メガヒヨの生息日記

メガヒヨ(観劇、旅行、鳥好き)のささいな日常

絵本「鼠草子」

2008年12月27日 | メガヒヨの本棚・CD棚
今年はねずみ年だったけど、残りもわずか。
年内にレビューを書きたかったこの本。
やっと今更ながらUPできた。

昨年に開催された「鳥獣戯画展」。
ピーターラビットなどの動物擬人化モノが大好きなメガヒヨは、迷うことなく行って来た。
そこで国宝の鳥獣戯画と並んで展示されていたのが、この「鼠草子絵巻」。
会場となったサントリー美術館が所蔵する、桃山時代の作品である。
その古典が絵本形式で出版されたのが、この本。

百二十歳になる権頭は鼠であるわが身を憂い、子孫はその宿命から救おうと人間との結婚を願う。
観音様に祈ったところ、十七歳の愛らしい人間の姫と、正体を隠した上で結ばれることとなった。
彼は嫁入り道具を全て用意したり、唐の楊貴妃風呂を作るなど、彼女に贅沢三昧をさせる。
でもその楽しい日々は長く続かず、鼠であることがばれてしまった。
態度を一変させた姫は、鼠取りの罠に夫をはめた上に屋敷から出て行ってしまう。
それでも姫への未練を断ち切れない権頭は、陰陽師、巫女などを駆使して復縁を図るのであった。
しかし時は遅し。既に姫は人間の男と結婚した後だった。
悲しみの権頭は出家を決意する。
高野山に向かう途中で宿敵「猫の坊」と出会うが、彼も妻と別れた身で鼠を食べる気をもう無くしていた。
そんな二人は奥の院で出家ライフを共に過ごすこととなったのであった。


簡単にストーリーを説明したけれど、数百年前の作品にも関わらず現在でも充分面白い!!
メガヒヨがはまったのは、権頭のストーカーっぷり(笑)
巫女に姫の口寄せをさせるのもすごいが、残していった嫁入り道具ひとつひとつを題材に和歌を詠むのも、
激しいものを感じさせる。
琴、扇、櫛など16作品もあるよ…。

しかも権頭は出家を決意しても、まだまだ俗世間に未練がある。
上人様が「殺さず、盗まず、女に触れず、嘘を言わず、酒を飲まず」の五戒を授けても、
何とかルールを緩くしてもらう様にゴネるシーンはかなり笑える。

この絵本は編集も素晴らしく、絵巻中の画中詞もマンガの様な吹出しに囲まれた活字で再現させている。
さらにこの絵巻では、登場人物の傍らにその名前が書き込んであるのだけれど、それも活字で再現。
プリンシパルの「権頭」や「姫君」はもちろんのこと、「穴惑いのひょんの助」、「隙間数えの鼠左衛門」なんてのも、
それぞれ絵の傍に丁寧に添えられている。
原典のままではとても一般人に読むことは出来ないので、大変ありがたい。
サントリー美術館の学芸員の方々の仕事振りには脱帽である。

この絵本「鼠草子」は一般の本屋さんには売られていない。
サントリー美術館の売店か、通販でのみ購入出来る。
入手に手間はかかるけれど、小さいお子様から大人まで是非おすすめの絵本である。


<<おまけ>>
メガヒヨはこれを映像化してほしいなぁ。

権頭 京本政樹
(百二十年も生きている妖しで、在原業平並のルックスというとこの方がぴったりでは!)

姫 福田沙紀
(小柄で可愛くてハンパなく気が強いといえば、この子を真っ先に思いついた(笑))