた。うしろの選手がボールを持つと、前へロングボールを放り込むか、GKにバックパスするかの二択になっている。現状は深刻だ。

 また守備面ではボールを保持する相手選手に対し、守備者が距離を取りすぎる。局面では間合いを詰めるプレッシングも見られたが、基本的には抜かれるのをこわがり、何メートルも離れてパスコースを切るだけだ。おかげで韓国にいいようにボールを回されていた。

 たまに柴崎や山口がプレスのスイッチを入れていたが、単騎の寄せでは効果がうすい。そのうしろの選手たちが連動してあとに続き、分厚い壁を作らなければ戦術的に意味がない。

 まだ中国との最終戦を残し総括してしまうのもアレだが、この大会は山口蛍を再認識し、遠藤航を発見しただけに終わりそうでこわい。

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