すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【東アジア杯総括 その8】未遂に終わった「中国戦・2トップ」計画の謎

2015-08-19 11:00:32 | サッカー日本代表
ハリルは本当に3つのシステム、3つのメンバー表を用意していた

 8月8日に書いた本ブログの記事「すべてはシナリオ通りに進んでいる」で、私は(1)今大会、ハリルは3つのシステムと、3つのメンバー構成を用意している。ゆえに(2)最後の中国戦はシステムやメンバーを変え、2トップもありえるーーと推理した。どうやらこのシナリオは事実だったらしい。

 この件に関し、サンスポが8月17日の紙面で、代表チーム関係者に裏取り取材をしている。それによると、(1)今大会、システムは4-2-3-1と4-3-3、4-4-2の3つを用意していた、(2)中国戦は4-4-2を試すはずだったが、予定外の1分け1敗に追い込まれたハリルはプラン変更を余儀なくされ、中国戦でも4-2-3-1を採用したーーということらしい。

 確かに中国戦で負けていれば、監督解任を煽るムードは激しくなっていただろう。ゆえに中国戦はハリルにとって「絶対に負けられない戦い」になった。だが解せないのは、4-2-3-1なら勝てる確率が高く、4-4-2だと負ける公算が高い、と判断したらしい点だ。

 確かにハリル政権下、試合で4-4-2は使ってない。だがまさか4-4-2は練習でも試したことがなく、そのシステムを中国戦ではぶっつけ本番でやろうと計画していたのだろうか?

2トップにだれを使う予定だったのか?

 さらに最も興味深いのは、中国戦で2トップにだれを使う予定だったのか? である。実際の中国戦ではワントップが川又だった。ゆえに彼はスタメン確定だろう。

 とすればポストプレイが得意な興梠と彼を組み合わせ、川又を苦手なポストから解放することで自由にプレイさせ、川又の覚醒を狙ったのかもしれない。

 あるいはハリルがイチ押しのスピードのある永井をトップで使い、バックライン裏のスペースを狙わせようと考えたか? それとも若い浅野を最前線で使い、経験を積ませようとしたのだろうか?

 もしくは4-4-2となれば(ボランチは2人だろうから)ハリル政権下ではトップ下を務める武藤のポジションがなくなる。とすれば彼の得点力を生かし、トップで使おうとしたのかもしれない。

宇佐美を2トップの一角で使う計画だった?

 いや、ひょっとしたら宇佐美を2トップの一角で使い、彼の守備の負担を軽くすることで点を取る作業に専念させればどう機能するか? これを見ようとしたのではないか? 宇佐美が左SHで今ひとつ力を発揮できない問題は、ハリルジャパンの深刻な足かせになっている。彼には破壊的な攻撃力があるだけに、これは重大案件だ。

 もし仮に「宇佐美2トップ案」が当たっていれば、今後の代表チームを占う重要な意味を持つトライであるだけに、ぜひ実行すべきだった。もし仮に中国戦で最悪負けても、2トップに手応えが得られれば今後につながる。

(あえていえば)たかが東アジアカップの目先の1勝より、将来のロシア・ワールドカップ本大会での1勝につながるチャレンジのほうがはるかに意味がある。

もっとロングスパンでものを見る必要があるのではないか?

 そう考えれば代表強化の足を引っ張っているのは、目先の1勝を求める世間の近視眼的な空気だ。負けるとメディアが騒ぎスポンサーが困り、と大人の事情が続出するため、監督は意味のない目前の1勝に囚われる。で、長期的なチーム強化につながらない。

 うろ覚えだがそのために加茂ジャパンでは「現状での最強チームを組む」と宣言せざるをえなくなり、ザックも海外組完全固定で目先の1勝にこだわった。結果、「練習試合」でザックジャパンは「最強」だったが、ワールドカップのド本番では散々だった。主客転倒も甚だしい。

 すべてはワールドカップの本大会で勝つためにあるのだ。そのために長期的視野に立ち若手をテスト登板させ、また新しい戦術にチャレンジして(負けながら)「次へのステップ」を目ざす。チーム力を蓄える。ワールドカップで勝つためなら、目先の1勝にはこだわらない。価値ある「実験」をして負けることもありうべし。

 そんなロングスパンでものを見る必要があるのではないだろうか?

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