メガヒヨの生息日記

メガヒヨ(観劇、旅行、鳥好き)のささいな日常

メガヒヨ in SPAIN 9.5 《おせっかいなオランダ人との遭遇編》

2011年10月16日 | メガヒヨのホリデイ

プラド美術館でのこと。

「名作酔い」を起こし、ふらふらのメガヒヨ。
人が比較的少ない展示室の椅子でしばらく休憩していた。

そしたらミドルエイジの白人男性が「疲れちゃったの?」と英語で声を掛けてきた。
「はい、ここはとても広くって」などと返し、しばらくその人と会話をかわした。

話を聞くと彼はオランダ人の大学の先生。
一カ月のバケーションを取り、スペインを旅しているとのこと。
日本にも来たことがあるらしい。

最初は美術館内の作品の話などを話題にしていたが、
それからは日本人の休暇の少なさを同情したり、
メガヒヨが払った航空運賃の高さに驚き、自分が以下に安くスペインに来たかを自慢したりしていた。

メガヒヨは後で冷静になってみると、何でこんな大きなお世話な話をいちいち聞いていたんだろうと思うけど、
その時は英語で会話するのに必死で頭が回らなかった。

そんな内にとうとうこんな質問をかましてきた。

「HOW OLD ARE YOU?」

そこで「WHO CARES?」とでも返せばよかったと後でつくづく思うのだけど、その時はついつい正直に答えてしまった。
(我ながらバカ…)

調子づいてその人は「結婚しているのか?」「独身?じゃあ離婚したの?」と立て続けに聞いてきた。
そして挙句の果てはこの質問が来た。

「どうして結婚しないんだ?」

そんなのメガヒヨ自身が一番聞きたいってば(笑)!!

それでもバカ正直に「もてないから。」って返すのも忍びない。
そこで見ず知らずの人に見栄を張ってこう返した。

「I LIKE FREE.」

そしたら思いっきり溜息をつかれた。
溜息つきたいのはこちらだよ。
英語でプライベートなことを質問されて!!

でも家庭を重視するクリスチャン的価値観だと、メガヒヨみたいな人生ってとんでもなく自分勝手に見えるんだろうな~。
こちらは地道に堅実に生きてるつもりでもね。

会話の終わりにそのオランダ人は夕食に一緒に行かないか?と誘ってきた。
変な意味じゃないよと付け加えて。

メガヒヨは即座に「今日は予定があるから」と断った。
いや、そのオランダ人は遠慮がないけど悪い人には見えなかったし、こちらも警戒していた訳ではない。

もうとにかく英語を話したくなかったのだ。
その数分間で疲れ切ってしまったので。
まぁあちらも母国語はオランダ語なので、立場はおあいこといえばそうなんだけどね。

しかし、英語でふっかけられたときの無防備さは、我ながら呆れた。
質問されると、これを答えていいのかどうか判断する前に、必死に返答を頭で作文しちゃうんだものね。
今後は何かの際にうっかり口を割らないように、日々英語に慣れて備えたいと思う次第であった。


メガヒヨ in SPAIN 9 《プラド美術館で怖い絵を編》

2011年10月16日 | メガヒヨのホリデイ


本日の朝ゴハンはホテルの裏の小道にあるバルで。


メガヒヨが話せた数少ないスペイン語、
「カフェ・コン・レチェ ポルファボール」
(カフェラテ下さい。)
で毎度の飲み物は確保(笑)
サンドイッチは指差し注文にて、これまた入手成功!

お会計は3.8ユーロ。
表通りに面していないお店だと全般的に安くなるね。
ここは美味しかったし、リピすることに。


実はじっくりマドリードの街を歩いていないメガヒヨ。
せっかくだからプラド美術館まで徒歩で行くことに。

中心地シベーレス広場の辺りはゴージャスな建物ばかりで、ついつい目を奪われる。
銀座やシャンゼリゼ、ピカデリーサーカスより華がある場所だと思う。
左の建物は勘違いしていなければスペイン銀行。


ホテル・リッツの前を通る。
やたら黒服の人が多かった。VIPがいらしてたのかな?

 
てくてくと歩き、プラド美術館に無事到着!
ゴヤさんの彫像があるところでチケットを購入。


せっかくなので正面のベラスケス口から入場。

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)
中野 京子
日本放送出版協会

この旅行のきっかけの中でも大きかったのは、中野京子先生の「怖い絵」シリーズを読んだこと。
こちらの『「怖い絵」で人間を読む』にはプラド美術館の作品が多く紹介されている。
そんなわけでこの本を片手に巡ってみた。


入って左手すぐにアルブレヒト・デューラーの有名な絵『アダムとイブ』を発見。
(これは上の本には載ってないけど)

この絵を最初にみたとき、無防備なアダムに対してイブは刺客的立場として描かれていると感じた。
「イブを悪者にしている。作者の女性に対する目が厳しすぎ!」と思ったけど、
よく見てみればアダムがとことん間抜けに描かれているだけのような。
くちポカンだし。

いずれにせよ、作者は世の男性に警告的メッセージをこの作品に託したのね。
オンナは怖いぞって。
デューラーはよほど女性にひどい目に遭ったのかな?
経歴を見る限り、親方の娘さんと普通に結婚してたりするけど…。

でも深読みかも知れないけど、女性視点で描かれているような気もするんだよね。この絵って。
だってメガヒヨ、このイブにすごく共感するんだもの。

このアダムとイブという旧約聖書のお題はさまざまな画家が描いているのだけど、各人解釈が違っていて楽しかった。
ある絵では、天然なイブがリンゴを持ってウキウキしているのをアダムが必死に止めていたし、
別の絵では退廃的な二人が「どーでもいいんじゃね?」って感じでごろ寝してたり。


さて。プラドに来たらまず見なきゃいけないこの作品。
この絵は5歳のマルガリータ王女を中心とした『ラス・メニーナス(官女たち)』。
画面構成は凝ったもので、奥の鏡には国王夫妻が映り、
左画面には画家ディエゴ・ベラスケス自身も登場人物として仲間入りしている。


ちなみにこの人が”無能王”フェリペ4世。
外見にコンプレックスの有るこの王様は、ベラスケスにしか自分の絵は描かせなかったらしい。
それなりに威厳がある肖像画を仕立ててくれるのは、彼以外に出来なかったという話。


宮廷画家として数々の作品を描いたベラスケス。
しかし国王一家の絵ばっかり描いているのも結構つらい。
親交があったルーベンスの影響を受けて、この『バッカスの勝利(酔っ払いたち)』のような作品も描いている。


ベラスケス亡き後、宮廷画家を務めたのはファン・カレーニョ・デ・ミランダ。
フィリペ4世の嫡男、カルロス2世の肖像画を多く手掛けている。
この若い王様は、何代にもわたる近親婚のせいで生まれつきハンディキャップを負っていた。
それは外見にもおよび、肖像を描く際にはかなりのカモフラージュが必要だったとされる。

トレドのアルカサル、エル・エスコリアル修道院でも同じ様なミランダ作のカルロス2世像が見かけた。
気の毒なほど沢山描かされていたに違いない。


さて。これもスペイン・ハプスブルク家の方。
フランシスコ・プラディーリャ描く『狂女ファナ』。
上の絵のフェリペ4世、マルガリータ王女、カルロス2世のご先祖にあたる方。
なんでイザベラ女王の娘であるこの人が狂女なんて呼ばれてしまったかというと、
早世した夫の死を受け入れられずに、復活の儀式をおこなうためスペイン中を棺と共に巡り巡ったから。

彼女の夫は美公、端麗公と評されるハプスブルク家のフィリップ。
(無能王とはエラい扱いの違う称号だなぁ~)


 
さて。次はベラスケスと肩を並べてスペインを代表する画家、フランシスコ・デ・ゴヤ。

有名な、『着衣のマハ』と『裸のマハ』。
今年(2011年)秋に久々に日本で着衣の方が公開されるね。

さすがに裸の方は貸してくれないみたいだけど、リスクがあるこの日本にプラド美術館はよく作品を送り出して下さったものだ。
ありがたや。


ゴヤが聴力を失い大病を経て、70をゆうに過ぎてから手掛けた黒い絵シリーズ。
その一つが『運命の三女神たち。』

メガヒヨは三姉妹の次女なので、このお題も好き。
次女ラケシス(左から二番目)は、天眼鏡で手前の人間の寿命を測っているところなんだって。
測るのは寿命じゃないけどメガヒヨの仕事も似たようなものだから、この絵には縁を感じるなぁ。


これが黒い絵で一、二を争う恐ろしさ。
『我が子を食らうサトゥルヌス』
ギリシャ神話の最初の頃のエピソードで、時の神が次々に自分の子供を食べてしまうってのがあるんだけどね。
そういうのって大抵は丸呑みだと解釈しているのだけど、これはガチでムシャムシャバリバリお召し上がり。


ゴヤからさかのぼること180年前。
巨匠ルーベンスもこの題材で絵を描いている。
これも本気で噛り付いている。
ゴヤのサトゥルヌスは自宅の食堂に壁画として描かれたって話だけど、ルーベンスの方はどこに飾ったんだろう?


ところでメガヒヨ。
数多くの美術品に囲まれるうちに「名作酔い」を起してきた。
美術館でよく起こす症状なんだけど、作品の力に圧倒してしまい、エネルギー切れになってしまうんだよね。

そんな中自分を奮い起こす言葉がコレ。
「フランダースのネロのことを思い出せ!」

ルーベンスの絵をあんなに見たがっていたネロ。
なのに自分はどう?
こんな恵まれた状況なのに、疲れたなどと甘いことを言って。


とはいえ、休息も必要。
カフェテリアにてランチタイム。
スープはちょいぬるかったけど、野菜たっぷりで美味しかった。
飲み物込で7.3ユーロ。


食事をしたら結構復活してきた。
これはピーター・ブリューゲルの『死の勝利』。
骸骨の軍団が街を占拠する。
日本の地獄絵図にもこんなのがあったよね。
画面右下に描かれている、骸骨に気付ずに二人の世界にはまってるカップルが笑える。


そうそう。プラド美術館は怖い絵ばかりじゃないよ。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョによるこんな可愛い絵もある。
『貝殻を持つ幼児たち』
左のお子さんはイエス・キリストで、右が洗礼者ヨハネ。
羊もむくむくしていて可愛い!


長々と巡ったプラド美術館。
これがメガヒヨが一番気に入った絵。
ヒエロニムス・ボッシュによる『快楽の園』。

なんかSFチックなタッチ。
左は旧約聖書にあるアダムとイブのエピソード、右は地獄絵図。
そして真ん中は快楽の園、つまり現世って話。

しかし500年も前の作品なのに、ここに描かれているような生き物を思いついた画家はすごい!!
しかも祭壇画として採用した教会も素晴らしい!!


プラド美術館はルーブルほどの規模はないけれど、独特の価値観によるコレクションぶりが本当に素晴らしい。
また是非チャンスを作って訪れたいと思った。