すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー日本代表】「教え魔」ハリルの呪縛を超えられるか?

2015-08-03 06:06:46 | サッカー日本代表
またゼロからスタートした日本代表の憂鬱と可能性

 日本が格下の北朝鮮に、1ー2でショッキングな逆転負けを食らった東アジアカップ初戦だった。いろんな意味で衝撃的なあの試合内容を見て、「ああ、また日本はゼロから作っていくのか…」と愕然とした人は多いだろう。

 急造チームで連携がない、控え選手ばかりの格落ちだ、Jリーグの疲労でコンディション不良だった、現地は猛暑で体力を奪われたーー。もちろんいろんなエクスキューズはできるだろう。だがハッキリ、いまの日本代表は「地力不足」と断定していい。

 まず基本的にボールが繋げない。2本以上の意図のあるパスが連続して通らない。そしてカンタンにボールを失ってしまう。基本的なことであり、これはかなり致命的だ。ではなぜそうなるのか? ちょっと選手の心理を分析してみよう。

「教科書」は局面打開の手段であり目的ではない

 監督からは「ツータッチ以内で」、「縦に速く」と指示される。すると判断を速くする必要があるが、ただし「まだしっかり判断できていないのに、エイヤッで目を瞑って適当にボールを離していい」というわけではない。ここのコミュニケーション・ギャップが監督と選手の間にありそうだ。つまり監督の指示を守ろうとするあまり選手がパニックに陥り、あわてて中途半端なパスを出してしまう。

 そうではなく、(監督の指示がどうあれ)もし自分が無理な体勢にあれば、別にひとつだけタメて確実に遠回りしてもいい。「過度なポゼッション重視」という意味ではない。急ぐあまり当てずっぽうに全く意味なくボールを失うより、確実にひとつボールキープできたほうがいいということだ。

 また「可能ならひとつ飛ばして遠くへボールを出せ」と監督に指示されれば、通る可能性がきわめて低い山なりのロングボールを放り込んでしまう。そうではなく、インサイドキックを使った「強くて速くて長いグラウンダーのパス」を狙って出せ、と監督は言っているのだろう。

 もしコースを切られてそれがどうしても無理な局面なら、味方の選手1人を経由し、2本のパスを繋いで同じ地点へ確実にボールを送り込むのでもいい。むろん一発で行けたほうが相手の守備体勢がまだ整わず、有効な攻めになるに決まっている。だが意味もなくボールを失うよりはいい。セカンドベストだ。このへんもボールホルダーが自分で能動的に判断する必要がある。

自分の責任で「赤信号」を渡れ

 だが日本人はマジメな上にマニュアル思考だ。ゆえに局面はどうあれ、愚直にいつも指示通りやろうとしてしまう。しかしかつてのトルシエ監督ではないが、赤信号だからといって車がこなきゃ渡っていいのだ。与えられた教科書をその通りなぞるだけでなく、「自分の頭で考えて」局面に応じ臨機応変にプレイするのがレベルの高いプロである。

 あのハリルホジッチ監督という「教え魔」を得て、逆に「だからこそ」いま日本人は自分の頭で考えることを要求されている。「俺が俺が」ないい意味でのエゴイズムがなく、責任回避型のプレイに陥りがちな日本人がこのハードルを越えられるのか? 「俺が決める」的な自己決定型の思考ができるかどうか? これはサッカーに限らず日本人全体が抱える一大テーマである。

 いやハリルホジッチ自身は別にそんなことは意図してないが、奇しくも彼を迎えたことにより発生した偶然の僥倖により、いま日本人は生き方そのものを問われている。ここで殻を破れるか? それとも日本人は相変わらず没個性的な文化の中に埋没するのか?

 ますます面白くなってきた。

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【サッカー・東アジアカップ】更地になったこの土地にどんな家が建つのか? 日本1−2北朝鮮

2015-08-03 00:01:12 | サッカー日本代表
値千金の先取点をフイにしたツメの甘さ

 なでしこジャパンの北朝鮮戦を、もう一度見せられているような試合だった。

 手が届きそうで届かない。とどめを刺せそうで果たせない。

 相手はチャンスを確実にモノにした。だが日本はずっと逃し続けた。手綱をゆるめれば勝ちはスルスルと逃げて行く。ひとことでいえばそんなゲームだった。

ビルドアップができない落ち着きのなさ

 天使は立ち上がりに舞い降りた。なんと前半3分の先制点だ。だが追加点を決められない日本のツメの甘さに、気まぐれな天使はすっかり心変わりした。ダメ亭主に叩きつけられた三行半は強烈だった。

 前半は日本が相手ボールをうまく追い込み、角度を限定し最後は網にかけるシーンも何度かあった。だが後半は北朝鮮がプレス逃れのハイボールを多用するようになり、日本のプレスがハマらなくなる。前半の日本はそれでもしのいだが、後半は相手の怒涛の攻めをはじき返してはまた攻められる、の繰り返しになり、最後はダムが決壊した。

 日本はアバウトな放り込みが目立ち、最終ラインから確実にビルドアップできない。監督の「縦に速く」という指示をはき違えたかのようなあわてぶりだ。ボールの繋ぎがたどたどしい。それでも前半はチャンスが何度もあったが決められず、みすみす相手に試合の流れをプレゼントしてしまった。

 宇佐美は立ち上がりからずいぶん守備をしていたが、帰陣する動きにスタミナを奪われ消耗して行った。かたや宇佐美と交代で後半に投入された柴崎は、逃げのパスばかりで軸になれなかった。柴崎はもっと決定的な仕事をしないと看板倒れだ。この日の彼には気持ちが見えなかった。川又と永井もあんなふうにチャンスを決め切れないとレギュラー取りはむずかしい。

ボールの収まりの悪さをどう解決するか?

 一方、「新戦力を発掘するための大会だ」という割り切った見方をすれば、それなりに収穫はあった。まず代表デビューの遠藤は対人能力が高く粘りのある守備を見せ、攻めては1点目のアシスト以外にもいいからみ方をした。谷口も守備が固く、もう少し組み立てに参加できれば期待がもてる。藤春も思ったより大穴はなくまずまずこなしていた。

 山口は立ち上がりから積極的に前へ出てプレスをかけ、意欲を示した。同じく実績のある森重もフィードのよさを見せてアピールした。また期待の武藤は先取点を取って以降途中消えかけたが、思い出したように現れては及第点の仕事をした。もっとアベレージで働ければ楽しみな選手だろう。

 さて最大の問題はビルドアップと、前線でのボールの収まりの悪さだ。日本代表はザック時代に、バックラインからグラウンダーのボールで丁寧に繋ぐビルドアップを完成させた。だがハリルは逆に速さを求め、それをいったんぶち壊した。

 更地になったこの土地に、果たしてどんなステキな家が建つのか? 日本中がいま、固唾を飲んで見守っている。

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